それでもファンが山下智久を愛し続ける理由 私がいただいた色紙の「異質な言葉」

2020年9月5日

文春オンライン

 2020年9月1日、山下智久さんがジャニーズ事務所に入所して24周年を迎えました。11歳だった少年の日から四半世紀近くもアイドルという茨の道を往き、なおも歩き続けてくれている姿には、ジャニヲタとしてただただ感謝の念しかありません。9月1日当日のTwitterには「#山下智久入所24周年記念0901」というハッシュタグが見事トレンド入り。タイムラインはファンによる山下さんへの愛を告げるメッセージであふれました。

 しかし、山下さんは8月7日に報じられた「女子高生モデルとの飲酒および高級ホテルへの“お持ち帰り”」によって、8月17日から一定期間の活動自粛となっています。だからこそ、この喜ばしい瞬間に当の山下さんがいないことは誠に残念極まりないのです。

山ピーを愛するが故の「スキャンダルの原因究明」

 たとえば、加藤ローサさんや西山茉希さんなど、数々の女性と浮名を流した元KAT-TUNの赤西仁さんなら同じ報道でもジャニヲタの受け止めは違ったと思います。赤西さんはライブで「オレ、週刊誌で(女性スキャンダルの)連載してるんじゃないか? って言われてたよ」と自らネタにしたこともあるように、“赤裸々な姿を見せるのも芸のうち”という方とお見受けします。ファンも「なんだ、いつもの彼じゃん」くらいで、一報に飛び起きても二度寝できる。その奔放な生き様の開示は、むしろファンを微笑ませてしまうこともあります。

 しかし山下さんの場合は、ストイックで孤高の努力家というイメージとスキャンダルのギャップが強く、ファンの心中には「信じたくない!」という気持ちがこみ上げました。

 今回の一件で、様々な意見が飛び交っています。山下さんを責める声も、女性を責める声もありましょう。それもわかります。しかし、きれい事でなく〝自分事〟に引き寄せて考えてみると、石を投げる手もふと止まるような気がします。

 もしあなたに好きでたまらない〝推し〟や思いを寄せる誰かがいたら。「一度でいい。ふたりきりになれたら、魂を売ってもいい!」と思える人から、「こんなときに不謹慎かもしれないけど、よかったら一緒にいてもらえない?」と望まれたら、私はその手を払えるか? 「幻滅しました!」と言えるか? 正直言って、私は甚だ自信がありません。人を責めることなどとてもできない。

 しかしそこで「信じない! 彼がそんなことをするわけない!」と思考停止してしまっては、いつまでたっても心にはモヤモヤが残り、いつか山下さんが芸能界復帰した時に心から応援できなくなりそうです。

 そこで山下さんのファンである私は原因究明に乗り出しました。なぜ彼はスキャンダルを起こしてしまったのか。その手痛いミステイクの原因を探ることでモヤモヤを肚落ちさせ、山下さんと共に浮上する道筋を探したのです。もちろん色々な意見が交錯していますが、本件を見つめるうち、「ミステイクの原因」にたどり着きました。

高いプロ意識と相反する自己管理力の低さ

 ジャニーズ事務所に入所してから、山下さんが24年の歳月で築き上げてきたのは、孤高な努力家というイメージです。筋骨隆々としたボディメイクも、ネイティブさえ舌を巻く英語力も、ひたすら地道な努力の賜物。己を省み、さらなる高みを目指す姿をファンは何度も見せてもらってきました。だからこそ、まず「未成年女性と酒席を共にした」という状況に、プロらしからぬ自己管理力の低さが見え、衝撃を受けました。

 特にファンの心を揺さぶったのは、「文春オンライン」の第一報のあとに「女性セブン」(2020年9月3日号)が報じた「女の子たちを呼んだのはバーの店長」「店長が“男性だけだと寂しいだろう”と気を利かせたつもりで、女性たちに声をかけた」という関係者証言です。

 女性関係ではありませんが、たとえばKinKi Kidsの堂本光一さんは、舞台公演中は決して生ものを口にしません。取材で訪れた鮨の名店で鮮魚を出されても、「いただきたいのですが、今は公演中なので」とおっしゃいます。それはひとえに高いプロ意識と自己管理の精神によるもの。この対応に、「ウチの店の魚が悪いというのか!」などと機嫌を損ねる店主はいませんし、むしろその志の高さに感嘆されるのではないでしょうか。

 山下さんらと他の方々の関係性はわかりませんが、「せっかくの厚意を無にしては」「失礼になっては」との気兼ねがあったとしても、スマートに辞していただきたいところでありました。「ありがとうございます! ぜひ素敵な女性たちに会いたいですが、今はコロナも気になりますし、またいつかぜひ!」とでも言って流してくれていたら……。本当に、悔やまれます。

写真という動かぬ証拠を撮られたこと

 第2の失敗は写真という証拠に残る形で記録されてしまったこと。もし写真などの証拠がなく、証言のみの報道だったらファンも「本当は何もなかったのでは……?」という一縷の希望を持つことができます。しかし、実際は30枚近くもホテルに出入りする様子が撮影されていました。

 ただ、「証拠の写真がある」と言われても、私は額面通りに受け取る気にはなりませんでした。もしかしたら山下さんは“ハメられた”のではないか。その可能性について考えずにはいられませんでした。

 しかし記事に掲載されている写真や関係者証言だけでなく、報道に対するジャニーズ事務所の“活動自粛処分”という対応を見ても、ホテルの一室で山下さんと未成年の女性が一緒に過ごしたことは揺るぎない事実のようです。それでも信じたくない気持ちはありますが……。  

 また、信じがたい内容であったのと同時に、「未成年がトラブルに巻き込まれる可能性があることなら、記者さんはなんで声をかけずシャッターを切ったのだろう?」とも思いました。

 この疑問については、実は以前に週刊誌の記者に質問したことがあります。その方は「私たちは、ただ目の前で起こったことを撮るだけで、そこに干渉するスタンスではないのです」とおっしゃっていました。

亀梨と山下、危機管理意識の違い

 記者によって違うこともあると思いますが、「彼らは芸能界というサバンナの観察人で、“原則としてありのまま捕らえて報じる”立ち位置なのだな」と解釈しました。山下さんは彼らから観察される対象です。この日、山下さんは常に冷徹な観察者たる彼らの“目”を忘れたのでしょうか。そうであれば、明らかに痛恨のミスと言えましょう。

 記事には亀梨和也さんは山下さんと飲んだあと、自宅に帰ったと書かれていました。亀梨さんも飲酒をしている未成年女性のいる場に居合わせてしまったわけですが、危機管理意識は比較的高いように感じました。山下さんにはもう少し、身辺に気を付けてほしかったなと思ってしまいます。

 ただひとつ、「2人は部屋でトランプをしていただけ」というような可能性を打ち砕く証拠はまだありません。ファンとしては、そこに希望をつなぎたいところです。今後、この可能性を否定する物証がこれ以上でないよう願ってやみません。

秘密事が行える“安心・安全の密室”はなくなりつつある

 そして最大のミスは、やはりお相手とされる女性への意識です。

 文春オンラインで記事が公開されたあと、SNSには山下さんへたくさんの批判コメントが投稿されました。その多くの投稿の中で、相手女性の「17歳」という年齢について言及されていました。

 その昔、芸能人と異性の秘密事は安心・安全の“密室”で行われていました。ラグジュアリーなホテルやらVIPルームやらで、群がる女性たちを値踏みし、気ままに楽しみ、飽きたら袖にしても供給源はエンドレス。そのやりとりが漏れることはほとんどなかった。たとえお相手が関係を持ってはいけない人だったとしても、今よりも問題になることは少なかったのではないでしょうか。

 しかし今YouTubeやSNSなどで世の中から“密室”がなくなりつつあります。いまは“密室”内での情報であっても簡単に拡散されてしまいます。

 そして、それと同時に密室から外の情報に簡単にアクセスすることができるのです。出会った方が、関係を持っていい相手なのか否かを確認する術も現在はある。今回、お相手の女性は自ら年齢を偽っていたと報じられていますが、少し検索すれば彼女の経歴はすぐにヒットします。ジャニーズ事務所は店側が女性を紹介する際に成人女性だと言ったと説明していますが、この状況では世間が納得しないのも無理からぬことです。

 芸能人が “安心・安全の密室での狩り”という幻想に囚われているのだとしたら、トラブルが発生することはやむなし。とっととマインドを入れ替え、現代社会に適応する賢しさを身につけておいてくれたら……と思わずにいられませんでした。

それでもファンが山下智久を愛し続ける理由

 今回、山下さんにはこういったミステイクがありました。それは事実ですしファンもよく分かっています。

 しかしこのスキャンダルによってファンが山下さんに失望し、「担降り(ファンをやめること)」する人が続出したかといえば、そうではありませんでした。SNSには「山Pと一夜を過ごせるなんて羨ましい」といった書き込みすらありましたし、9月3日、山下さんが演じた「コード・ブルー」の医師・藍沢耕作の誕生日にはTwitterで「#藍沢先生」のハッシュタグがトレンド入りし、祝福の言葉が並びました。

「なぜそこまで愛せるのか?」

 それは、今まで私たち〝sweetie〟が山下さんからもらった幸せが多すぎておつりがくるほどだから。〝sweetie〟(スウィーティ)とは、山下さんが名付けてくれたファンの愛称で、大切な恋人に呼びかける言葉です。山下さんはいままで〝sweetie〟をとても大事にしてきてくれました。

 2016年に行われた全国ツアー「TOMOHISA YAMASHITA THE BEST LIVE TOUR 2016 FUTURE FANTASY」の最中に山下さんはこんなことを切り出しました。

「昔は、キラキラした王子様っぽい衣装がいやで、反抗する気持ちもあった。でも、キラキラの衣装もステージも、いろんな方のおかげで叶うもの。今は感謝しかない。もう、こういうセットもありがとう! ありがとう!」

 そう言うなり、山下さんはステージセットをなで、ファンの心をぬくもらせたのです。

無言の山下から伝わるメッセージ

 山下さんは決して口数が多いタイプではありません。いまも報道に対して公には発言していません。しかしそのサイレンスは、時としてファンに気持ちを整理したり、考えをまとめたりする余裕をくれもします。山下さんはこれまでスキャンダルがあっても、仕事への姿勢や成果で気持ちを示してきました。投げやりな態度を取ったことは一度もありません。

 今回、山下さんはファンクラブの会員向けページで、ファンに心配をかけたことへの謝罪と、「笑顔を曇らせてしまって本当にごめんなさい。待っていてください」とのメッセージを伝えてくれました。私たちが感じたのは「きちんと気持ちを伝えてくれてよかった。私たちは大事にされている」という満足感のみ。この実感があるからこそ、彼の過ちをまっすぐに見つめ、その上で赦せもするし、再生を信じることもできるのです。 

 この写真は、2005年のコンサートで山下さんが投げた色紙です。運良く私が手にしたそれには、“「愚公移山」の精神でガンバレ!!”なるメッセージが刻まれていました。

 アイドルが選ぶ文言としては、ちょっと異質です。山下さんは当時大学生でしたので、中国語の授業で習ったものでしょうか。“愚公移山”とは、「何事も根気よく続ければ、最後には成功すること」をたとえた言葉です。この言葉を地で行くように、こつこつと汚名を雪ぎ、さらに成長した姿を見せてくれることを、私たちファンは信じています。

(みきーる/Webオリジナル(特集班))