2020年3月6日
弁護士ドットコム
新型コロナウイルスが感染拡大する中、新たなハラスメントが急増しています。
咳やくしゃみをしただけで、新型コロナ肺炎と疑われたり、距離を置かれたりしたという声が上がっています。中には、「新型コロナウイルスと誤解させて迷惑かけたから、謝罪しろ」と迫られたり、感染者が確認された町に住んでいるというだけで、周囲の人に距離を置かれたりした人もいます。
ネットでは、こうした新型コロナウイルスに起因するハラスメントが「コロナハラスメント」「コロハラ」と呼ばれています。もし、職場で「コロハラ」に遭ってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。
●花粉症なのに「お前コロナだろ、会社に来るな」
ネットやニュースでは職場でのさまざまなハラスメントが報告されています。
・喘息を患い、職場で咳が出てしまった。マスクはしていたし、上司も喘息であることは知っていた。しかし、上司から「周囲を不安にさせたから謝罪するように」と迫られている。
・感染者が確認された町から通勤しているというだけで、「あいつも(新型)コロナかもしれない」と周囲から距離を置かれた。
・花粉症でくしゃみをしただけで、「お前、(新型)コロナだろ。会社に来るな」と同僚に言われた。
これらの行為はハラスメントにあたるでしょうか?
「『他者に対する発言・行動等が相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること』をハラスメントと言います。
これらの内容は全てが、ご本人を不快にさせたり、尊厳を傷つけたりしていることは間違いないので、全てハラスメントに当たることは間違いありません」
●「程度がひどい場合は、労働基準監督署などに相談を」
しかし、ハラスメントだと思わずやってしまっている人も多いのではないでしょうか。
「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が今年の6月に施行(中小企業は2022年4月)されるにもかかわらず、国民のかなりの人が半ばパニックに陥っているので、通常の状態であれば考えられない言葉を投げかけられているのが、今回の特徴かもしれないですね。
問題は、対処法です。混乱期ですので、程度に応じて行動していくしかありません。
例えば、『「あいつも(新型)コロナかもしれない」と周囲から距離を置かれた』というのはハラスメントではありますし、名誉棄損等も考えられるのですが、少し様子をみるのがいいように思います。
一方、相手が『謝罪するように』『会社に来るな』と単に言うだけではなく、それを執拗に迫るのであれば、態様によっては『義務のないことを行わせ』として刑法の強要罪が成立しえますし、明らかに度を超えており、本人の受ける不利益の程度も大きいです。
程度がひどい場合は、労働基準監督署や労働局内に設置されている『総合労働相談コーナー』に相談すべきでしょう」
●新型コロナではないという「陰性証明書」を出せという事業所も
沖縄県では、風邪などで体調を崩して休んでいた従業員に対し、新型コロナウイルスに感染していないという「陰性証明書」を出せと迫った事業所があったそうです。県ではやめるように注意喚起していますが、これもハラスメントにあたるのでしょうか。
「『新型コロナウイルスの陰性証明書』を出せと迫るのも、医療機関等で陰性証明書は出せないですし、ハラスメントに当たることは間違いありませんので、そのような目に遭われた場合は、同様に労働基準監督署等に相談すべきでしょう」
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士4名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:http://www.yun-ken.net/