諏訪湖の御神渡り、3季連続現れず…地元男性「すっかり冬が変わってしまった」

2021年2月4日

読売新聞オンライン

 諏訪湖に張った氷が割れてせり上がる「御神渡おみり」を認定する八剱やつるぎ神社(長野県諏訪市)の宮坂清宮司(70)は3日、今季は御神渡りが現れない「明けの海」と宣言した。

 宣言は3季連続で、記録が残る1443年(嘉吉3年)以降は74回目、平成以降だけで24回目となった。

 この日の諏訪市の最低気温は氷点下1・5度で、平年より5・1度高く、3月中旬並み。湖面は波が立っていた。

 宮坂宮司は「季節のうつろいは確実に来ている。春が近づいてきた」と述べ、明けの海を宣言。「寒の朝 にごりをあげて寄り来たる 波に砕けし氷見るとは」との自作の歌を詠み、「自然の力は本当に不思議で偉大だ」と語った。21日に「注進奉告祭」を行い、神前に結果を伝える。

 御神渡りは、湖面を覆った氷が膨張と収縮を繰り返し、亀裂が筋状にせり上がる自然現象。氷点下10度以下の日が3日以上続かないと現れないとされる。昨季は一度も全面結氷しなかったが、今季は1月13日、21日に全面結氷。3季ぶりの出現に期待も高まったが、27日には水温が3度を超え、出現は絶望的となっていた。

 観察総代の男性(63)(諏訪市)は「高校生の頃、岡谷市内の校舎から自転車で氷上を走って下校した」と振り返り、「すっかり冬が変わってしまった」と湖面を見つめた。

 筑波大学大学院で気候変動が地域文化に与える影響を研究する女性(49)は先月下旬、湖面を観察する様子を見学。「御神渡りの記録が温暖化を止めるための警鐘としてどのように発信できるかが大切だと思う」と話した。

 御神渡りが出現した最後の2018年には、自然の神秘を一目見ようと観光客が押し寄せた。新型コロナウイルスの影響で観光客が激減する中、観光関係者も期待していただけに、3季連続の宣言に肩を落とす。

 それでも湖畔のホテルは神社と協力し、湖面を観察する様子を見学するツアーを始めた。参加した山梨県北杜市の料理研究家の女性(50)は「観察場所を観光スポット化して得られる収益で、諏訪湖の水質浄化や環境美化に役立てられるような仕組みをつくりたい」と意気込んでいる。