2020年3月21日
現代ビジネス
パチンコ店は本当に危険なのか
新型コロナウイルスの感染拡大に危機感が募る日本。こういう事態になると、槍玉に挙げられがちなのがパチンコ店だ。しかし、パチンコ、パチスロをしない圧倒的多数の人々のイメージと、現在のホールの意識に乖離があるのではないだろうか。
業界が努力をしている現状、そして遊技客がなすべき行動とは何か。改めて考えてみたい。
連日ニュースになる新型コロナウィルスによる被害。WHOもパンデミック宣言を出し、日本でも依然として感染者は増え続けている。報道の中には「政治的な思惑があるのか無いのかは定かでないが、政府の報告は実は被害を過少申告しているのではないか」なんて陰謀論まで出てくる始末だ。
こういった、ある意味緊急事態になると、出所や根拠があやふやな情報に踊らされる人間が出るのは世の常。先頃のデマ拡散によるトイレットペーパーの買い占めや、「納豆がコロナに効く」といった話で痛い目を見た方も多いのではないだろうか。
筆者はパチプロとパチンコメディアでの執筆&動画出演で生計を立てる極めて珍しい存在だ。当然、今の新型コロナに関しての報道には強い関心がある。今回はその辺をざっくばらんに、是々非々の立場で語ることとする。
そこでまず、取り上げたいのが「ホールの感染防止策」についてだ。
“利益優先”の姿はもはや無い
パチンコファンの多くが利用しているウェブサイトに『P-WORLD 全国パチンコ-パチスロ機種情報』という有名所がある。ここはパチンコ店の情報が集まる国内最大のサイトなのだが、その中に「業界ニュース」というカテゴリーも存在する。
このページ内を“コロナ”というキーワードで検索すると、例えば以下のようなトピックが列挙される。
・北海道を中心とした休業、短縮営業
・各種イベントの中止など(これは一般のスポーツイベントと同様)
・感染症対策製品(消毒液など)の配布
・感染に関する報告会
・遊戯客へのアピール自粛(新装開店等の出玉や営業に関する物だけでなく、企業のイメージ広告の自粛も含む)
正直、38年前からパチンコをしている筆者にすれば、「ずいぶんとホールも変わったものだ」と思う。
利益優先だったら休業は絶対できないし、昔ならスタッフの士気面もあり、消毒の徹底などごく一部の店舗でしか実現できなかったのではなかろうか。関東の震災で世間から叩かれたのが典型で、もうパチンコという産業が社会の一部になり、「利益は社会の中で認知を受けた上で」という意識すら感じる。
発信される情報以外でも、筆者が通う5軒ほどのホールの状況も記しておく。
多くは組合の発表通りだ。遊技客がやめて空き台になると、スタッフがこまめにアルコール消毒を実施している。当然、アルコール消毒剤の常備もだ。
ただ、大型チェーンを利用しない筆者が見たスタッフのマスク着用率はおよそ6~7割程度に留まった印象だ。マスクは感染しないためというよりは、感染後や潜伏中にウィルスを撒き散らさないのが目的なので、万が一を考えると少々不安も残る。
「換気が悪い」「お年寄りが多い」の是非
現場の様子を踏まえると、この後で述べるホール環境も含めた感染リスクは、一般的な飲食店やアミューズメント施設とさほど変わりはないと判断したい(あくまで全国の店舗を調査したわけではないので、ホールすべてとは言わない)。
では、感染防止策以外はどうだろうか。
冒頭で書いたデマに類似する報道記事には「パチンコの店内環境が危険」という趣旨の物があった。その根拠として多かったのが、「換気が悪い」「お年寄りの遊技客が多い」辺りだ。
換気は店舗の設備に大きく影響されるのだが、今時のホールの空調は優秀である。築40年で空調システムの改善無しといった店は、確かに危険な面もあるかもしれないが、多くの場合は常に通常のビル程度の換気はしていることは間違いない。
また、遊技時は台に向かうゲーム上、人との対面接触はほとんどないことも付け加えたい。現在、大半のホールが設置している分煙ボードの存在も、個人で遊技する中ではかなり飛沫感染防止の対策になっている。
上の両者を備えていない店舗では特に注意する必要があるものの、それ以外の問題は他のレジャーに比べて「(ヘビーユーザーは)滞在時間が極端に長い」ことくらいだと筆者は考えている。
続いて「お年寄りの遊技客が多い」という議論だが、年配層の比率については、認識の浅い記事に対してパチンコ業界からかなりの反発がある。
年齢に対する遊技者割合は高年齢ほど高いのは事実である。しかし、日本の全人口に占める高齢者の比率を考えれば、全遊技者内の比率とイコールでないことは分かるはずだ。実際、遊技者のメイン層は40~50代という統計があるのだが、これはイメージによる決めつけがいかに怖いかを物語っていると言えよう。
それでも不要不急なものだから
ついでだが、玉やメダルを触る直接の接触感染のリスクにも触れておきたい。
ホールのパチンコ玉は店内を循環しており、「研磨システム(地下に設置されていることが多い)」を通る。ここで磨かれて玉詰まりを予防しながら台へ戻るのだが、ホール勤務経験がない筆者には消毒をしているか否かはわからない。多分そんな施設は無いだろう。
本題に戻ってもう一度言うが、パチンコを遊技する人間は、あやふやな根拠のニュースに右往左往するのではなく、信頼できる報道を見抜く目を持つべきだと思う。
最後にパチンコと長く付き合っている筆者から、同じ遊技客への提言をしておきたい。
極論、感染のリスクをゼロ近くまで抑えたいのなら、パチンコ以外も含めた外出をしなければいい。ゲームセンターにもショッピングモールにも行かず、ファミレスもNGとするだけだ。多くのファンにとって、パチンコは政府が言う「不要不急」なジャンル。これは事実なのだから。
ただ、ホールと似た環境の施設に足を向けるのであれば、必要以上にパチンコを危険視する必要はない。そして、遊技をしたければ、きちんとした対策を取りましょう、と。
ホール側はすでに(先の個人的疑問点はともかくとして)できる限りの対策はしている。これはメディアの人間としての面でなく、遊技客でもあるパチプロとしての筆者の素直な感想である。
課題にすべきは「客の衛生意識」か
あとはパチンコをしに訪れる客側の問題だ。日常的に遊技客を見ている筆者から言わせていただくと、多くのファンの衛生意識は高いとは言えない。
これはトイレを済ませた後に手を洗わない客の比率からも明らかだ。丼勘定で失礼ながら、一時専門誌の原稿ネタにしようとカウントしたところ、こういう層が2割(ひょっとしたらもう少し多い?)程度はいる。これは他の商業施設よりも多いと思う。
せめてトイレ後やハンドルを握る前に、手をアルコール消毒してほしい。現在のパチンコはハンドル以外にも、各種ボタンやコールランプ等の触れずに遊技しにくい部分が多い。こちらも同様だ。
筆者の場合はアルコール除菌ペーパーを持ち歩いていて、誰がか遊技した後の台に着席する場合、必要なら拭いてからにしている。ある意味で仲間である同じ遊技客を信用していないことになるのだが、現状では致し方なしだ。
そして、品薄で手に入らない人は仕方ないが、やはりマスクを着用すること大切だろう。もしも感染してしまった場合、(症状を自覚したら即帰宅だろうが)潜伏状態でウィルスをばらまかないためにするべきだ。
ホールやパチンコ業界側が意識を変えているのに、ファンだけが昔のままというのは寂しい。
すでにパチンコは博打ではない。「他人の迷惑など知ったことか」といった意識でいる間は、真の意味で社会に認知される遊技とはなり得ないと思う。パチンコをしない人は別として、少しでも打つ機会がある人には「遊技の場は関わる人間みんなで守る」そう思っていただきたい。