A.B.C―Z橋本良亮、人生最大の挑戦「日本文学の旅」…見据えるのは三谷幸喜作品のNHK大河

2020年7月4日

スポーツ報知

 A.B.C―Zの橋本良亮(26)が出演する音楽朗読劇「日本文学の旅」が、9日に東京・よみうり大手町ホールで開幕する。コロナ禍で公演中止が相次ぐ中、ジャニーズで観客に生のパフォーマンスを届けるのは“デビュー組”で橋本が初めて。初共演となる俳優の新納(にいろ)慎也(45)と2人で挑む膨大かつ難解なセリフに「人生で一番難しい挑戦」と背筋を伸ばす。自身にとって新境地となる作品を経て、将来的なNHK大河ドラマへの思いも語った。(畑中 祐司)=紙面未収録インタビューを加えた完全版=

 待望の新作に心躍らせているのかと思いきや、橋本の反応は違った。

 「今、追い込まれています…。今までで一番、人生で一番難しいお仕事なんじゃないか。それぐらいの台本です」

 時空を超えた2人の文学旅の物語で、演じるのは「司書」。舞台となる“架空の図書館”には「古事記」「日本書紀」「源氏物語」から夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介といった現代文学まで。よりすぐりの名シーン、名セリフの朗読とオリジナル音楽を融合させた作品となるが、台本の中にある言葉は、橋本にとってなじみのないものばかりだ。

 「作品によって『言いにくかったら変えていいよ』って、あったりするけど、これは絶対に変えちゃダメ。読めない漢字もたくさんあって、自分で平仮名を振ったり。僕、覚えるの得意なんですよ。でも、本当に覚えられない」

 朗読劇は、2年前に「蜜蜂と遠雷」(18年)で経験した。

 「独特な感覚というか、独特な空気がある。沈黙じゃないけど。この静けさを俺が奪ってやるって気合は入りました。この空気を全部持っていってやる、食べてやる、って。そこは、ちゃんと自信は持って。とは言っても、始まる前までは不安にさせてください。やっぱり幕が開いてからでないと、不安はなくならないと思います」

 コロナ禍の影響はまだまだ続くが、徐々に日常が戻りつつある。公演ができること自体、エンタメ界にとっても明るい話題となる。

 「それこそ、他のタレントさんのスケジュール(公演予定)を確認してみたんですけど、デビュー組では僕が一番最初。誰かいないの? 俺、スタートじゃん!?っていうのはありましたけど、A.B.C―Zのメンバーとして代表してスタートダッシュをいい形で飾りたいです」

 舞台で対峙(たいじ)する新納とは初共演となる。20歳近く年も離れ、経験豊富な相手だ。

 「この前、ごあいさつさせていただいたんですが、すごく爽やか。爽やかすぎるぐらいですけど、そこは負けたくない。学ぶことも多いけど、超えるぐらいの気持ちで。『橋本良亮、すごい』じゃなく、自分を通して『ジャニーズ、すごい』と思ってもらえるように」

 音楽を取り巻く環境も、徐々に変化しつつある。ジャニーズでは3月末に4日間、YouTubeで無料のライブ配信、また6月16~21日に有料配信を行った。A.B.C―Zは、19日にKis―My―Ft2とともに登場した。

 「2組そろうと、ファンの方たちも僕たちも自然と“エビキス”と。それぐらい親密な2組。その2グループが重なって、ファンの方も喜んでくれたんじゃないかなって思いました」

 2組は、橋本が加入した08年に横浜アリーナで合同の初単独コンサートを行った。橋本は当時まだ15歳。有料配信は、同じ“横アリ”で当時を思わせる「Daybreaker」も披露した。

 「『ザ少年倶楽部』(NHK BSプレミアム)とか、ちょこちょこやったことはあるけど、“エビキス”といえば、この曲。一緒にやって15歳の頃に戻った気持ちになったというか。僕は一番年下。みんなと会った時のように子供に戻っちゃいました。ただ一人だけ、河合(郁人)くんだけが『いや、違う。俺は“REAL DX”だ』って。そこは、周りも含め、さすがジャニーズ大好きジャニーズっていうのを感じましたけど」

 グループ名は「Acrobat Boys Club」に由来する。今回の有料配信でも、それを体現するべくパフォーマンスを披露する…はずだった。

 「5人でバック転しようって。絶対ファンも見たいからって。でも、僕はあんまりアクロバットができないので、すごく嫌だった。本番が近づくに連れ、あと2日か…明日か…って、ずっとテンションが下がりっ放し。まぁでも、みんなのためだ!って覚悟を決めたんですけど」

 急転したのは、収録当日のこと。

 「本番始まるよって、ちょうどその前に河合さんが楽屋で『みんな、いいすか…ちょっとバック転できないっす』って。俺も、よっしゃ きた~!って。五関(晃一)くんは『いや、絶対やれ』。で、俺は『河合くん、もっといけ、もっといけ』って。で、最後は五関くんが折れて、3人がバック転して、僕と河合くんだけが側転。どこがアクロバットボーイズや、って(苦笑い)」

 その舞台裏を、さらに明かす。

 「河合くんは、1年以上してなかったみたいで、急に怖くなっちゃったらしくて。でも、これはめちゃくちゃ助かりました。それで本番めっちゃ笑顔でできましたから。橋本はやりたくない人、河合くんは年取って、です」

 グループで初主演する映画「オレたち応援屋!」(竹本聡志監督)も年内を予定する公開に向けて動き出した。6月18日に映画の公式SNSを開設。「応援してほしいこと」を募集し、5人それぞれがメッセージ動画で応える企画がスタート。橋本にとっても“SNSデビュー”となる。

 「先輩も後輩もSNSをやっている人がいて、自分的には羨ましい気持ちもあった。今回、映画の力も借りて、SNSができることはありがたかった。でも、僕としては他の4人が使いこなせるかは不安(笑い)。でも、こういう状況じゃなかったらできなかったことでもある。僕らはファンを喜ばせるのが仕事。この先は、もっとみんなに近づける機会があれば。僕らは、そういうスタンスなので」

 朗読劇にライブ配信に映画、SNSと一気に動き出した。特に朗読劇の稽古を重ね、日本文学に触れる中で新たな夢ができたという。

 「日本文学の歴史を勉強したことで、めちゃくちゃ時代劇に憧れるようになりました」

 昨年、ナインティナイン・岡村隆史と堤真一のダブル主演映画「決算!忠臣蔵」(中村義洋監督)で時代劇初挑戦したが、次に見据えるのはNHK大河ドラマだという。

 「2022年には大好きな三谷幸喜さんの作品(『鎌倉殿の13人』=脚本担当)に出たいです。そのためにも『日本文学―』を成功させないと」(紙面より)

 ◆紙面未収録インタビュー

 映画「―応援屋!」に込められたキーワードについて、5月末に身をもって体感した。コロナ対応に当たる医療従事者に感謝の意を示すため、航空自衛隊アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が東京上空に白いスモークのラインを描いた。

 「上空を飛んでいるのを見るだけで心が動かされた。本当に、そういう存在になりたいなと思ったし、僕たちが行動することで応援、発信して感動を届けたいと思いました。(配信ライブでは)側転でしたけど」

 6月22日から先行配信が始まったジャニーズ15組75人による「Twenty★Twenty」が歌う「smile」(8月12日発売)も同様だ。滝沢秀明副社長がプロデュースし、Mr.Childrenの櫻井和寿が作詞作曲した。

 「櫻井さん、本当にすごいなと思いました。初めて聴いたときは、まだ自粛期間中だったんですけど、聴いたときに、すごく前向きになれた。そういう力を感じる印象的な曲。ジャニーズ全体のグループがこの1曲に込めた愛が届いて欲しいです」

 コロナ禍で、世の中の生活は一変した。今後は「新しい生活様式」が求められる中で、橋本が新たに始めたのは「家庭菜園」だという。

 「小さいことですけど今、トマトを栽培しています。外出自粛の期間中は毎日朝昼晩、料理を作っていました。エスニック料理だったり、得体の知れないものだったり。面白いです。腕前はA.B.C―Zの中で一番だと思う。自粛前は塚ちゃん(塚田僚一)が、すごく料理にはまっていて、ブログに載せたりもしていた。自粛期間中も作っていたみたいだけど、最近のブログの投稿は筋肉ばっかり。なので今、腕前は僕の方が上だと思います」

 トマトを育てる中で、気付いたこともあった。その思いは橋本の胸の中に深く刻まれている。

 「自粛期間が明けてから全然、実が出てこない。何でだろうって、やっぱりトマトも命があるんだなって。仕事が動き出してから、実が大きくなくなりました。自粛中はずっとしゃべりかけたりしてたんですよ。だから、大きくなったのかな。そういう命も大切に。今はまだ大変な時期だけど、明るい未来は絶対にあると思います」

 ◆橋本 良亮(はしもと・りょうすけ)1993年7月15日、千葉県出身。26歳。2004年9月、ジャニーズ入所。08年にA.B.C―Zメンバーとなり、12年2月「Za ABC~5stars~」でジャニーズ初DVDでデビュー。同時に主演舞台シリーズ「ABC座」を旗揚げ。14年にグループでテレビ東京系連続ドラマ「魔法★男子チェリーズ」主演。16、18年に河合郁人と舞台「コインロッカー・ベイビーズ」ダブル主演。