会社員の平均年収436万円…30年、給料が上がらないという空しい事実

2021年7月25日

幻冬舎ゴールドオンライン

日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「会社員の年収の推移」に焦点を当てていきます。

給与が増えない日本…1990年の水準まで逆戻り

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、令和元年、2019年の会社員(給与所得者)の平均年収は436万円。前年比1.0%の減少となりました。減少を記録するのは、2012年に前年比99.8%を記録した以来のことでした。

そもそも日本では「失われた20年」とか「失われた30年」などといわれるように、長い間、経済は低迷。それに伴い、会社員の年収も上がることはありませんでした。

年収が上がらないことが普通となり、慣れてしまった世代にとって、「会社員の年収は上がるのが当たり前」という時代は、歴史の教科書に出てくるような感覚かもしれません。

戦後、1950年。会社員の平均年収は前年比108.1%の12万8000円。それから景気に波はあれど年収は右肩上がりで、1971年には100万円を突破。1975年には200万円、1981年には300万円、1989年には400万円を上回りました(関連記事:『戦後70年、会社員の年収の推移』)。

ずっと右肩上がりだった会社員の年収にブレーキがかかったのは1993年。バブル崩壊によって日本経済はガタガタに。この年、戦後初めて会社員の平均年収は前年比99.4%とマイナスを記録。その後、1997年まで前年比プラスを続けましが、1998年に再び前年比マイナスを記録すると、2007年、2010年を除き、前年割れを記録。2012年には408万円と、1989年の水準まで落ち込んでしまったわけです。

近年はアベノミクス効果などもあり、再び会社員の年収は前年を上回り続けましたが、今回のコロナ不況、そして世界でも経済回復が遅れている日本の実情を顧みると、再び減少トレンドがしばらく続く懸念が広がっています。

【日本の会社員の年収の推移】

1987年 371.8万円(102.5%)

1992年 455.0万円(101.9%)

1997年 467.3万円(101.4%)

2002年 447.8万円(98.6%)

2007年 437.2万円(100.5%)

2012年 408.0万円(99.8%)

2013年 413.6万円(101.4%)

2014年 415.0万円(100.3%)

2015年 420.4万円(101.3%)

2016年 4216万円(100.3%)

2017年 432.2万円(102.5%)

2018年 440.7万円(102.0%)

2019年 436.4万円(99.0%)

出所:国税庁『民間給与実態統計調査』

(かっこ)内は前年比

「給与が増えない」から「消費も増えない」の悪循環

「失われた20年」「失われた30年」というのは、言い過ぎではないことは、会社員の年収からも明らかですが、その間、あらゆるシーンで世界の国々と比べては、日本の没落が叫ばれてきました。

そこでひとつ、世界と日本の状況を知るデータを紹介しましょう。

「世界主要国の小売販売量の伸び率」に注目すると、2020年のトップは北欧のノルウェーで前年比8.28%増。全世界的に新型コロナウイルスの脅威にさらされたなか、前年比プラスを記録したのは、34ヵ国中、半数の17ヵ国。日本は28位で、前年比-3.28%。先進7ヵ国中、6番目、という結果でした。

【世界主要国「小売販売量伸び率」ベスト10】

1位 ノルウェー(8.28%)

2位 フィンランド(4.25%)

3位 ドイツ(4.23%)

4位 エストニア(3.51%)

5位 イスラエル(3.42%)

6位 ポーランド(3.20%)

7位 オランダ(2.92%)

8位 オーストラリア(2.75%)

9位 スウェーデン(2.59%)

10位 リトアニア(2.58%)

28位 日本(-3.28%)

出所:OECD

※(かっこ)内、国内小売販売額から物価変動分を除去した数量ベースでの対前年比

コロナ禍による対応はさまざまですが、そのなかでも日本は消費欲が冷え込んだ国だったといえそうです。

この小売販売量の伸び率の推移を見てみると、バブル景気でイケイケだった頃の1990年、日本は主要国中第4位で前年比5.12%記録。しかしバブルが弾けると、1992年には前年比-1.50%で主要国で17番目に転落します。1996年に主要国で21位になると、2009年まで20位を上回ることなく、下位常連国となりました。

2009年、2010年にはそれぞれ15位、13位と上昇しますが、日本は欧米諸国と比べてリーマンショックによる影響が少なかったことが影響しています。その後、再び日本は下位に低迷し、30位前後が定位置になっています。

小売販売量の伸び率から「給与が増えない」だから「物を買わない」の悪循環に陥っている日本の状況が見えてきました。「失われた30年」が40年、50年となっていくのか……日本は、正念場にいるといえるでしょう。

この先、給与が上がらないとすると、将来に備えて何ができるでしょうか。投資などで資産を増やしていく、転職や副業などで所得そのものを増やしていく……自分に合った方法で、行動を起こしていくしかなさそうです。