2021年9月6日
乗りものニュース
運転免許は持ち込み写真での更新が可能ですが、その写真の「基準をわかりやすくする」と警察庁が全国の警察へ通達しました。きっかけは「なぜこの写真がNGか」という市民の声。再撮影を求められた場合の負担を軽減する目的もあります。
受理できない場合は「理由を明確に説明する」
免許証更新時に持参する写真の基準がわかりやすくなります。
運転免許証は3~5年の期間で更新が義務付けられています。申請には写真を持参する必要があります。警察庁は、この持参写真で免許証に転載できるガイドラインを明確化しました。
2021年9月3日(金)、閣議後会見で棚橋泰文国家公安委員長は、「申請者の利便性向上を図るため、個人識別が容易な写真は受け付けるという基本的な考え方とする」と発言。そのうえで、警察庁から都道府県警察に対して「不適切な写真の例を見直すと共に、受理できない場合は理由を明確に説明する」通達を出したことを話しました。
申請写真には、たくさんの条件が付いています。縦3cm×横2.4cmという大きさに始まり、カラー、無帽、正面、写真全体の3分の1が顔であること、無背景、6か月以内の撮影、そのほか眼鏡のかけ方、カラーコンタクトNGなどです。
しかし、これらの条件を満たしたとしても、申請が受理されないことがありました。
警察庁の見直しは、内閣府規制改革推進室に寄せられた「更新のために持参した写真が、警察署で受理されずに撮り直しを求められたが、2枚の写真の差がわからなかった。撮影基準を明確化してほしい」という要望が寄せられたことがきっかけでした。その写真は撮影時に人の影が映り込んでいたためNG、とされたものでした。
警察庁運転免許課の通達では、次のような窓口対応を都道府県警察に求めています。
「写真上の容貌等は社会通念上、個人識別が容易にできるものでなければならないが、免許用写真を添付した申請者がその再撮影等を求められた場合の申請者の負担を踏まえると、申請者が添付した写真について、免許用写真として許容できるものであるにもかかわらず、これを免許用写真として受け付けないといったことがないようにしなければならない」
即日交付できる窓口の増設も
免許証の更新には、さまざまな窓口が対応します。持参不要で免許証掲載用の写真を窓口で撮影をする運転免許センターでは、こうした再撮が求められることはありませんが、撮影機材のない警察署の更新では持参写真を免許証に転載するため、担当者が必要以上に配慮することが、今回の要望につながったと考えられます。
再撮を求められた場合、申請者はかなり困ったことになるケースがあります。警察署によっては署内のカメラで撮影できる場合もありますが、それ以外は申請者が撮影できる場所を探さなければなりません。証明用写真が撮れる設備や写真店が近くにない場合は、出直さなければなりません。
そのため通達では、「窓口に申請者の写真を撮影する装置が整備されていない場合、または申請者が当該装置による撮影を希望しない場合は、窓口がある施設内又はその周辺において免許用写真の撮影が可能な証明写真機の設置場所等について、できるだけ多くの選択肢を示して情報提供すること」と、丁寧な対応を求めています。
運転免許センターには免許証印刷機もあるので即日交付が可能です。しかし、県によっては免許センターが1か所しかない地域もあり、免許更新の不便さを補うために警察署を窓口にした対応事例があります。しかし、こうした窓口では即日交付ができません。そのため通達では、「免許用写真の添付を要しない者の範囲を拡大するため、更新された運転免許証の即日交付が可能な窓口を拡大するよう努めること」とも明記されています。
ただ、これらは都道府県の予算で対応しなければならないため、それぞれの警察が予算案に盛り込む必要があります。即日交付窓口の拡大には時間がかかりそうです。
一方、免許証のデジタル化で2022年から都道府県の運転者管理システムを警察庁の共通基盤に移行させることになっていることから、デジタル化を推進する側面からも、即日交付を実現するための資機材(カメラ、免許証印刷装置等)の新規導入が働きかけられています。