2020年2月1日
ロイター
英国の欧州連合(EU)離脱は、同国にとって過去何十年かで最大の地政学的な動きだ。31日2300GMTに正式なブレグジット(英のEU離脱)が実現し、移行期間に入ると、何が変わり、何が変わらないのかをまとめた。
<政治権限>
英国は名目上だけはEUに加盟し続けるが、金融サービスから欧州産自動車の定義まで、EUの最終的な方針を決める会合で投票権を失う。
EU経済におけるウエートが約15%の英国は、最大の防衛費を拠出し、ロンドンの金融街シティーは国際金融資本市場の中心でもある。それでも英国の経済規模はおよそ2兆7000億ドルと、EU全体の18兆3000億ドルから見ればはるかに小さい。
またEUは、ジョンソン首相が英国をどのような姿にしていくか正確に見極めようとするだろう。つまり英経済とシティーに積極的なてこ入れをして、EUのすぐ外側に新たな競争相手を生み出すのかどうかだ。
<市民>
英国民とEU市民は今年末まで、相互に生活し、働く権利を維持する。なぜなら双方は現在の関係を当面続ける移行期間の設定に合意しているからだ。
これまで英政府は、推計350万人のEU地域出身在住者に対して、少なくとも今年12月末までに引き続き権利を確保するための登録をするよう呼び掛けている。ジョンソン氏は、ブレグジット後にオーストラリア方式の入国管理制度を導入する意向。これにより、高度な技能を持つ人を受け入れながら、非熟練労働者の流入を禁止できるという。
<企業と税関>
移行期間があるため、企業にとって規制環境は従来と変わらない。移行期間後は、英国の関税が適用されるのは第三国から北アイルランドに向かう製品に限られる。EU市場に向かうとみなされる製品は、英当局がEUの関税を徴収する。
アイルランド島内には税関は設置されず、手続きは各港湾で行われる。英当局は、北アイルランドでEUの税関ルールを代行して実施する。
<貿易>
31日のブレグジット後、英国は他国と自由貿易協定(FTA)交渉を開始することができる。英政府にとっては、同国の貿易額のおよそ半分を占めるEUと、米国とが、最優先の協議相手だ。対米交渉では、英国が米国からの報復示唆にもかかわらず一方的に提案しているデジタル課税がネックとなりそうだ。米国は、デジタル課税を導入するなら英国産自動車に報復関税を発動するとけん制している。
<金融>
移行期間中は、EUの顧客と取引している英国の幅広い金融サービス業はこれまでと同じ環境を享受できる。今年12月末までは英国でも、全てのEUの金融ルールが適用される。英国の銀行や資産運用会社、保険会社は今のところEU域内の投資家に何の制約もなしにアクセスが可能だ。
こうした英金融サービス業の将来のEU市場へのアクセスがどうなるかは、英国とEUが真っ先に話し合う問題の1つで、6月末までに結論を出さなければならない。
英政府は自国の規制体系について、EUに域内と「同等性」があると認定してもらい、金融サービス業がEU市場にアクセスを継続できる道を開きたい考えだ。