2020年7月7日
日刊SPA!
新型コロナウイルスの感染対策でさまざまな変化を遂げた生活様式。しかし、たとえ感染対策のつもりでも、間違った解釈のまま実践していると、命を落とす危険性も……。識者たちの声をもとに、我々の日常習慣にはびこるリスクを洗い出してみた!
◆コロナ太りの深刻化の裏に潜む誤嚥性肺炎や食中毒の危機
「コロナ自粛中に約6割の人が体重増加している」との専門家による統計データがあるように食生活の乱れでコロナ太りを体感している人は多いはず。「特にジャンクフード率が高くなっている人は危ないです」と語るのは、ダイエット外来ドクターの工藤孝文氏だ。
「一番の悪影響は、“ながら食い”になること。体が食べたことを認識しないので、臓器も働かず太りやすく、高脂肪食は依存性も高い。一日座っている肥満者と非肥満者のNEAT(非運動性熱産生)を比べると、消費カロリーが350キロカロリーも違う。肥満は将来的にサルコペニア(筋力量の減少)で寝たきりになったり、誤嚥性肺炎で亡くなる要因にもなります」
またコロナ太りの原因は食事だけでなく「ホルモンバランスの乱れも大きく関係している」という。
「人間は不安を感じるとアドレナリンやコルチゾールが出て、精神面にも被害が及んでいく。そのストレスを解消するために快楽ホルモンのセロトニンやドーパミンを増やすことで、高脂肪食やシュガーハイに陥るという悪循環。すると動脈硬化だけでなく、コロナうつなどの精神疾患のリスクもある」
そうならないために、新陳代謝や免疫力を高める食生活の改善が必要だ。三大ポイントは①腸内環境を整える②低体温を防ぐ③自律神経を安定させることだという。
「具体的に、70~80℃のお湯でお茶を入れると、抗ウイルス作用のあるエピガロカテキンガレード(EGCG)が多く含まれる。また、朝に牛乳を飲むのも効果的。セロトニンを増やすと、16時間後に睡眠ホルモンのメラトニンに変わるので、体内時計も整って、睡眠の質を上げることができます」
◆人気メニューの食材が食中毒の原因にも
コロナ禍で、飲食店のテイクアウトやデリバリーも増えている。
「これから夏場にかけて、隠れ食中毒のリスクが今以上に高くなっていく」と言うのは内科医の岡宮裕氏だ。
「テイクアウトやデリバリーをやっていなかった店は、感染予防が不完全なところも多いです。本来は完全防護で作るのが基本ですが、レストランだとエプロンやマスク程度。温かいものと冷たいものを同じ容器に入れて蓋をすると、温度管理が難しくなって細菌も繁殖しやすくなってしまう。数時間放置されたお弁当は注意が必要です」
また、食中毒を引き起こしやすいメニューや食材もある。
「汁気が多いものは雑菌が繁殖しやすいです。危ないのが生ものや果物、野菜。そして意外に盲点なのが、半熟卵がトッピングされた料理です。サルモネラ菌や大腸菌の発生で急性胃腸炎などを引き起こす可能性もある。生肉のジビエなどは中まで火が通っていないとE型肝炎のリスクも。温度差のある料理が小分けされていない場合も避けたほうが賢明ですね」
在宅時間が増えたことで、自炊に切り替わった人もいるだろう。店頭でも巣ごもりの影響でホットケーキミックスの品切れが話題になった。しかし、「粉ものは保存方法を間違うと、思わぬ死のリスクを招きます」と岡宮氏は続ける。
「特にホットケーキミックスは砂糖やブドウ糖などの糖分を多く含んでいるため、小麦粉に比べて細菌感染のリスクも高い。常温で放置するとダニが繁殖して、アナフィラキシーショックの危険もあります」
呼吸器内科医の大谷義夫氏は「流通量で考えれば、お好み焼き粉も注意すべきです」と警笛を鳴らす。
「理想は小分けにされたものを買って、一度の調理で使い切ることです。余らせてしまった場合は、ダニの繁殖を抑えるために必ず冷蔵庫で保存するようにしましょう」
◆飲酒量の増加も要注意
また震災や感染症などで世の中が混沌とすると、必ず問題になるのが飲酒量の増加だ。「不安感やツラい現実から簡単に逃避できるのがアルコールなんです」と、精神科医の夏目誠氏が解説する。
「コロナ禍で流行りだしたオンライン飲みも終わりがわからずに長時間の飲酒になってしまいやすい。お酒の飲みすぎはアルコール性肝炎や肝硬変など生命に危険が及ぶケースが多い。アルコールは適量(ビール大瓶2本、または日本酒2合が目安)にして、週2日は休肝日をつくるのが理想ですね」
コロナの影響で大きく変わった食生活。一つでも該当するなら、手遅れになる前に今日の食事から見直すべきだろう。
<対処法>
・高脂肪食を減らして、ながら食いをやめる
・「生食」「半熟卵」のデリバリーに注意
・使いかけの粉ものは冷蔵庫でしっかり保存
【ダイエット外来ドクター・工藤孝文氏】
専門は生活習慣病やダイエット、漢方治療。オンライン診療が人気。著書に『1日1 杯飲むだけダイエットやせる出汁』(アスコム)
【内科医・岡宮裕氏】
代官山パークサイドクリニック院長。体に負担の少ない漢方薬を併用した治療を行っている。また、スポーツドクターとしても活躍
【呼吸器内科医・大谷義夫氏】
池袋大谷クリニック院長。呼吸器の名医としてメディアに登場。近著に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』(日経BP)
【精神科医・夏目誠氏】
企業の産業医としてメンタルヘルスに取り組む。著書に『職場不適応のサインベテラン産業医が教える気づきと対応のコツ』(南山堂)
<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!7月7日発売号の特集「死に至るダメ習慣」より