2020年6月10日
オリコン
故ディック・ブルーナさんが描いた絵本の主人公として登場する愛らしいうさぎのキャラクター・ミッフィーが、誕生65周年を迎えた。口は「×(バッテン)」、いつも「正面」を向いているなど、シンプルな色使いやキャラクターにまつわるさまざまな不思議、長く愛される秘訣についてブルーナ・ジャパンの広報担当者に聞いた。
◆口は「×」でいつも正面を向いている…作者がミッフィーに込めた想い
――日本では「うさこちゃん」から英語の「ミッフィー」に変わりました。もともとは、オランダ語で「ナインチェ」でしたが、現在は「ミッフィー」の名で親しまれています。日本でのグッズ展開は、「うさこちゃん」から「ミッフィー」に変わりましたが、その理由は?
【広報担当者】 絵本は現在も『うさこちゃん』で出版されています。オランダ語の「ナインチェ」の絵本を最初に日本で翻訳出版(1964年)した際に「うさこちゃん」と訳され、同じ頃に英国では「ミッフィー」に翻訳出版されました。その後、世界ではわかりやすいようにミッフィーで統一されました(オランダ・とベルギーはナインチェのまま)。ただし、絵本『うさこちゃん』(福音館書店)については、歴史や経緯も尊重し、そのまま翻訳出版しています。ただしグッズなどの商品化については、基本的に国内でも「ミッフィー」で統一しています。
――愛らしいミッフィーですが、なぜ口が「×(バッテン)」なのでしょうか?
【広報担当者】 作者のブルーナさんがウサギの顔を見た時に、鼻から口の部分が「×」に見えたそうです。それがそのまま「ミッフィー」の姿となっています。
――お父さんとお母さんの口は「*」、お祖父ちゃんとお婆ちゃんの口も違います。なぜなのでしょうか?
【広報担当者】 「×」に横線が1本多いのが、大人の口の表現となっています。その横線1本は「しわ」を表しています。ブルーナさんにとって「しわ」は大人としての印だそうです。
――ミッフィーは、なぜいつも「正面」を向いているのでしょうか?
【広報担当者】 ブルーナさんが絵本の読み聞かせをする時に、子供たちはいつもじっと真っすぐに絵を見つめていたそうです。常に読者(子供たち)に対してきっちりと見つめ返すために、正面を向くスタイルを確立したとのことです。
◆シンプルだからこそ「想像の余白」を生み、解釈の自由度をもたらしている
――ミッフィーには、さまざまな不思議もあります。キャラクターに隠された意外な施策はありますか?
【広報担当者】 ブルーナスタイルは「LESS IS MORE(少ない方が豊かである)」という言葉でも表されるように、シンプルを極めるスタイルです。できるだけイラストラインも減らしています。シンプルであるが故に、「想像の余白」を生み、それが読み手の想像力を育み、解釈の自由度をもたらしていると考えています。
――さまざまなコラボグッズも生まれていますが、色づかいにも特徴があります。
【広報担当者】 絵本においては基本的に「ブルーナカラー」と呼ばれるオリジナルカラーの「赤、青、黄、緑、茶、グレー」の6色を作り出し、その6色と墨線(黒)と白で描かれています。ブルーナさんはそれぞれの色に意味合いを持たせています。暖色はハッピーな気持ちや室内を表したり、逆に青のような寒色は不安な気持ちや屋外などを表しています。商品カラーについては、絵本の対象年齢となる子ども向けはできるだけ「ブルーナカラー」を、逆に大人向け商品については、商品に合わせて自由に色を選択しています。
――さまざまな企業とコラボレーションが生まれていますが、その要因は?
【広報担当者】 作品自体の魅力もそうですが、ブルーナさんの絵には、静かにメッセージを伝えるだけの力があると思っています。コラボレーションを決める際は、ブルーナ作品を使いたい理由や姿勢、伝えたい内容に対して共感できるかどうかを重要視しています。
――ブルーナ氏は、ユニセフをはじめ赤十字、骨髄バンク、ワールドビジョン、 world peace is possibleなど、社会活動のためのポスターやロゴも手がけています。こうした社会活動は、どのような思いのもと行われたのでしょうか?
【広報担当者】 「World peace is possible」のようにブルーナさん自身が元々オランダで取り組んでいたものありますし、「骨髄バンク」や「ワールドビジョン」「子供の貧困問題」などは、日本独自の取り組みです。ブルーナさん自身も社会活動に関心が高かったので、その考えに近いものは引き続きサポートを続けていきたいと思います。ただし、社会活動の場合、使うイラストはミッフィーではなく、ブルーナさんが描く男の子や女の子のイラストのケースが多いです。
◆シンプルでありながらも温かみや優しさ、親しみを感じる風合いが愛される秘訣
――ミッフィーが、子どもから大人まで長く愛される秘訣は?
【広報担当者】 ブルーナ作品に大きな魅力があることです。シンプルでありながらも温かみや優しさ、親しみを感じる風合いには、多くの人が惹かれる要素が入っています。また長年にわたりブルーナ作品、あるいはミッフィーを応援、サポートしてくれる方も多く、そういった方々のお陰でもあると思っています。
――65周年を記念した「ミッフィー展」は、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大のため、中止となりました。今後の展開について教えてください。
【広報担当者】 4月と5月の松屋銀座会場、6月の松坂屋美術館会場は、残念ながら中止となりましたが、改めて7月以降に開催を予定しています。また、来年秋までに全国巡回予定となっています。
――「ミッフィー」を通して子どもたちに、どのようなことを伝えたいですか?
【広報担当者】 ミッフィーのように家族や友達、大事な人との時間を大切にして欲しいです。そして、絵を描いたり、本を読んだりすることも楽しんで欲しいです。