2020年5月21日
マイナビニュース
●ヒントは櫻井翔の“ウゴウゴルーガ”
アイドルグループ・嵐が出演するフジテレビ系バラエティ番組『VS嵐』(毎週木曜19:00~)で、14日に放送された「リモート嵐-1グランプリ」が話題だ。コロナ禍でのリモート出演と言えば、トーク番組で自宅などから参加するといった形式が一般的になってきたが、『VS嵐』では、それぞれ別空間にいる嵐のメンバーが、リモートならではのゲームで対決を繰り広げるのだ。
合成技術のクオリティが高く、まるでメンバー同士が至近距離でゲームに臨んでいる姿を見る感覚で、SNSでは「やり方次第であんなに楽しく面白くなるんだ」と感心する声や、「すごく工夫して番組を作ってくれている」とスタッフに感謝するコメントが相次いでいる。
そこで、企画・総合演出の萬匠祐基氏に、実現の経緯や、この状況でも新たな収録内容を届け続けることの意義について、リモート取材で聞いた――。

○■“対決”は個別の部屋にいてもできる
嵐とプラスワンゲストのチームが、ゲストチームと大規模なセットを使ったゲームで対決していく同番組。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月26日の放送から無観客となり、その後の緊急事態宣言を受け、通常収録の実施が困難になった。
その時点で、「『VS嵐』のコンセプトでもある“対決”は、個別の部屋にいてもできることはたくさんある。嵐5人の関係性、それぞれの魅力が、離れている場所にいるからこそ際立つ環境になるのではないか」と考えた萬匠氏(以下同)。
その上で、「スタジオ収録がストップしてご自宅にいることも多い芸能人の皆さんのいつもと違う一面も見られたらな、と言うプラスの面も取り込みたいと考えました。通常ではできないリモート収録だからこそ、テレビだからこそできる、という番組内容にしたいと思ったんです」と振り返る。
○■2時間のプレゼン、5時間かけて具現化
こうして生み出されたのが、「それぞれ別空間にいる嵐のメンバーをCGで集結させる」というシステム。実はこの発想、櫻井翔からヒントをもらったのだという。
「第1回リモート収録の1週間ほど前、収録するシステム、対決するゲーム内容を嵐の皆さんにご説明した際、櫻井さんから『“ウゴウゴルーガ”みたいなことできないかな?』と言われたんです」
この提案に、「正直、私は『ウゴウゴルーガ』の時代、高校の部活に明け暮れ、見たことがなかったので、そのときは『なるほどいいですね、考えてみます』と軽返事してしまいました」と吐露するが、「その打ち合わせの帰りにスマホで検索したら、目から鱗でした。『これはいい! 面白い映像が作れる!』と遅ればせながら思ったんです」。
『ウゴウゴルーガ』とは、92~94年にフジテレビで放送された子供向け番組。子役のウゴウゴくんとルーガちゃんが、CGの世界に入ってさまざまなキャラクターとやり取りを繰り広げ、流行語大賞で銀賞を受賞するなど、大人気となった。
早速、技術チームのスタッフに頭の中にあった企画のイメージを2時間かけて伝えると、これまでの数多くのゲームで要望に応えてきた職人たちは、その後、5時間も打ち合わせを重ねて具現化。
14日の放送では、「A・RA・SHI」のイントロだけを聴いて体内時計で踊り続け、ズレの少なさを競う【「A・RA・SHI」ダンス時計GP】、ドッキリでテレビ電話をつないだ芸能人に「スゴい!」と言わせる回数を競う【スゴいGP】、突然リモートでつないだ相手にジェスチャーの名前を当ててもらう【中継ジェスチャーGP】が行われた。
●無理難題を実現したスタッフ

今回の収録形式は、技術スタッフに加え、編集、CGや、ADら制作スタッフの努力が結集して実現。「今までやったこともないリモートでの複雑な収録です。ドッキリの要素を大事にした『いきなりテレビ電話、いきなりモニターに嵐が出現!』という状況を作り出すことに苦労しました」と打ち明ける。
各所をリモートでつなぐため、カメラの台数も多い。「前回の放送は、嵐さんに用意したカメラが1人3台ずつの15台。スタジオゲスト(アンタッチャブル・山崎弘也、平成ノブシコブシ・吉村崇、小島瑠璃子)に3台。ドッキリ中継に2台ずつ。その他、テレビ電話をつないだ各所の映像も含めると、25台以上のカメラを駆使しています」
そして、通常セットではなく「合成だからこそ」のポップな世界観を作るため、CG制作も必要。「大変無理難題をお願いしましたが、それぞれを実現してもらうために、スタッフのみんなはすごく頑張ってくれました。また、リモートでの会議、各自個別でのリモートワークもスタッフみんなのプロ意識がなせる業だと感じました」と感謝しながら、「他番組に先駆け、クオリティの高いものに仕上がった自負があります」と胸を張る。
○■“嵐がどこにでも行ける”利点を生かす
また、「この状況だから思いついたこともたくさんありました。よく番組で松本(潤)さんがイニエスタ選手の話をされるんですけど、このシステムだったら遠方や海外で活躍されている方とも身近につながれると思っているので、それが今後のゲームに生かせたらいいなと考えています」と構想。
クロマキーにすることで、リモートの嵐を集結させるだけでなく、中継先に嵐が登場するという演出も可能になっており、「CG合成だからこそ、“嵐がどこにでも行ける”という利点は、どんどん生かしたいと思います」と意欲も。「この状況の中でも、できることは全然あると思いました。やりがいを感じて取り組んでいます」と前向きに臨んでいる。
●残り限られた放送…毎回新しい『VS嵐』を

08年にスタートし、12年の歴史を持つ『VS嵐』は、豊富なアーカイブがあることから、総集編を放送するという選択肢もあったはずだ。それでも、ここまでの苦労をして新作の収録を続ける原動力は何か。
萬匠氏は「総集編をやれば、正直視聴率も現状より上積みができたかもしれません。しかし、年内でグループ活動休止を発表している嵐と、放送回が残り限られた中で、『VS嵐』は今、振り返るべきではない。毎回新しい『VS嵐』をファンの皆さん、視聴者の皆さんにお届けしたいと思いました」と語る。
さらに、「テレビの役割としてコロナの感染拡大防止は大きな役割であるけれども、我々バラエティを作っている人間のするべきことは、不自由な時間を過ごし、いつも以上にご自宅にいる視聴者の皆さんに楽しい時間を提供すること。あえて言葉にしなくても、個別の部屋にいる嵐、出演者の姿を見ていただくことで、他人との接触を控えるべき今の状況をお伝えしつつ、楽しいテレビ鑑賞の時間を過ごしていただくことだと考えました」と、テレビマンとしてのプライドを垣間見せた。
きょう21日の放送では、狩野英孝へのドッキリ企画を実施。「狩野さんにいきなりグループLINEで4人募ってもらって、嵐チームと対決するという企画なんですが、狩野さんの自宅の玄関に中継システムを置くという、なかなかドキドキすることをやっています(笑)」と見どころを予告している。
●萬匠祐基1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、99年にフジテレビジョン入社。『LOVE LOVE あいしてる』『HEY! HEY! HEY!』『ジャンクSPORTS』などを担当し、08年に『VS嵐』を立ち上げ、企画・総合演出を担当。現在は他にも、『ジャニーズカウントダウン』の総合演出を務める。