COCOAの不具合放置、厚労省「認識不足や業者任せ」

2021年4月17日

朝日新聞デジタル

 新型コロナウイルス感染者との接触を知らせるスマートフォンのアプリ「COCOA(ココア)」で起きた不具合について、厚生労働省による検証結果の報告書が16日、公表された。

 情報技術(IT)で感染を食い止める切り札と期待されたアプリが、4カ月以上機能していなかったお粗末なトラブル。報告書は、ITの知識を欠く厚労省が業者任せにするなど、責任をあいまいにしたまま開発を進めたことが背景にあるとしている。

 COCOAは厚労省が昨年6月に提供した。感染者から1メートル以内に15分以上いた場合に接触を知らせるアプリだが、昨年9月末のアップデートから、アンドロイド端末で陽性者と接触があっても通知が届かない不具合が発生。今年2月に修正されるまで放置されていた。

 厚労省は検討チームを作り、厚労省職員や委託業者ら33人にヒアリングした。

 報告書は、不具合の放置に至るまでに三つの「局面」があったとした。(1)9月のアップデート時に通知が実際に届くかどうか、動作確認のテストをせずに提供したこと、(2)10月に動作確認のテスト環境が整ったにもかかわらずテストをやらなかったこと、(3)11月にCOCOAのプログラムを公開していたサイト「GitHub(ギットハブ)」に不具合を指摘する書き込みがあったにもかかわらず、対応しなかったことの3点だ。

 9月のアップデートは、アプリから接触を知らせる通知が多すぎる不具合を修正するためのものだったが、報告書はこれについて通知を受けた人の検査を担う保健所の業務が圧迫されていたためにアプリの改修を急いだ、とした。厚労省の職員らがテストをしないで配布することのリスク(危険性)を十分認識していなかった、とも分析した。

 報告書には、ほかの人に責任を押しつけるかのような関係者の証言もみられる。厚労省のある管理職は聞き取り調査に対し、「テストはしていないが、ロジックが変わるだけだから大丈夫との報告を担当から受けた」と説明。同省のCOCOA担当者は「テストができていないことは漠然と理解していたが、どんなテストができていないか、詳細は認識していなかった」「通知件数が減ったのは意図した改修結果だと思った」などと語った。事業者側からは「テストができない状態でのリリース(配布)はリスクがあると伝えていた」(委託事業者)との証言があった。

 テスト環境が整った後もテストを実施しなかった点について、厚労省の担当者は「基本的なテストは委託業者の責任でやるべきだ」と考えていたと説明する。これに対し、事業者は「テストよりも(厚労省から対応を指示された)目の前の問題解消の方が優先度が高いと思った」(再委託事業者)と釈明している。報告書は「厚労省側の問題として、テストという重要課題に対する認識が低く、業者任せにしていた」とした。