山下智久が全編英語の海外ドラマで熱演 世界に挑む思いとは

2020年6月7日

NEWSポストセブン

 歌手で俳優の山下智久(35)が、初めて本格的な海外連続ドラマ『THE HEAD』(動画配信サービス「Hulu」オリジナル作品)に出演する。これまで日本の芸能界で愛されてきた彼に、世界を股にかけた活躍を期待する声も数多い。なぜ、ここまで注目が集まるのだろうか。

 6月12日(金)より全世界で放送・配信される『THE HEAD』は、エミー賞を受賞したアメリカの人気ドラマ『HOMELAND』のエグゼクティヴ・プロデューサーでもあるラン・テレムが製作総指揮を務めた、日欧共同製作によるサバイバル・スリラー作品。山下はメインキャストの1人で微生物学者のアキ・コバヤシ役を演じる。南極の科学研究基地を舞台に、殺人事件の謎を紐解いていくという物語だ。

 全編が英語で繰り広げられる同ドラマで山下は、まるでネイティヴのような流暢な英語を操っている。本格的な海外進出のスタートとしては完璧なパフォーマンスだ。同ドラマのエンディングテーマに採用された新曲「Nights Cold」を自ら作詞したことも話題となっている。

 2019年に公開された中国・香港合作のアクション映画『サイバー・ミッション』に出演した際も英語と中国語を巧みに操るその語学力が注目を集めたが、その裏には持ち前の才能に加えてこれまで彼が積み重ねてきた努力もあった。

 2011年まではアイドル・グループNEWSに所属して活躍してきたほか、2005年には日本テレビ系ドラマ『野ブタをプロデュース。』出演をきっかけに、W主演の相方・亀梨和也(KAT-TUN)と期間限定ユニット“修二と彰”を結成。ヒット曲「青春アミーゴ」をリリースし、翌2006年にはソロ曲「抱いてセニョリータ」も話題を呼んだ。俳優としても『池袋ウエストゲートパーク』『クロサギ』(いずれもTBS系)、『コード・ブルー』シリーズ(フジテレビ系)など、数多くの人気作で印象的な役柄を演じてきている。芸能界で華やかな成功を収めてきたと言っていいだろう。

 しかし同時に山下は、少年時代より海外への憧れを抱き続け、ロサンゼルスをはじめとして現地に行く機会が増えてからは独学で英語の勉強を進めていったという。英語の勉強に真剣に取り組むようになった理由について、2018年に『AERA dot.』に掲載されたインタビューで彼は次のように述べている。

〈英語が話せなくても、声のトーンや表情、簡単な単語だけでもコミュニケーションはとれる。でも会話の中身がわからないし、自分の思いも伝えられない。相手が悩んでいたり、悲しんでいたりしても、自分は慰めることもできないんだなぁって思ったら、英語をちゃんと話せるようになりたいと思いました〉(神素子「山下智久がハリウッド女優に英語でインタビューできるほど上達したワケ」2018年5月27日付)

 2012年には紀行ドキュメント番組『山下智久・ルート66~たった一人のアメリカ』(日本テレビ系)でシカゴからサンタモニカまでアメリカ横断を敢行。さらに2014年からスタートした英会話バラエティ番組『大人のKISS英語』(フジテレビ系)では世界進出を目標に山下が英語を学ぶというテーマを掲げ、翌2015年には『山Pのkiss英語』(同前)と自身の名前を冠したタイトルへと改題して放送されている。流暢な英語を駆使した『THE HEAD』での演技の裏にはこうした努力と経験があるのだ。

 そんな山下が海外で活躍することについては、彼自身の魅力を発揮するだけでなく、ジャニーズの後輩に向けて活路を開く意味もあるようだ。映画やテレビでの取材を通じて山下を見てきたカメラマンでライターの名鹿祥史氏は次のように語る。

「山下さんは責任感が強く、とても後輩思いな一面があるそうです。King & PrinceやHey! Say! JUMPら事務所の後輩たちとも積極的に交流を持ち、夏にバーベキューに連れていったり、仕事の相談に乗ってやったりすることが恒例になっていると、テレビ番組(『王様のブランチ』)に出演した際、自分でも話していました。

 小学生の時にジャニーズに入所し、その資質の高さから、自身も滝沢秀明ら事務所の先輩たちに可愛がられて育ってきた経験からそうしているのかもしれません。イベントなどに登場しても、後輩を立てたり、気遣ったりする場面をよく見かけます。今回、本格的な海外進出を決めた背景にも、ジャニーズで過去なかったようなことに自ら率先してチャレンジすることで、後輩のために道を切り開いてやりたいという思いがあったからだと伝え聞いています」

 山下の海外進出に期待する声には、次の世代が日本の芸能界という狭い世界にとらわれず、国境を越えて様々なステージに挑戦していって欲しいという思いも込められているのかもしれない。

●取材・文/細田成嗣(HEW)