2021年3月3日
FRIDAYデジタル
スノストの出演番組が相次いで決定
2月中旬、TBSが「4月期番組改編説明会」をオンラインで実施し、改編率の大きさが業界内外で話題を集めた。
その改編率は、全日帯(6時~24 時)が19.17%、ゴールデン帯(19~22時)が32.86%、プライム帯(19時~23時)が35.36%。特にゴールデン・プライム帯が30%を超える改編は「7年ぶり」というから勝負を賭けているのだろう。
つまり、最もいい時間帯の番組を思い切って変えるのだが、注目したいのは次世代ジャニーズアイドルの抜てき。まず金曜19時台の『爆報!THEフライデー』に代わる新番組『オオカミ少年』にSixTONES・ジェシーと田中樹のレギュラー出演が発表された。
さらに、BS-TBSに移動する『噂の!東京マガジン』に代わる新番組『それSnow Manにやらせて下さい』がスタート。Snow Manの冠番組であり、単発特番やParaviからの昇格となる。
また、火曜19時台の新番組『オトラクション』は、2月23日にプレ特番が放送されたばかりが、先輩のKis-My-Ft2・千賀健永、二階堂高嗣が「『プレバト!!』チーム」だったのに対して、SixTONESはグループ名の「SixTONESチーム」で堂々参戦。これを受けたネット上では、「春からレギュラーか準レギュラーでの出演もあるのでは」「Snow Manと交互に出るかも」などと期待の声が挙がっていた。
どちらのグループも、デビュー1年あまりで、メンバーは全員20代。「TBSが彼ら次世代ジャニーズにどれだけ期待しているか」がわかるだろう。
それ以外でも、月曜21時台から19時台に移動する『アイ・アム・冒険少年』にSnow Manの向井康二と目黒蓮、月曜20時台の『クイズTHE違和感』に、なにわ男子の大西流星、藤原丈一郎、大橋和也がレギュラー出演中。ちなみに、月曜22時台から21時台に移動する音楽番組「『CDTVライブ!ライブ!』にも、次世代ジャニーズの出演が増えるのではないか」とも噂されている。もしかしたらTBSの月曜夜は、「次世代ジャニーズの日」になるかもしれない。
ファミリー層の10・20代をつかむ期待
では、なぜTBSは次世代ジャニーズを抜てきするのか。
「4月期番組改編説明会」では、家族に見てもらえる番組制作を強調していたことから、彼らが「家族の中でも、親子の“子”をつかむ」ことが求められているのは間違いない。これまでTBSの重点ターゲットは「ファミリーコア」と呼ばれる13~59歳だったが、今春以降は上下10歳若返らせて4~49歳に設定し、「新ファミリーコア」と呼んで強化していくという。
たとえば、新ファミリーコアの中で4~19歳の未成年をつかもうとしたとき、これまで親世代が親しんできた先輩ジャニーズでは年齢層が高すぎる。たとえば、幼児や小中学生にとって30・40代の先輩ジャニーズはお父さん世代に当たり、恋愛に近いときめきや憧れを抱きやすいのは10・20代の次世代ジャニーズだろう。
また、若い彼らには、かつてのSMAPがそうだったように、「視聴者と一緒に年を重ねながら成長する姿を見せていく」という活動スタンスが求められている。現在の30・40代男女に「SMAPを見て育った」「若いころから見てきたから親近感がある」という人々が多いように、TBSが抜てきしたSnow Man、SixTONES、なにわ男子には、その再現が期待されているのだ。
その3組はグループのカラーも個人のキャラクターも三者三様だが、いずれもアーティストとしてのパフォーマンスには定評がある。実際、さまざまな現場で関係者に取材していると、Snow Manのダンスとアクロバット、SixTONESの歌唱力、なにわ男子の正統派アイドルらしい華を称える声を何度も聞いてきた。
そんなスキルがあるだけに、彼らにとってバラエティで顔と名前を売ることは極めて重要。TBSと次世代ジャニーズたちは、いわゆるWin-Winの関係であり、ましてやジャニーズ事務所への忖度ではないはずだ。今回の抜てきは「お試しで起用してみる」ではなく、「これから深い縁を築いていこう」ということではないか。
数年後に黄金期を迎える可能性も
退所者が続出するなど、メディアの中にはジャニーズ事務所の行く末を不安視する声もあるが、テレビマンたちの見方は必ずしもそうではない。次世代ジャニーズはTBSが抜てきしたSnow Man、SixTONES、なにわ男子だけではなく、ジャニーズJr.に有望株が目白押し。Travis Japan、HiHi Jets、美 少年、少年忍者、7 MEN 侍、Aぇ!groupのように、すでに多くのファンを持ち、地上波の番組にも進出しているメンバーは思いのほか多い。
昨年末にある情報番組のスタッフと話したとき、「もしかしたら数年後には過去最高の黄金期が来るかも」と言っていた。TBSは今回の抜てきが成功すれば、さらなる起用につなげるだろうし、他局も似た戦略を採っていくかもしれない。
とにかく現在、民放各局はコロナ禍による減収に苦しみ、スポンサーは商品ターゲットに合う番組への広告出稿をこれまでより吟味するようになっているという。そんな閉塞感を打ち破るのは、フレッシュな風を吹き込み、大きな可能性を秘めた次世代ジャニーズなのだろう。テレビマンたちは先輩ジャニーズたちの安定したスキルと実績は認めてはいるものの、次世代ジャニーズの若さと明るさに賭けているのではないか。
次世代ジャニーズたちは同世代のタレントと比べると、「礼儀正しく、舞台度胸もトーク力もある」「若くして熱心なファンがいるなど物販力がある」と言われているため、実は起用することへのハードルはそれほど高くない。しかし、すぐに結果が得られなかったとき、TBSはどんな判断を下していくのか。TBSはこのところドラマが絶好調の反面、バラエティが絶不調だけに一抹の不安を抱かせるが、若い彼らを抜てきした以上、長い目で見ていく姿勢が求められるだろう。
文:木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。