節約、ダイエット…頑張る自分への「ご褒美」設定は有効? それとも逆効果?

2020年4月16日

オトナンサー

 仕事や勉強、ダイエット、節約…日常生活におけるさまざまな「やるべきこと」へのモチベーションを上げるために、自分への「ご褒美」を決めている人も多いと思います。

「今日は頑張ったから、好きなものを好きなだけ食べよう」「今月は目標達成できたから、○○を買おう」など、設定するご褒美は人それぞれですが、ネット上では「ご褒美を決めるとやる気が出る」といった声がある一方で、「本当に効果あるの?」「逆効果」「自分には向いていないかも」など、効果を実感できないという声も聞かれます。

 心理学の観点から、「ご褒美」は実際に有効といえるのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

基本的には効果あり、注意点も

Q.自分へのご褒美を決めて、やる気やモチベーションを上げる方法は、心理学的に効果があるといえますか。

小日向さん「基本的に効果はあると思います。『脳の報酬系』という言葉がありますが、これは簡単にいうと、人や動物に働く、快楽を感じると脳からドーパミンが分泌される脳内システムのことです。個々によって快楽と感じるものは異なりますが、脳の報酬系システムは誰にでも働きます。

従って、『何かの後に快楽がある』の『何か』をつらさや困難とし、その後に、『自分にとっての快楽』を設定しておけば、『また、あの快楽を味わいたい』という報酬系システムが働き、それが困難を乗り越えるモチベーションとなるのです」

Q.モチベーションを上げるためのご褒美は必要だと思われますか。それとも、不要でしょうか。

小日向さん「必要だと思います。アメリカの心理学者・経営学者のダグラス・マクレガー氏は、人間の動機付けに関わる理論として『X理論・Y理論』を提唱しました。

X理論は『人は元来、怠け者で仕事が嫌い。だから、強制されたり命令されたりしなければ仕事をしない』、Y理論は『人は目的ややりがいがあれば自発的に動く』という考え方です。どちらも人が併せ持つ感情ですが、生理的欲求と安全欲求が満たされている現代では、Y理論を上げていくことに注力する方が、充実した人生につながるといわれています。

そう考えると、どうしたら、より自発的に動けるかがポイントとなり、そのための重要なツールとしても、脳の報酬系を利用したご褒美は有効といえるのではないでしょうか」

Q.一方で、ご褒美の設定が逆効果になるケースもあり得るのでしょうか。

小日向さん「ご褒美自体が逆効果になることはありませんが、設定の仕方によってはマイナスとなることもあります。例えば、ご褒美までの過程が長過ぎたり、ハードルが高過ぎたりした場合は力尽きてしまい、途中で投げやりになってしまう可能性があります。

またその逆で、ご褒美までの過程が短過ぎたり簡単過ぎたりして、なおかつギャンブルや飲酒などといった依存性のあるものの場合、依存症になるといった危険があります」

Q.ご褒美を設定することで、モチベーションが上がりやすくなる人/上がりにくい人とは。

小日向さん「そもそも、自分が何に対して喜びやうれしさ、やりがいを感じ、何に対して怒りや不快感を覚えるのかという自己理解ができていなければ、何をご褒美としたらよいのかが分かりませんし、あるいは設定したとしても、身の丈に合っていないものになりがちです。

そうした意味で、自己理解が未熟な人はご褒美を設定してもモチベーションが上がりにくく、一方で、自己理解が進んでいる人はご褒美がモチベーションアップにつながりやすいといえるでしょう。

自己理解を深めるためには、物事や人について、それらと関わる前から、『面白そうだ』『つまらなさそうだ』『好きだ』『嫌いだ』などと決めつけるのではなく、まずは経験して経験値を上げること、そして、情報においても取捨選択し過ぎないという意識が大切です」

Q.日々の生活にご褒美を効果的に取り入れるためのポイントや、設定時の注意点を教えてください。

小日向さん「先述のように、ご褒美の設定の仕方によっては、自分にとってプラスになるはずが逆にマイナスになってしまうこともあります。ご褒美を取り入れる際は、それを何にするかとともに、『どのくらいのときに』『どの程度』とするのかを見極めましょう。

また例えば、お酒を飲む、たばこを吸う、お菓子を食べるなど、物質の摂取そのものをご褒美にしてしまうと、依存や肥満など体に負担がかかる可能性があり、それがストレスになることもあります。物質的快楽であっても、それが『感動する』『癒やされる』『和む』といった心の快楽に結び付くように、適度な摂取を心掛けることが大切です」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする