中島健人「カメラが回ってないときも…」夏目漱石のひ孫が語る“超真面目”な素顔

2021年2月23日

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 明治を代表する文豪、夏目漱石。漱石がクラシック音楽に熱中していたことは、知る人ぞ知る事実だが、その血を引く子孫が音楽畑で活躍しているのも、何かの巡り合わせなのだろうか――。

 ドラマや映画にも楽曲を提供し、俳優のオダギリジョー(44)、浅野忠信(46)らに演奏指導も行った経験もある、音楽プロデューサーで作編曲家の夏目哲郎氏(41)が語る。

「夏目漱石は、僕の曽祖父にあたります。漱石の次男で随筆家だった『夏目伸六』の長女・夏目沙代子が僕の母親で、僕は6人兄妹の三男になります」

 漱石のように、小説を書くつもりはないという。

「物書きにまったく興味がないわけではありませんが、僕は物心ついたときから、音楽に浸っていました。じつは、親戚には音楽関係者が多いんです。

 祖父の伸六は、チェリストで随筆家。漱石の長男にあたる、僕の大叔父の純一は、バイオリニストで『東京フィルハーモニー交響楽団』のコンサートマスターも務めました」

 哲郎氏の父は「サカタアキオ」という、主にスチールギターを演奏するマルチプレイヤーミュージシャン。戦後の米軍キャンプでバンドマスターを務め、NHKや後楽園など、数々のステージで活躍してきた。

「子どものころから、いろいろな楽器がそこら中にあったので、僕もひととおり演奏できるようになっていました。ちなみに父は、僕と同様に音楽指導者でもあり、数々のプロのミュージシャンを世に送り出しています。同時に音楽ライターでもあり、単独でアメリカに乗り込み、ミック・ジャガーやヴァン・ヘイレン、ポインター・シスターズにも取材したことがあるそうです。

 姪の夏目ひみかは、シンガーソングライター。私の妻のTONNKOも、シンガーソングライターで音楽プロデューサーです」

 まさに “音楽一族” である夏目家。哲郎氏本人は、音楽プロデューサーや作編曲家以外に、ボイストレーナーや楽器演奏指導者でもあり、ドラマや映画の劇中曲の提供や歌唱、楽器演奏の指導もしているという。

「とくに印象に残っているのは、2012年に放送された『家族のうた』(フジテレビ系)です。主演のオダギリジョーさんが元ロックミュージシャンという設定のドラマで、最初は杉咲花さんがギターを弾くシーンの演奏指導として関わらせていただきました。

 その指導が評価されたかたちで、オダギリさんともお会いできました。オダギリさんが、『漱石さんのひ孫さんなんですね!』とすごく喜んでくれまして、ドラマ全話に関わることになったんです。オダギリさんが演じる、ちょっと変わり者の主人公・正義の楽曲や、杉咲花さん演じるこころの曲は、すべて僕が作らせていただきました。

 オダギリさんは、細部にわたって研究が熱心な俳優さんでした。たとえばレコーディングやライブのシーンでは『どう弾けばプロに見えるか』と、ギターの構え方から細かく質問され、劇中ではギターを置くスタンドの、ネックを支える部分のネジの緩み具合をいじり、片手でかっこよく長さを調整するところにまでこだわっていて、感動しました。

 あのドラマは、本当に奇跡的なキャスティングでして、武田真治さん(48)とかSexy Zoneの中島健人くん(26)とか、音楽ができる俳優さんが集まっていたので、僕が教えることと言えば、細かいニュアンス程度でした」

 とくに中島は、ジャニーズ事務所の先輩である「木村拓哉さんみたいになりたい」と、熱心に語っていたという。

「中島くんも、ギター指導をするなか、かなり難しい曲も弾けていました。カメラが回ってないときに『僕は木村拓哉さんみたいに、弾きながら歌えるようになりたいのですが、どう練習すればいいですか?』と聞かれました。

 フジテレビの湾岸スタジオで寝っ転がってもらい、腹式呼吸の発声練習の仕方も教えました(笑)。とにかく熱意があって、まじめなんですよね」

●浅野忠信に“男気”あり!「早く帰らせてあげよう」の心遣いに恐縮

2016年に公開された映画『淵に立つ』(深田晃司監督)では、主演の浅野忠信(47)に指導したという。

「この作品では、挿入歌のスコットランド民謡の編曲とオルガンの演奏指導で参加させていただきました。浅野さんは、すごく男気がある方で。

 僕が一日じゅう、現場に張り付いてなければいけない日があったのですが、浅野さんはその当時の僕が夜中に作曲して日中に眠る体質だと聞いていたらしく、『夏目さんの仕事終わったなら、早く帰らせてあげてよ』ってスタッフさんに言ってくださったんです。

 感謝しながら、『気を使っていただかなくても大丈夫ですよ』とお伝えしたのですが、浅野さんは『段取り的に夏目さんのシーンを早くできるなら、やろう』って。

 しかも、ご本人がバンド活動をしていることもあり、オルガン演奏を教えると、すぐに弾けていらっしゃったんですよ。オダギリさんのギターもそうでしたが、『俳優さんって、本当に多才ですごいな』と思いましたね」

 哲郎氏の、現在の活動は?

「いまは音楽のプロジェクトをいくつか抱えていまして、そのひとつとして、『STAY TUNE』という新しい女性ボーカルグループのプロデュースを妻と一緒にやろうとしています。TONNKOの楽曲へも、できる限り関わっていくつもりです。

 また、『T Music Japan』というレーベルを妻と一緒に立ち上げまして、音楽の多岐にわたる育成、指導、サポートからプロデュース、楽曲制作、CD制作、楽曲配信なども一緒におこなっていきます。

 新しい挑戦としては、ヨーロッパで音楽活動をおこなっていたTONNKOの独特な幻想的で癒しの音楽センスと、僕の得意とするファンキー&ソウルフルな音楽センスを合わせた、今までにない新しい音楽のジャンルを創ろうと頑張っているところです。

 漱石の小説が今でも愛されるのは、やはり人の心の奥底に触れる作品だったからではないでしょうか。僕と妻も力を合わせて、このコロナ禍に世の中を元気にさせるような、少しでも誰かのためになるような音楽を世に出したいと思っています」

 漱石のDNAが通う新ジャンルの音楽――。どんな音色になるのか、楽しみだ。