2020年7月25日
産経新聞
九州地方を中心とした今月の豪雨など近年相次ぐ大規模災害を受け、自治体の避難情報の見直しを進めていた政府が、避難勧告を廃止して避難指示に一本化する方針を固めたことが25日、分かった。
災害対策基本法に基づく避難勧告の見直しは昭和36年の制定以来となる。今夏をめどに見直し案をまとめ、来年の通常国会に改正案の提出を目指す。
■自治体から「分かりにくい」の声
現行制度では、災害発生の恐れが高まった場合、自治体はまず高齢者など災害弱者が避難を始める基準となる「避難準備・高齢者等避難開始」を発表する。5段階の警戒レベルでは「3」に相当する。気象情報などが警戒レベル「4」を示す状況になると、避難に要する時間を確保できる場合は「避難勧告」、確保するのが困難なほど危険が迫っている場合は「避難指示(緊急)」を出す。
警戒レベル「5」は災害が既に発生している状況とされるため、避難勧告と避難指示はともに「4」に位置付けられている。そのため、複数の自治体などから「タイミングが2つあって分かりにくい」「勧告の意味が誤解され、指示待ちにつながってしまう」などの声が上がっていた。
■「切迫情報」を新設
見直し案では、(1)避難勧告を廃止し、勧告を発表するタイミングで避難指示を出す(2)避難に要する時間の確保が困難か、すでに災害が発生している警戒レベル「5」の情報として「緊急に安全を確保するよう促す情報」(名称未定)を新設する。
政府は3月末、東日本に大きな被害を出した昨秋の台風15、19号の検証会議で、自治体の意見を踏まえて避難情報を整理する方針を決めた。これを受け、内閣府に設置された作業部会で、新たな避難情報の枠組みについて首長や有識者らと検討を進めていた。
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避難勧告と避難指示 災害発生の恐れが高まった際、市区町村長が地区ごとに住民に発令する。災害対策基本法60条に基づくが法的拘束力はない。5段階の警戒レベルでいずれも「4」に位置付けられ、避難勧告は避難に要する時間を確保できる場合、避難指示は確保できない場合に発令される。避難勧告の前段階として警戒レベル「3」相当の「避難準備・高齢者等避難開始」がある。