2020年5月3日
CNN.co.jp
(CNN)約1億年前のサハラ砂漠の一部は、大型の肉食恐竜が類をみない密度で生息し、おそらく地球の歴史上、最も危険な場所だった――。化石の分析によるそんな研究結果が専門誌に発表された。
化石の発掘現場はモロッコ南東部にあるケムケム地層。アルジェリアとの国境に近く、白亜紀にさかのぼる岩層が残っている。
分析の結果、この地域には大型の肉食恐竜や、空を飛ぶ肉食の爬虫(はちゅう)類、クロコダイルに似た捕食生物が共に生息していたことが判明。当時は砂漠ではなく川で、大型の魚類も集まっていた。
これらの生物が地球を闊歩(かっぽ)していたのは、初期人類が登場する9500万年あまり前のことだが、筆頭著者の古生物学者ニザル・イブラヒム氏は「タイムマシンでこの場所を訪れることができたとしても、たぶん命は長く続かないだろう」と語る。
イブラヒム氏はCNNの取材に、ケムケムの生態系は「生態学的にいって非常に謎めいている」と指摘。生態系では通常、草食動物の数が肉食獣を上回り、大小さまざまな肉食動物のうち大型の1種類が支配的な地位を確立するのが普通だ。
ところがケムケムでは、肉食動物の化石の方が草食恐竜よりも多く、肉食動物の内訳をみても、カルカロドントサウルスやデルタドロメウスなど、ティラノサウルス・レックス(Tレックス)並みの巨大恐竜が共に生息していた。
ケムケムの大型肉食獣が共食いしていた可能性は低い。当時は「車並みのサイズ」のシーラカンスのほか、体長約7.6メートルに達するノコギリザメも生息しており、イブラヒム氏によると、こうした豊富な巨大魚を餌にしていたと見るのが現実的だという。