2020年11月6日
文春オンライン
東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは10月29日、21年3月期の連結純利益が511億円の赤字になる見込みと発表した。通期の赤字転落は96年の上場以来初めてのことだ。
「9月末時点で約2530億円の現預金を保有しており、当面の資金繰りには問題はありません。ただ、東京ディズニーシーの大規模拡張プロジェクト(約2500億円)などを継続するほか、社債償還への備えも必要になる。手元資金を厚くしておく必要はあるでしょう」(メガバンク幹部)
他方で、売上高の回復が見込めないことから抜本的なリストラに踏み込む。約4000人いる正社員と嘱託社員の冬のボーナスを7割削減。そして時給で働くダンサーら出演者約1000人に対しては、窓口業務に移ることや退職などの選択肢を提示した。横田明宜常務も決算会見でこう述べている。
「基本的には雇用を維持したいが、ショーなどがしばらく実施できないため、ダンサーの方などには辞める選択をした方もいる」
だが――。ディズニーの元ダンサーが証言する。
「『辞める選択をした』ではなく、『辞める選択肢しかなかった』です。会社側から突き付けられた条件は、出演の継続を希望する場合の手当は『半年で約22万円』。月3万~4万円の収入でどうやって生活していけと言うのでしょうか」
それだけではない。
オリエンタルランドの冷淡な“最後通告”
実は退職にあたって、ダンサーや、キャラクター(ミッキーなどに入る出演者のこと)たちが会社から署名を求められたのは「自己都合退職」であることを示す「出演者退職承認書」のみ。失業保険を申請しても、一般的に受給期間は「会社都合退職」に比べ、短くなってしまう。
「9月末に行われた退職面談で『会社都合退職にはできないのですか?』と尋ねましたが、『あくまでも選択肢がある中からご自身でお選び頂きました』とにべもなかった。その一方で、会社側が強調するのは『退職の経緯など機密情報については、許可なく漏洩するな』ということばかり。その冷淡な“最後通告”には心底失望しました」(同前)
オリエンタルランドは「当社から出演者に対し退職のお願いをしたという事実はなく、事実上の退職勧奨には該当しないと認識しております」などと回答。
前出のメガバンク幹部が指摘する。
「ディズニーの最大の売りは、ダンサーのパフォーマンスやキャラクターとの触れ合い。彼らが相次いで退職してしまっては、“夢の国”は更なる客離れを招く悪循環に陥りかねません」
このままでは、収益改善も夢のまた夢に終わる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年11月12日号)