乱歩「幻の文庫本」、古い蔵で発見 生まれ故郷で展示へ

2021年2月8日

朝日新聞デジタル

 名張生まれの作家、江戸川乱歩(1894~1965)の初期の短編で、戦後に刊行されたが長く存在が確認されていなかった希少な文庫本「一人二役」が京都市の古い蔵から見つかった。

 発見者から三重県名張市に寄贈され、9日から市立図書館で一般公開される。

 見つかった本は地平社刊の手帖文庫「一人二役」。普通の文庫版より一回り小さいB7判62ページで、「黒手組」「一人二役」の短編2作を収録。奥付には「昭和二十三年五月十五日 発行」とある。

 「一人二役」は1925(大正14)年に文芸誌「新小説」に発表された。市立図書館が2003年に刊行した「江戸川乱歩著書目録」によると、文庫や全集に収録される形で何度も刊行されているが、今回見つかった地平社版は現物が確認できず外装やページ数は不明と記されている。

 京都市のアンティーク着物店「戻橋(もどりばし)」を経営する渡辺健人さん(36)が、1月上旬に市内の旧家の蔵の所蔵品を買い取った際、タンスの引き出しからこの本を見つけた。高校生のころから乱歩が愛読書で、店の内装も作品をイメージしたという渡辺さんは、すぐにツイッターに写真を載せ「これは貴重な本なのでは」と書き込んだ。市立図書館の元嘱託職員で著書目録を編集した名張市の中相作さん(67)がこれを見つけて市に情報提供。図書館から連絡を受けた渡辺さんは「乱歩の生まれ故郷で多くの人に見てもらえれば」と快く寄贈を申し出た。

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