“マスク材料”の噂で…トイレットペーパー品切れ相次ぐ 「全くのデマ」

2020年2月27日

西日本新聞

 熊本県内のドラッグストアやスーパーマーケットで、トイレットペーパーが品切れする事態が相次いでいる。会員制交流サイト(SNS)では、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの影響を指摘した上で「マスクの材料に紙が回されるので不足する」「中国から原材料を輸入できなくなる」といった臆測の声が続出。不安に思った人が購入に走っているとみられるが、西日本新聞「あなたの特命取材班」の取材に業界団体は「全くのデマ」と否定している。

 熊本市中央区のドラッグストアによると、27日の開店時には十分な在庫があったが、午前中から問い合わせが相次ぎ、昼すぎには完売。関係者は「周辺の店はどこも完売。うちには在庫を問い合わせる電話や来店者が絶えない」と話す。

 「(トイレットペーパーは)マスクと同じ原料。買っといて損はない」「備蓄としてあったら安心」-。SNS上にはこうした書き込みが急増し、九州エリアではツイッターで話題になる「トレンドワード」になった。

 静岡県内の製紙会社によると、マスクは一般的に繊維を重ね合わせた「不織布」から製造。同社の関係者は「トイレットペーパーは再生紙(パルプ)から作られており、マスクとは関係ない」と指摘する。製紙メーカーの日本製紙クレシア(東京)の広報担当によると「マスクの生産はしていない。トイレットペーパーは日本国内でのみ生産しており、通常通り生産・出荷している」と否定した。

 熊本市のドラッグストアによると、「中国でトイレットペーパーの工場が閉鎖され、入ってこなくなる」と話す客もいたという。

 こうしたうわさに対し、トイレットペーパーやティッシュペーパーのメーカーでつくる日本家庭紙工業会(東京)事務局は「中国の影響で品薄というのは全くのデマ」と断言する。

 同団体によると、国内で流通するトイレットペーパーの98%は国内で生産されており、原材料も国産。担当者は「各メーカーや卸元に在庫はふんだんにあるが、デマで配送が追いつかず一部の地域で一時的に棚から商品が消えている状態。待てば必ず商品は入荷するので、落ち着いて対応してほしい」と語った。

 熊本県内では、26日までに男女5人が新型コロナウイルスに感染したことが確認されている。そのうち、感染1例目だった20代の女性看護師について、熊本市は容体が重篤化したと25日に発表。熊本でこうした噂が広まる原因は不明だが、SNSを含む情報収集には注意が求められている。

 熊本市の40代男性は「熊本地震(2016年)の時に、生活物資が一気に買われて店頭から消え、つらい思いをした記憶が市民の間にあるのでは」と推測。同市の80代女性は、友人から「なくなっとるらしい。買った方がよかばい!」と電話で言われ、中央区のドラッグストアに自転車で来た。「店に来たらすっからかん。オイルショックを思い出して心配だけど、補充はされると聞いて安心した。落ち着いて行動しなきゃですね」と話した。(黒田加那、綾部庸介、坂本信博、福間慎一)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする