ジャニーズ風間俊介 番組共演の劇作家も驚くクレバーぶり

2020年2月28日

NEWSポストセブン

 元SMAPの中居正広が退所会見を開き独立を発表した。創業者ジャニー喜多川氏の訃報や看板グループ・嵐の解散宣言等々、ジャニーズ事務所はいま激動のときを迎えていると言っていい。そんななか、ひときわ異彩を放つ俳優がいる。風間俊介(36)だ。

 倉本聰が脚本を手がける帯ドラマ『やすらぎの刻~道』で13歳の少年役を見事にこなし、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』では徳川家康という大役を演じるほか、教養バラエティ番組『林修のニッポンドリル』や『ハートネットTV パラマニア』への出演、さらに情報番組『ZIP!』の月曜パーソナリティも務めるなど、近年の風間は快進撃と言える活躍を見せている。

 風間は中学2年生だった1997年にジャニーズ事務所に入社。ベテラングループ・少年隊の舞台でデビューを飾ると、当初はジャニーズJr.のユニット「B.I.G.」として山下智久や生田斗真らとともに踊ることもあった。しかし高校受験を機に芸能活動を一時休止し、半年後に復帰するとジャニーズ・タレントとしては異色の経歴を歩みはじめていく。

 風間俊介の名前が世間に知れ渡ったのはやはり、1999年に放送されたテレビドラマ『3年B組金八先生』第5シリーズへの兼末健次郎役での出演だろう。オモテの顔は非の打ちどころのない優等生でありながら、ウラでは恐怖によってクラスメイトを支配し、また複雑な家庭環境から母親を刺傷する事件を起こすという、難しい役どころを演じきった。

 この演技で第3回日刊スポーツドラマ・グランプリの新人賞を受賞すると、テレビドラマや舞台、さらにはアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の声優としても活躍しはじめる。2011年には俳優の瑛太が主演を務めるテレビドラマ『それでも、生きてゆく』に出演し、第70回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞した。

 こうした華々しい役者人生は、ジャニーズ事務所に所属する歌とダンスを中心とした男性アイドルに比べると異色だ。そもそも風間はいまだにCDデビューを果たしておらず、2018年に放送されたバラエティ番組『しゃべくり007』では、ジャニーズ事務所の所属タレントが一堂に会する年末恒例のイベント「ジャニーズカウントダウンライブ」にも呼ばれていないと語っていた。

 もちろん、演技派のジャニーズ・タレントといえば、風間ともユニットを組んでいた生田斗真の名前を挙げることもできるだろう。だが情報番組や教養番組で司会を務め、趣味は読書でオザケン(小沢健二)をこよなく愛するという風間の、いわゆる文化人のような趣きを考え合わせるならば、やはり異端である。

 そんな風間の知性派ぶりが前面に出ていたのは、2013年から約3年間にわたって断続的に放送されていたNHK Eテレの『ニッポン戦後サブカルチャー史』だろう。同番組で“受講生”として出演していた彼について、“講師”を務めていた劇作家で演出家の宮沢章夫氏は次のように語る。

「打てば響くという、ありふれた言葉で語るのは申し訳ないが、風間君とEテレの『ニッポン戦後サブカルチャー史』で一緒に仕事をしていると、そんなふうについ口をついて出る。講義形式で番組の進行をする僕の話にすぐ反応してくれるし、見事な相槌を打ち、ときどき僕も考えていなかったような『そういうフォーマットがあるんですよね』などと返してくれる。そのクレバーさにはいつも驚かされた」

 テレビの視聴者にとって、芸能人の内面は映像を通じて想像するしかないものの、たとえば『3年B組金八先生』で演じた兼末健次郎という人物のオモテの顔は、もしかしたら俳優・風間俊介と重なる部分があったのかもしれない。少なくとも、彼はどんなことにも好奇心を抱き、さらに「打てば響く」ような臨機応変さを持ち合わせていた。宮沢氏は続ける。

「まったくの視聴者として風間君がドラマに出ているのを見ると、役に合わせてクレバーに演じているのを感じ、それも俳優としてのすぐれた資質だろう。ただ、どこか破綻した風間君も見たい。ダメな人を演じる彼は、どんな人物に変身するだろうか」

 役どころの要点を的確に把握する「クレバーな演技」は、やはり“兼末健次郎”の非の打ちどころのない優秀さと重なる。それは深い闇を抱えた役柄であったとしても、「クレバーな破綻」として見事に演じきってしまう実力だと言い換えることもできる。しかしそう考えるとたしかに、ジャニーズの異端児による、いわば身体をだらしなく用いた、クレバーではない「破綻」そのものの演技も観てみたい気がする。

●取材・文/細田成嗣(HEW)