2020年4月17日
毎日新聞
新型コロナウイルスの感染拡大で来店客が激減し、営業継続も危ぶまれた福岡市の保護猫カフェに善意の輪が広がっている。猫に癒やされながらゆっくり時間を過ごすことができるカフェは、保健所で処分される運命にあった保護猫にとって里親との出会いの場でもあった。休業中も賃料や猫の食費など多額の経費がかかる窮状をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で訴えたところ、エサの寄付が殺到し、里親になりたいという希望も相次いだ。
「わずか1週間でこんなに届きました」。福岡市中央区の「猫カフェキューリグ」のオーナー、野村かやのさん(51)は、店内に山積みになった段ボール箱を見ながら表情を緩めた。箱の中身はどれも全国から郵送で送られてきた猫用のエサだ。
店は2008年、行き場がなく、保健所で処分を待つしかなかった保護猫を集めオープン。里親も募集し、これまでに約800匹の新しい飼い主が見つかった。現在は市内の2店舗で約80匹を飼っている。
保護猫の殺処分を一匹でも減らそうと福岡市の動物愛護管理センターとも連携し、常連客にも支えられ順調に続けてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大は多くの飲食店同様に野村さんのカフェも直撃。衛生面や換気などには十分に気を使っているが、3月以降来店客の姿がめっきり減った。毎月20万円かかるエサ代だけでなく、猫の医療費や賃料などもかさみ、営業し続けるのが厳しくなった。
そんな時、野村さんの脳裏をよぎったのは数年前に鹿児島市内の猫カフェで経営難からオーナーが失踪し、猫が放置された事件だ。保護猫を預かっている以上、店をつぶすわけにはいかない。なりふり構わず、窮状を訴えることにした。
「猫たちは絶対に守りたいと思ってます」。4月に入ってすぐ、SNSやホームページで呼びかけると、応援のメッセージとともに全国からエサや寄付金が相次いで寄せられた。外出自粛の影響のせいか、癒やしを求めて、自宅でペットを飼いたいという申し出も目立つようになった。
福岡県など7都府県に緊急事態宣言が発令されたのを受け、1店舗は13日から休業しているが、天神店(092・721・0909)は営業を続けている。支援を呼びかけて以降、10匹の譲渡が決まり、2カ月間は困らない分のエサも届いた。野村さんは「皆さんの善意で何とか閉鎖を免れた。感染が終息したら元気な猫たちの姿をまた見に来てほしい」と話す。【飯田憲】