2021年3月9日
ミュージックヴォイス
HiHi Jets(ジャニーズJr.)の井上瑞稀が、俳優業で頭角を現している。大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)での時代劇デビューに、ドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)で11年ぶりの月9凱旋。4月放送のドラマ『DIVE!!』(テレビ東京)では、メンバーの作間龍斗・高橋優斗(※高ははしごだか)とともに、主演を務めることも決まっている。そこで本稿では、彼が躍進を遂げている理由について考えていきたい。
井上は、8歳でジャニーズ事務所に入所。現在20歳にして12年のキャリアを誇る。彼の魅力は、何といっても表現力の高さだ。楽曲によってさまざまな表情をみせたり、宇多田ヒカルの「First Love」のカバーでは透明感の高い歌声も披露した。俳優としては、2010年放送の『夏の恋は虹色に輝く』(フジテレビ系)でドラマデビューを果たした。最初は芝居に向いていないのでは…と悩むこともあったというが、中学生の時に出演した舞台「ABC座」で彼の演技を見たジャニー喜多川氏から、「You、天才だよ!」と言われたことで奮起。そこから、演じることへの自信がついてきたという。
そんな彼のもう一つのターニングポイントのように感じるのは、2018年。嵐やNEWSなどのメンバーが、ジャニーズJr.時代に出演していたドラマ『恋愛熱血道』『怖い日曜日』(ともに日本テレビ系)のリメイク作品に出演した時のことだ。このドラマ自体がオーディションとなっており、同作に出演した9人のジャニーズJr.の中から、NEWSの加藤シゲアキ主演のドラマ『ゼロ 一攫千金ゲーム』(日本テレビ系)で加藤が演じる主人公の、ライバル・標役が選ばれた。そこで、井上は惜しくも落選してしまう。
「覚えている限りで一番悔しい」と涙を流したあと、「絶対にここで腐りたくない。毎回のチャンスを無駄にしないように、全力でやっていきたい」と力強く語っていたのが印象的だった。その言葉のとおり、その後の『チート~詐欺師の皆さん、ご注意ください~』(日本テレビ系)や、『知らなくていいコト』(日本テレビ系)など、ジャニーズの先輩が出演している作品へのゲスト出演で着実に演技の実力を上げ、大河ドラマ『麒麟がくる』に挑んだ。
『麒麟がくる』で井上が演じたのは、織田信長(演・染谷将太)の長男で、帰蝶(演・川口春奈)に育てられた織田信忠。時代劇が初出演というなかで、明智光秀(演・長谷川博己)をはじめ、佐久間信盛(演・金子ノブアキ)ら重臣を率いる総大将を務めた。カメラテストの際に監督から「そんなんじゃ、誰もついてこないよ」と言われたというが、「声の張り方や動作など、自分がやるべきことがはっきり理解できたので、そう言われて逆にリラックスできました」とコメントした井上。2018年のオーディション落選の時にも感じたが、逆境や悔しさをプラスに変えるという強さが人一倍あるように思う。
3月1日からレギュラー出演しているドラマ『監察医 朝顔』では、神奈川県警察の新人鑑識官・姫宮龍司を演じている。奇跡の童顔で、年齢はまさかの37歳という強烈に個性的な役どころを、現在20歳の井上が表現。その配役は監督からの期待の表れとも言える。また、4月スタートの『DIVE!!』では、気弱で周りに流されがちだが、敏腕コーチに才能を見初められ、いきなりオリンピックを目指すことになる坂井知季を演じる。井上は、YouTube公式チャンネル『ジャニーズJr.チャンネル』でも、水が怖いカナヅチであることを明かしており、飛び込み競技を題材とした同作への出演は、また一つの試練とも言えるだろう。難しい役どころが続いているが、そういう時こそ本領を発揮する井上のことだ。また俳優として新たな魅力を開花してくれるに違いない。【かなぴす】