こんちゅう和かるた お家時間を楽しく、虫の生態遊びながら学んで

2020年5月29日

産経新聞

 日本文化の一つとして海外で百人一首やかるた人気が高まるなか、カブトムシやギンヤンマなど昆虫の生態を詠んだ、「百人一首風 みんなのこんちゅう和かるた」(くまふメディア制作事務所、1600円+税)が話題を呼んでいる。

 虫の気持ちになって詠まれた和歌からは、生命力に満ちた昆虫の世界を身近に感じることができる。

 かるたは、新型コロナウイルス感染防止のため家で過ごす時間が増えるなか、親子で楽しみながら遊べる商品を作ろうと企画された。「こんちゅうクン」の愛称で、講演会や観察会などで虫の魅力を伝えてきた、静岡県磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員、北野伸雄さん(34)が、虫の気持ちになって詠んだ64首がかるたになっている。

 百人一首風に古文体を混ぜた句は、ユニークで時に哲学的だ。カイコの句では「桑の葉を 与ふ人みな いとほしき あなたなしでは 生きられぬかな」と、人から桑の葉をもらって生きるカイコの切なくも複雑な心情をつづる。

 カブトムシの気持ちを詠んだのが「恋敵 角競り合いに 人も言ふ 戦はずして 勝つが勝ちなり」。カブトムシのオスは、樹液やメスをめぐり角を突き合わせて戦うことが知られているが、多くの場合、戦う前に角の長さを見極めて短い方が逃げていくのだという。こうした生態を踏まえ、「戦わずに勝つのがいいのは人間と一緒」と訴える。

 北野さんは「和歌にすることで文字数が制限されたがその分、想像の余地が残ってより虫の奥深さが伝えられたのではないか」と話している。(油原聡子)