脂肪を摂れ!これまでの糖質制限ダイエットへのアンチテーゼ

2020年6月24日

THE OWNER

コロナ禍において、自宅で料理をする人が増えているという。食べものは健康を構成する基本要素であり、健康は経営者にとっても大きな関心事だ。

今回は『アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事 高脂質・低糖質食で、みるみる腹が凹む』出版記念企画として、監訳者の金森重樹(かなもりしげき)氏に話を伺った。

金森氏自身、多くの企業オーナーであり、歯科医院を経営していたことから健康分野にも造詣が深い。ダイエットに関するTwitterアカウントのフォロワー数は12万人を超え、そこでダイエットonlineサロンを主催している。

「経営者のための健康的なダイエット」をメインテーマに全5回のインタビューを実施。

連載第3回目は、これまでの糖質制限の考えに異論を唱える本書の狙いについて伺った。(聞き手:山岸裕一、編集構成:上杉 桃子)※本インタビューは2020年4月に実施

金森 重樹
株式会社金森実業代表取締役。1970年生まれ。東大法学部卒業後、フリーター時代に1億円超の借金をつくる。不動産会社に就職後、29歳で行政書士として脱サラ。現在は不動産、建築、介護事業など年商100億円の企業グループオーナー、ビジネスプロデューサー。20代のころから恒常的に体重が90キロ近くある肥満体型だったが、高脂質・断糖食ダイエットを実践した結果、2カ月で58キロまで減量することに成功。現在はツイッターを中心に、高脂質・断糖食ダイエットの普及活動に取り組んでいる。

マーク・ハイマン(著者)
医学博士。9度にわたって『ニューヨーク・タイムズ』紙のナンバーワン・ベストセラー作家となり、専門分野で国際的に認められたリーダー、演説家、教育者、提唱者でもある。また、クリーブランド・クリニックのプリツカー財団機能性医学委員⾧、クリーブランド・クリニック機能性医学センター所⾧、ウルトラウェルネス・センターの創設者兼ディレクターであり、インスティテュート・フォー・ファンクショナル・メディスンの理事⾧、ハフィントンポストの医学編集者を務めている。

■食べ物を変えただけでは痩せない

―監訳された書籍の具体的な読みどころを伺いたいです。ポイントはどこにあるのでしょうか?

この書籍の内容は、今までの糖質制限に対して比較的アンチテーゼ(反対)の立場をとっていて、私の考えとも共通しています。要するに「血糖値上昇によるインスリン分泌は全体の23%しかない」んです。

糖質制限とは、食事全体の23%のインスリン分泌にフォーカスして痩せようという方法なんですね。実はインクレチン反応(インスリンの分泌を促す作用)や頭相(食物の視・嗅覚的刺激。情動などによる胃液の分泌亢進)と呼ばれる部分が、全体の残りの77%を占めるんです。

つまり、糖質制限をやっただけでは絶対に痩せない、または痩せ方が限定的。私のダイエットTwitterアカウントには12万人ものフォロワーがいますが、彼ら彼女らも糖質制限で痩せているわけではないんです。

本書も「糖質制限派」の書籍とは全く違いますし、はじめて紹介されている論文が多くあります。脂肪酸組成に関する論文も、このジャンルでは普遍的に使えそうなエビデンスレベルの高いものが入っています。

結論としては、食べ物を変えただけでは痩せない、または痩せ方が限定的です。人間の体はあるものを取り除いたり加えたりする方法だけで治せるものではなくて、あっちこっちが相互に関連しているんですね。

最近ではシステム生物学といって、遺伝子やタンパク質など複数の因子の各構成要素のネットワークをシステムとして考え、どれとどれがくっついているかと検証していく。薬学なら「Aという物質を足す、Bという物質を引くと効果があるか」で済む。一方、人間の体は多くの因子がそれぞれ関連しているため、単純に「糖質を抜けば痩せる」わけではないことが、最近わかり始めているんです。

私は1年半以上、ダイエット関連の取り組みを行っていますが、最初の頃は肥満の要因は「糖質が大きな原因か」と思っていました。FreeStyleリブレというグルコース測定器をつけて、血糖値反応、つまりインスリン分泌の23%にフォーカスして実験してみたんですけど、それだけで痩せていく人も居ましたが、上手くいかない人もいました。それで、他の要因に目を向けては、サプリや脂質栄養素について勉強しました。

多くの人がサプリを入れるようになり痩せて行きましたが、そこまでやっても痩せないという人がいて、3週目さらに他の要因を探って、インスリン制御について勉強しました。そのときに、結局は「糖質制限って全体の一部でしかない理論だな」と分かったんです。

まとめると、糖質制限の書籍とは全く違います。私が知っている限り、日本ではまだその類の書籍は出ていないし、そこが面白いところなんです。

■まずは炎症を治していくところから

私が監訳した本書の理論は、最速で痩せることにフォーカスしていると言ったほうがいいかもしれません。糖質制限があって、それよりスピードが上がるのはMEC食(メック=Meat[肉]・Egg[たまご]・Cheese[チーズ]を中心に摂取する食事法)があって、MEC食と私たちを比べたら、圧倒的に私たちのほうが結果の出るスピードが速いですからね。

スピードが速いだけではなくて、健康的に痩せられる。この点においても、これまでの類書とは違う。類書は正直ないんです。高脂質ってイメージ的なものですけど、「動物性脂肪は悪」という本しかなくて。

割とユニークだと思います。ひと言でいうと脂質は悪ではない。

1回、ご自分で実験してみたら効果に驚くでしょう。食事だけではなくて、サプリを摂り、炎症もケアしていきます。炎症がある場合、例えば歯周病があってもダメなんです。

炎症はインスリン抵抗性(インスリンが正常に働かなくなる状態)を起こすから、アトピーや痔、花粉症があってもダメなんです。それを根こそぎ治していったあと、炎症性がなくなれば、男性なら月10キロは落ちます。

炎症がある場合はそこから治っていきます。肌荒れがあれば、そこから治っていきます。肌で糖とタンパク質が結合することで、ホットケーキみたいに焦げることをメイラード反応と言います。ところが、そもそも糖がない状態だとメイラード反応は起きない。この書籍の通りにダイエットを行えば、肌荒れはしなくなるでしょう。

―なるほど!

1回実験されたらなるほどな、と思うことでしょう(笑)。

■植物毒の危険性

―監訳された書籍は、金森さんの思想とほとんど同じなのでしょうか?

脂肪酸の組成、つまり、どういう脂肪酸を摂ればいいのかについて、また、最初に高脂肪誘導を行うこの著者の考えは私と同じですが同じです。

ただし、章の最後のほうに、最初の21日間で高脂質誘導をかけていく減量プログラムがあり、そこに差異があります。端的にいうと「断糖と高脂質摂取」なんですけど、その移行期間が終わった後にパレオダイエット、すなわち旧石器時代食とビーガン(完全菜食主義)の間で、少し野菜を摂ることを許すというような意見。その点は私と若干異なります。

私は、野菜の危険性を考慮しています。この本にも出てきますけど、大豆とか反栄養素は栄養の吸収を阻害します。大豆などに含まれるフィチン酸はサプリを摂っても、吸収を阻害してしまう。それを一般的に、植物毒といいます。

なぜ植物毒があるかというと、植物は動物と違って、捕食者に食べられないよう自ら逃げることができないから、毒によって捕食者が弱る方法を作り出すしかないんです。だから、あらゆる植物がある意味で毒性を持っていると思っていただければいいでしょう。

また、ある植物が毒にも薬にもなるというのはある代謝の阻害物質が入っているからです。阻害物質が薬の有効成分を持つ場合もある。フィチン酸やレクチンなどの阻害物質が、毒性を持つ場合もあります。

基本的に野菜は植物毒の問題があって体に悪いです。それに輪をかけて、現代の野菜や果物は、品種改良によって糖度はどんどん上がっていってます。

蛇苺を食べられたことがありますか?渋く、全く甘くないんです。一方、現代の品種改良されたトマトはかなり甘い。

果糖の毒というものがあります。かつて果糖は血糖値を上げにくいから体にいいとされていましたけど、実は血糖値を上げるほうがまだ分かりやすい。

ブドウ糖は全身で代謝されて減りながら肝臓に向かっていきますが、果糖は全身で一切代謝されずに血糖値も上げにくいんです。結果、肝臓を痛めるんです。するとダイレクトに太る。

書籍にも書かれていますが、ほぼあらゆる慢性炎症は結局、食事や糖質過多が問題なんです。食事のところで著者と僕が共通するのは、かなり前から「サプリの摂取は絶対」といっている部分です。そもそも人は、野菜など本来は人間が食べるものじゃないものを食べている。

もうひとつの問題は、オメガバランス。人間が本来は食べるべきではない穀物牛を食べている。もともと、野生動物は草を食べて、生きていますからね。

―次回は、牛、つまり脂肪の話をさらに伺えればと思います!

※個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません。

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