2020年6月1日
産経新聞
初夏に入り、汗ばむ陽気の日も出てきた。
自宅での熱中症対策に欠かせないのがエアコンによる冷房だ。運転中は、冷気が逃げないように窓を閉めっぱなしにしがちだが、新型コロナウイルスの感染リスクを下げるため、こまめな換気が推奨されている。エアコンの特徴を知り、効率のよい換気を心がけたい。(津川綾子)
「ほとんどのエアコンでは換気ができません」
空調機器メーカーの「ダイキン工業」(大阪)はホームページでこう呼びかける。同社が4月、全国の男女500人を対象に「ほとんどのエアコンで換気できないことを知っているか」とアンケートで聞いたところ、約54%が「知らない」と回答。エアコンで換気もできているとの誤解がある傾向がうかがえた。
一般的なエアコンは室内機に取り込んだ空気から冷媒ガスの働きで熱を奪い、冷やして部屋に戻すという仕組み。空気はただ室内を循環しているだけで、外との換気は行われていない。室外機から風が吹き出すのは、室内で奪った熱を屋外に速やかに放出するためにファンを回すから。室内の空気を排出しているわけではない。
政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」の実践例では、日常生活で、こまめな換気を促す。
ではエアコンを使いながら効率よく換気するにはどうすればいいのか。
ダイキン工業の広報担当、重政周之さんは、窓を開けるときも運転したまま、設定温度をやや上げて換気することをすすめる。「エアコンは運転を始めるときに消費電力が大きくなる。いったん運転したらつけたままのほうが効率的。ただし室内と外との温度差が大きいと窓を開けたとたんにエアコンに負荷がかかり、余計な消費電力がかかってしまうことも。それを防ぐために換気中は設定温度を上げましょう」。
気象庁によると、6月は平均気温が全国的に高くなる見込み。換気もしながら冷房を活用し、健康を守ろう。
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エアコンで冷房する前に掃除や点検をしておくほうがよいという。なぜか。
「ほとんどの家庭でエアコンからカビの胞子が吹き出されていた」と話すのは、暮らしに関する調査研究を行う「エフシージー総合研究所」(東京)の橋本一浩主任研究員。平成30~令和元年に一般家庭12軒でエアコンから吹き出す空気を採取して調べたところ、ほとんどでカビの胞子が確認された。
カビはエアコンの内部に繁殖したもの。カビはアレルギーの原因物質にもなるとされるが、特に季節始めの再運転時は、それまで繁殖してたまっていたものが、一気に吹き出す。
カビや汚れを本格的に除去するには専門業者による清掃が必要。ただ、家庭でできる軽減策もある。
ハウスクリーニングサービスを手掛ける「ダスキン」(大阪)の広報、橋本恵さんは、「長らく使っていなかったエアコンは、事前にフィルターの洗浄と、窓を開けて換気をしながら試運転を」と話す。
試運転でエアコン内部にたまっていたカビの胞子やホコリを排気して、換気でさらに室外に排出する。
フィルターに付着したホコリは網が破れないようにやわらかいスポンジやブラシで洗浄を。水分はカビの増殖にもつながるため、洗浄後はよく乾かしてからエアコンに取り付けよう。
試運転は、エアコンの故障の発見にもつながる。修理が混み合う本格的な夏を前に行うとよさそうだ。