韓国で「鬼滅の刃」公開 「反日不買はからかわれて当然」「意味も理由もないNO JAPAN」と一刀両断に

2021年2月1日

デイリー新潮

異例の単館上映でスタート

 韓国で2020年12月に公開予定だった「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」がコロナ禍による延期を経て、1月27日に封切りされた。反日不買運動が続く韓国では「鬼滅の刃」について以前からいくつかの論争があったが、今回の公開を韓国ファンはどのように受け止めているのか?

 今回の上映は最初の1週間に関しては、シネコンでの単館上映だった。

 たとえ日本で爆発的なヒットを記録した作品であっても、「反日を掲げる国」であるうえに「コロナ禍で閑古鳥が鳴く映画館」という悪条件を前にすれば、関係者が公開に及び腰となるのは仕方ないことだろう。

 権利関係者らが議論を重ねた結果、異例の単館上映と相成ったわけだが、公開初日の観客数は約6万6581人(シェア41・7%)で、ディズニー&ピクサー映画「ソウルフル・ワールド」を抜いて1位に。

 他の映画が上映されていない中で、この数字をどう評価するかは難しいところだが、ともあれ、観客の動きを見ていた他のマルチフレックスが次々に手を上げ、拡大公開されることとなった。

 通常、最新映画が公開される前にはマスコミ試写会や一般試写会が行われるが、映画配給会社が国民感情を意識したのか、本公開前にはマニア層の口コミを狙った有料試写会のみが行われていた。

 そもそもファンの中で作品に反日感情を抱く者はおらず、試写会にコスプレをして訪れた観客もいたほどだ。

 シネコン側も公開初日に2種類のチケットを用意する力の入れようで、更にはポスターやカード、ジグソーパズルなど、「鬼滅の刃」オリジナルグッズまで販売した。

 これらグッズ販売が、ファンを劇場へ足を運ばせるのに一役も二役も買ったのは明らかだろう。

 ファンの映画への評価も高く、「泣きすぎてマスクがびしょびしょになった」「とにかく目が離せない」「見なければ後悔する映画」「アクションがとにかく凄い!」と一様に興奮した反応を見せていた。

耳飾りは変更

 韓国内では「鬼滅の刃」の魅力として、仲間との絆を構築していく過程、他を受け入れる心、悪役も単なる意地悪ではなく各自の事情が背景にありそれがまた魅力的であること、主人公・炭治郎とその仲間たちが強敵を相手に頑張る姿がコロナ禍を克服するために頑張っている現況と重なること、などが挙げられてきた。

 その一方で、反日感情からくる韓国内の「鬼滅の刃」論争の論点は大きく3つ挙げられる。

(1)主人公・炭治郎の耳飾りのデザインが「旭日旗」を連想させること。

(2)作品は大正時代を背景に描かれているが、この時代はまさに日本が韓国を植民地支配していた時期と重なること。

(3)出演している声優や制作者側の一部の人が、過去に右翼的な発言をしていたこと。

 今回、韓国での公開にあたり、炭治郎の耳飾りのデザインは丸に線が2、3個入っただけのものに変更された。(過去のテレビ放映では耳飾りにモザイクが施されていた)

 一部、反日支持派のネットユーザーの中には、原作では依然として耳飾りのデザインに旭日旗が使われており、全ての作品での修正を要求する声もあった。

 今回の公開に関しては、同じファンでも、ソウルと地方とで差があったことは印象的だった。

 ファン達が集う「カフェ」と呼ばれる情報掲示板では、ソウルの場合は公開初日に合わせて劇場に足を運んだり既にチケット予約をしたりしているのだが、地方になると、「今この時局に行くのは躊躇われるがいつか必ず見る」というコメントが少なくなかった。

 とはいえ、地方のファンでも公開初日に見たい者たちはバスに揺られてシネコンを目指した。その光景はニュースでも報じられていた。

「NO JAPANはどうなった?」

 さらに都市部のファンからは、反日に関して否定的な反応が続いた。

「不買運動はからかわれて当然」「不買によって自国民と日本人、どちらがより多く犠牲になったのか」「国を相手に不買運動する国がどこにあるんだ」「反日は質の悪いメンタリティ」「意味も理由もなかった NO JAPAN」「反省しないというなら日本より中国の方がひどいのに、中国相手にはおとなしくしていた人たちが日本相手にデモをする」

 先に触れた「鬼滅の刃」の初日観客数が1位だったことはネットニュースで報じられたが、日本のファンからは、「(韓国政府が主導する)NO JAPANはどうなった?」「反日なんだから公開を中止したら良いのでは?」と揶揄する声があがったことも同時にニュースで流されていた。

 自分自身の都合に合わせ、反日か親日かを選ぶ態度の不実はかねて指摘されてきたが、それにしても鮮やかに反日不買運動が一刀両断されたのも事実だろう。

北条時子
1976年生まれのライター。韓国人の夫と共に渡韓し、ソウル在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年2月1日 掲載

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする