2021年5月11日
読売新聞オンライン
讃岐うどんの本場・香川県は、全国でも糖尿病の患者が多い県だ。
県民のうどん好きを背景に、炭水化物のとりすぎや野菜摂取の少なさなど複合的な要因が指摘される。県が野菜と一緒に食べることを勧めたり、製麺会社がヘルシーな商品を開発したりと、「県民病」の克服に向け、官民を挙げた取り組みが続く。(浦西啓介)
全粒粉100%
高松市のスーパーのうどんコーナーには、「1食で約3分の1日分の食物繊維」を売りにする商品が並ぶ。地元の「石丸製麺」が今年3月に発売した「国産小麦をまるごと使った食物繊維たっぷりうどん」。小麦を殻ごと使う全粒粉ぜんりゅうふんだけで作り、糖の吸収を和らげる食物繊維や、カリウムなどの栄養素も豊富だ。
こうした「健康うどん」は数年前に登場し、製麺業者らでつくる「さぬきうどん研究会」によると、昨年10月時点で県内7社が18種類を商品化したという。
商品を手に取った主婦(36)は「うどんは香川のソウルフード。ヘルシーな麺にすれば、栄養の偏りを気にしなくて済む」と話した。
ブーム機に定着
県が2016年に行った調査では、週3回以上うどんを食べる県民の割合は男性が18・3%、女性も10・3%。毎日食べる人もそれぞれ2・8%、1・3%いた。県内には、うどん・そば店が544店(18年現在)あり、コンビニ(380店)より多い。
研究会の諏訪輝生会長(73)によると、香川県民は元々、うどんをごはんのように主食とし、肉や魚、野菜などのおかずで食べていた。しかし、1988年の瀬戸大橋開通後、讃岐うどんがブームとなり、製麺所でダシをかけてうどんだけを味わうスタイルが観光客の人気を集め、地元住民にも定着したという。
今では、副菜をとらず、おにぎりやいなりずしなど炭水化物を重ねて食べる人も多い。また、うどんは糖尿病を悪化させるとされる塩分が高い。こうした事情もあり、県内の人口10万人当たりの糖尿病患者数は、2011年に308人で全国ワースト1位となった。
店も工夫
県は「うどん好きの県民性が一因」として、12年度から対策に乗り出した。当時、全国でも下位レベルだった野菜摂取量に着目。「『野菜食べん県』から『野菜も食べるうどん県』へ」のスローガンを掲げ、うどんと一緒に野菜を食べるよう呼びかけ始めた。
野菜の小鉢やサラダうどんなどをメニューに取り入れている店をまとめた「ヘルシーうどん店マップ」を作成。ヘルシー度を三つ星で評価し、掲載された約200店のうち4分の1ほどが三つ星店だ。
野菜以外の工夫をする店も。県内で12店舗を展開する「こだわり麺や」は13年以降、ダシに使う上白糖を、糖尿病の改善効果が期待できる希少糖に変更。小西啓介社長は「のどごしは変えられないので、ダシで少しでも改善できれば」と語る。
人口10万人当たりの糖尿病患者数は17年が8位(242人)と改善したが、全国平均(192人)を大きく上回る。10万人当たりの死者数も、18年はワースト3位(17・8人)と高い。県は、コロナ禍の中にあることも踏まえ、野菜が豊富なコンビニの総菜を使った「ヘルシーうどん」を自宅で作れるレシピを提案する考えだ。担当者は「栄養バランスを考えた食べ方を定着させたい」としている。