キンプリ平野紫耀、セクゾ中島健人、キスマイ北山宏光が”大炎上” 原因は「事務所のパワーダウン」と「下ネタファンサービスの歴史」

2021年1月1日

文春オンライン

《自分の応援するタレントが原案とか信じたくないくらいショックだった。女性をバカにしてる》

《絶句。ミニスカートをじろじろ見たり、胸を揉む演出にドン引き》

《北山くんのことは大好きだけど、このドラマは応援できない。あまりにもひどい》

 動画配信サービスdTVのオリジナルドラマ「快感インストール」の第一話が12月3日に無料先行配信されると、こうした阿鼻叫喚の声がネット上に飛び交った。

 これは、Kis-My-Ft2の北山宏光が3~4年前から練ってきた構想を原案としたドラマで、「女性の胸に触れると、その女性の快感を自分にインストールできる特殊能力」を持つ主人公・タカ(二階堂高嗣)の恋愛模様を描いた作品だ。情報が解禁されるや、Twitterでは「♯快感インストールの配信中止を求めます」といったハッシュタグが広まる事態になってしまった。

 ジャニーズといえば、2020年夏に放送された中島健人・平野紫耀W主演のドラマ「未満警察」(日本テレビ)で、2人が双眼鏡でバスローブ姿の女性をのぞき見する場面が「性犯罪」として問題視されて炎上したばかり。なぜ、ジャニーズのドラマが立て続けに“下ネタ”で炎上したのだろうか。

下ネタ満載でも傑作だった作品と「未満警察」の違い

 実は、ジャニーズの下ネタは今に始まったことではない。

 ただし、彼らの下ネタとの関わり方には2種類ある。周囲に与えられた役柄・セリフなどを仕事としてこなしているケースと、自ら発信しているケースだ。「未満警察」は前者で、「快感インストール」は後者だろう。そしてこの2作の“炎上の本質”はまったく別のところにある。

 まず、「未満警察」の炎上について考えてみよう。

 下ネタドラマといえば、まず錦戸亮主演の「ごめんね青春!」(TBS系・2014年)が思い浮かぶ。錦戸が授業中に「これ、誰の~?」といってブラジャーを振り回し、「湘南乃風か!」とツッコまれるシーンが印象的だ。

 また、佐藤勝利主演ドラマ「49」(日本テレビ系・2013年)では、父親が交通事故で亡くなり、息子の身体を49日間だけ借りて生きるというストーリーが描かれた。「父親の魂が息子に入っている」ため、佐藤勝利が母親役(つまり、魂にとっては奥さん)の紺野まひるにキスしようとしたり、胸元を見たり、尻を見て欲情したりとかなり衝撃的だった。

 そして、ジャニーズが出演する下ネタドラマの金字塔といえば、二宮和也主演の「Stand Up!!」(TBS系・2003年)だろう。「童貞卒業」を目標とする高校生男子を描いたドラマで、「DB4=童貞ボーイズ4人組」を演じていたのは、二宮のほか、山下智久、成宮寛貴、小栗旬という奇跡のような豪華キャストだ。

 この3作は全編に亘って下ネタ満載の内容だったが、いま観ても不快感がないどころかグッとくる傑作だ。これらの作品と「未満警察」との違いはどこにあるのか。

一流クリエイターの「ジャニーズ離れ」

 時代の変化は当然あるだろう。ジェンダー観は日進月歩でアップデートされているし、SNSの隆盛も影響しているだろう。しかし大きな原因となっているのは、「脚本にも相当口出しする」といった話をドラマ関係者からよく聞くジャニーズ事務所の体質が原因になっているのではないかと思えてならない。

 これまでジャニーズが出演するドラマには第一線のクリエイターが関わってきた。「ごめんね青春!」は宮藤官九郎脚本、「49」は野島伸司脚本、「Stand Up!!」は堤幸彦演出だ。

 彼らは「下ネタ」のような、一歩間違えると顰蹙を買うような危険な題材を絶妙なバランス感覚で扱っている。

 しかしいま、こうした作り手がジャニーズドラマに関わることは少ない。

 かつてはジャニーズ事務所との骨の折れるやりとりをしても、十分おつりがくるほどに「ジャニーズ主演のドラマ」は数字が見込めた。特に90年代ドラマでは、木村拓哉、堂本剛、長瀬智也など、作り手が創作意欲を掻き立てられ、主演に起用したがる役者がいたが、今は事務所との様々な折衝を飲み込んでも、なお採算が合うような結果が出せるジャニーズは数少ない。

 したがって、すでにクリエイターと信頼関係を築いている木村拓哉や長瀬智也らを除くと、第一線で活躍している旬の脚本家たちがジャニーズのドラマに携わるケースは確実に少なくなっている。

「未満警察」の炎上には、そうした背景が透けて見えてしまうのだ。

下半身を風呂桶で隠して踊る「おけダンス」

 その一方で「快感インストール」の炎上の根はまた別のところにある。原案を考えたという北山個人のジェンダーリテラシーが未熟だったというのもあるだろうが、そんな単純な話ではない。それよりも根深い原因となっているのが、ジャニーズが脈々と受け継いできた「下ネタサービス」の歴史だ。

 そもそもジャニーズには、1969年の初演から脈々と受け継がれてきたミュージカル「少年たち」シリーズにおいて、ほぼ全裸で下半身を風呂桶で隠して踊る「おけダンス」を見どころにするなど、積極的に下ネタを取り入れてきた。

 ジャニーズのコンサートではデビュー組はもちろんとして、時折、まだ10代のあどけなさが残るJr.の子などが腰振りをし、ファンが盛り上がるケースが多々ある。ドームクラスでコンサートを行うグループの人気メンバーなどは、腰振りの股間がスクリーンに大写しにされ、それに対して黄色い歓声が起こることもある。子持ちの自分などは「これを見たら親御さんはどう思うのだろうか」と不安になってしまうほどにあからさまな演出だ。

「小学生のうんこ系」はOK、「大人セクシャル系」はNG

 ただ、男性アイドルの代名詞でもあるジャニーズは、“下ネタとは距離をとって上手に付き合う”というのがかつてのセオリーだった。特に“紳士的な王子様アイドル”である少年隊の薫陶を受けた世代はその傾向が特に顕著だ。

 例えば、KinKi Kidsの場合、小学生並みの「うんこ」的な下ネタはOKだ。むしろコンサート中にハエが飛んできただけで2時間以上ネタにし続けるくらいうんこ話は鉄板だ。しかし「堂本兄弟」(フジテレビ系)などに中年男性のゲストが出演し下ネタを振ると、意味がわからずキョトンとする剛とそれに対してツッコむ光一、というシーンが時折見られる。

 SMAPも下ネタを乱用することは決してなかった。忘れられないのは、2014年12月23日に生放送された「さんま&SMAP!美女と野獣のクリスマスSP」(日本テレビ系)の一場面。

「さんまとSMAPの黒いうわさ」というテーマでビートたけしが登場し、香取慎吾のうわさとして「アレがデカい」と発言したのだ。すると、香取、草磲剛、稲垣吾郎から瞬時に笑顔が消えた。稲垣はスタイリッシュだし、草磲はピュアで、香取は幼い頃からジャニーズしか知らずに育った純粋培養だけに、それぞれ下ネタNGなのだろうか……と、私も一ファンとして冷や冷やしていた。

 そんな凍りついた空気をいち早く読んだのか、木村がとっさに立ち上がり、体ごと香取のほうを向いて、大袈裟に爆笑し始めたのだ。続いて中居も立ち上がって爆笑。2人は「ここ、笑うところ」という合図を出しているように見えた。

 しかしその後、たけしが「昔、風呂で、ビートきよしのアレがオレの顔に当たって」という汚い下ネタを披露をすると、凍りついていた面々が一斉に大爆笑。草磲にいたっては、声を出して笑っていたほどだ。これはおそらくKinKi Kidsと同じで、同じ下ネタでも「小学生のうんこ系」はOKで、「大人セクシャル系」はNGなのだろう。

 しかし年代が下がるにつれ、下ネタに寛容なグループが増えてきた印象がある。

 わちゃわちゃしていて可愛いイメージのある嵐も下ネタ発言をすることは少なくない。かつて二宮がバラエティ番組に出演した際、女性ゲストに「女の人は急におっぱいが大きくなるの?」と聞いたことや、「どんなキスが好き?」という話題でゲストに「お前、ベロンチョ様? 俺はベロンチョ様」といったことなどが話題になったことがある。

 特に下ネタが多いのが関ジャニ∞だ。かつてはコンサートのMCで「自分がもし女の子だったら(胸は)何カップがいいか」などと語ったり、「お前ら感じてるか~? もっと濡れろ~」とコールし、腋毛をファンに見せることもあった。握手会で胸の大きいファンに「おおー、ナイスおっぱい!」と声をかけたことさえあるのだ。

意外に下ネタが多いKing&Prince

 若い世代で意外に下ネタが多いのがKing & Princeだ。彼らのコンサートMCには「男子高校生っぽくて好き」という声と、「やりすぎ」「うんざり」という声に分かれる。

 特に話題になったのは、2019年8月4日の大阪城公演昼の部。メンバー5人が「ギリギリ下ネタに聞こえるフレーズ」でコメントする流れを事前に決めていたそうで、岸優太が「ちくわは下ネタ」と語り、「ケータリングで俺のちくわ食べたよね」(平野)、「紫耀のちくわ美味しかった? どのサイズ?」(永瀬)といったやりとりが長々と続いたことがファンの間で賛否両論となっていた。

 ジャニーズ内で下ネタが当たり前になってきたことで、北山も「快感インストール」がファンに受け入れられると勘違いしてしまったのか。実際にコンサートなどでは下ネタがファンサービスとして受け入れられてた部分もあったのだろう。

 一方で世間ではジェンダーリテラシーは急速に高度化されていっている。“ジャニーズ村”に浸り、世の中の動きと歩みを合わせられなかったために、今回の炎上がおきてしまったのだ。

 しかしながら若い世代にも下ネタとの距離を上手くとっているジャニーズもいる。グループ全体で下ネタの扱いを上手くコントロールしているのがHey! Say! JUMPだろう。12月20日「Hey! Say! JUMPのオールナイトニッポンPremium」でリスナーからの下ネタメールに答えたことが話題になっている。

下ネタとは距離を置くジェシー、マリウス

 リスナーからの質問は「僕は、女の人が履いているスキニーパンツになりたいです。太ももを締め付けたいです」という内容で、共感できるか聞かれた伊野尾慧が「僕は共感できないなぁ」。さらに何になりたいか尋ねられて「パンティーかな」と言った途端、全員が一斉に「ピーーー!」と叫んだり、グループ最年少で可愛いキャラの知念侑李に「耳ふさいで!」と注意したりするような場面があった。

“下ネタOK”のグループにありながら、下ネタとは一線を引くメンバーもいる。SixTONESのジェシーだ。

 SixTONESはコンサートのMCで下ネタトークが多いと言われている。実際、そういう空気があったからか、今年1月26日福岡昼公演では、フォロワーが多い人について尋ねたジェシーの発言を受け、松村北斗が「俺たちみたいな仕事してなくても、フォロワー多い人いるでしょ? 何してんの? おっぱいだしてんの?」と発言。炎上してしまうこともあった。しかしジェシーはそんな下ネタトークには乗らない。

 2019年、メンバーから「楽屋では(下ネタを)言うのに、MCでは下ネタにのってこない」と指摘された際に、ジェシーは「だって、アイドルだもん!」と語っている。実はジェシーは、2016年『Myojo』の「Jr.が選んだJr.大賞」で「いちばんスケベ」部門1位となっているのだが、そんな姿をファンに見せることはないのだ。

 特に厳格なのは、現在休業中で“風紀委員”とも呼ばれるSexy Zone・マリウス葉だ。事件が起きたのは20年に行われた京都でのファンミーティング。ファンの女性がメンバーに対して「今日、何色のパンツ履いてますか」と聞いたところ、それぞれが自分のパンツの色を確認し始め、菊池風磨に至っては松島聡に「やめよ? やめよ?」と制止されるなかベルトを外し始めた。

 しかしマリウスは、ファンに対して逆に「あなたは何色ですか」と聞いたのだ。男性であるマリウスが女性ファンに同様の質問をなげかけることで、この発言がいかにセクハラ的かを突き付けたのだ。このやりとりを当時、「マリウスは冗談がわかっていない」と嘲笑していた人もいたが、最近ではこれがまっとうな反応だと捉える人が増えている。

 マリウス葉のような感覚を支持する声は、ジャニーズファンの間でも増えてきている。ジャニーズ事務所は、タレントがジェンダー観を勉強する機会を設けても良いのではないだろうか。

(田幸 和歌子/Webオリジナル(特集班))