コロナ休園4歳女児、公園で発見した「イエーイの石」に大喜び “宝物”を鑑定すると…

2020年4月8日

まいどなニュース

 兵庫県内の幼稚園に通う4歳女児が3月下旬、自宅近くの公園でちょっと変わった形の小石を見つけました。人間が右手でこぶしを作り、親指を上に向けた「いいね!」の指の形、サムズアップにそっくり。女の子に訪れた小さなハッピーについて、お母さんに話を聞きました。

突然「イエーイだ!」

 お母さんによると、女児は新型コロナウイルスの影響による急な休園のため、終業式まであと数日は一緒に登園するはずだった友だちと急に会えなくなったことに沈みがちでした。さらに、未知のウイルスに対する大人たちの戸惑いも伝わっていたようで、小さいなりに不安を感じていた様子でした。

 そこでお母さんは、娘のストレス解消になればと、公園遊びを日課にします。そんな中、運命的な石との遭遇をしたのです。

 ─見つけた時のことを教えてください。

 「娘は落ちていた木の枝で、地面に大きなアンパンマンの絵を描いていました。そしたら突然『やったー、イエーイだ!!』と叫びました。何事かと駆け寄ると、手のひらに『いいね!』の形そっくりの石を載せていて。私もびっくりしました」

 石のサイズは縦1.5センチ、横1センチ、厚さ3ミリほど。表面は冷たく、しっとりつるりとしているそうです。

 「家に持ち帰り、工作用に取っておいた6Pチーズの丸い空き箱に入れ、時々ふたを開けては愛おしそうに眺めています。『イエーイの石』と名前まで付け、両手の親指を立てて『♪イエイ、イエイ、イエーイ』と自作の歌で踊っています(笑)」

 「イエーイの石が娘に久しぶりにわくわくした気持ちを運んできてくれました」とお母さんも喜びます。

専門家も「見たことありません」

 兵庫県最大の石の博物館「玄武洞ミュージアム」(豊岡市)の学芸員、中嶋灯奈(ていな)さんに石の写真を見てもらいました。

──この石は?

「『チャート』です。海の底で小さい生物の骨格が長い時間をかけて積もってできた堆積岩です。成分が水晶と同じなので硬く、緻密です。さまざまな色があり、この石にも見られるように、石英脈と呼ばれる白い筋が入っているものもあります。赤いものは中に含まれる酸化鉄による色といわれています。触ってみて、しっとりしたようなつるつる感があれば間違いないと思います」

──よくある石ですか。

「はい。大変よく見かける岩石です。文献によると、加古川(兵庫県の一級河川)では最も多い石らしいです」

──世紀の大発見なるか──との淡い期待は打ち砕かれましたが、ここまで指の形にそっくりの石も珍しいのでは?

「見たことありません。おもしろい形ですね。割れたあとに角が丸くなったのでしょうけど、細い部分が削り取られずによく残ったなと思います」

どこから来たのか

 堆積岩チャートは、庭園やガーデニングにも人気で、業務用だけでなく市販もされています。自治体が管理する公園ではよく使用される石なのでしょうか。女児が訪れた公園を管理する、明石市都市局緑化公園課に尋ねてみました。

──公園ではよく使う種類ですか?

「明石市内の公園の整備では、チャートのみを使用するということは基本的にはありません。何かに混ざっていた可能性が高いのではないでしょうか」

 「イエーイの石」が公園までたどり着いた理由として、(1)舗装などの下の層、山土や岩石を割った石を敷き詰める「砕石層」に混ざっていた(2)コンクリートやアスファルトの調合に使われる砂利や砂に混ざっていた、などが考えられます。公園遊びをする子どもたちの手によって、地面に10センチほど穴が掘られ、小石の層からイエーイの石が地上に飛び出した、と想像できます。

芽生えた愛

 太古に海底で生まれた岩が、日常のすぐそばに転がっているってロマンチックですね。最後に、女児に石のことを尋ねてみると…。

 「『イエーイのいし』におともだちをつくってあげたいからさがしにいきました」

 おともだち? お母さんに助け舟を求めると、宝箱の中にひとりぼっちはかわいそうと、仲間の石探しを始めたそうです。

 コロナ休園の4歳女児に芽生えた、石への深い愛。将来は地質学の研究者になったりして──女の子の夢ある未来を想像したくなりました。

(まいどなニュース/神戸新聞・金井 かおる)