2021年2月27日
毎日新聞
弘前大(青森県弘前市)は、同大医学部付属病院とむつ総合病院(むつ市)を高速通信回線で結び、ロボットアームを使って遠隔操作で手術を行う実証実験を始めた。日本外科学会などが政府や通信事業社と共同で推進しているプロジェクトの一環で、地域医療の現場での実験は国内初。
同大によると、弘大病院が手術支援ロボットの指導施設であることや、県内ではむつ市で遠隔支援手術の実施が想定されることなどから両病院で実験が進められることになった。遠隔手術が実現すれば、医師不足に悩む地方でも高度な医療を受けられるようになり、医療の地域格差解消につながると期待が寄せられている。
実験は21日から始まり、22日には弘大病院で医師らが約150キロ離れたむつ病院のロボットアームを遠隔操作し、腸に見立てた人工臓器の縫合などを実施。むつ病院側ではロボットの作動状況を確認した。期間中に複数の通信回線を使って実験を行い、ロボットの動作や通信環境のデータを収集する。
この日、弘大病院で開かれた記者会見で、実験の主任研究者で同大大学院の袴田健一教授は「どこに住んでいても質の高い外科医療ができるようになり、地方の若手の育成にもつながる」と実験の意義を強調。むつ市の宮下宗一郎市長は、「下北医療圏は医師数が県内でも最低水準。遠隔手術が解決のきっかけになると期待している」と話した。
実験は3月1日まで実施。日本外科学会は、今回の結果を踏まえ、来年3月末までに遠隔ロボット支援手術のガイドラインを策定する。【平家勇大】