『ジャニーズは努力が9割』を体現するSnow Man 「16、16、15、15、15、14、14、10、5」の秘密

2021年1月15日

デイリー新潮

デビュー曲から3作連続ミリオン?

 1月20日発売の新曲で、デビュー曲から3作連続ミリオンというジャニーズとしても初の記録に大手がかかっているSnow Man。2020年末にはメンバーのコロナ感染による紅白歌合戦の辞退というニュースも飛び込んできたが、10代から20代後半の9人でなる男性グループは、ジャニーズ史上最年長でのデビューというメンバーも含む。『ジャニーズは努力が9割』の著者・霜田明寛氏が、それを地で行く彼らの努力の跡を追いかける。

 いきなり自分の話で恐縮だが、筆者がSnow Manのデビューを知ったのは、2019年8月8日。拙著『ジャニーズは努力が9割』の発売記念イベントの最中だった。

 同日行われていたジャニーズJr.の19年ぶりとなる東京ドームでのコンサート内で、当時ジャニーズJr.内の人気ユニットだったSixTONESと、Snow Manの2組同時デビューが発表されたのである。

 Snow Manのデビューを知らせるLINEが鳴り響いていて、そのときに「Snow Manのお陰で堂々と『ジャニーズは努力が9割』と言える」と力強く感じたのを覚えている。

 書籍のもととなる「ジャニーズは努力が9割」というタイトルをつけた連載を始めた当初は「いやいや顔でしょ」「急にスターにしてもらえるとか、運が良かっただけでしょ」という声も散見された。

 しかし、このSnow Manというグループの成り立ちとデビューまでは、そんな反論を一気に覆す力を持っていると言える。

 ジャニーズ史上最年長でのデビューというメンバーも含むSnow Manの成り立ちを見ていきたい。

デビューしそうな空気が

 16、16、15、15、15、14、14、10、5。

 これは9人のメンバーの、ジャニーズ事務所に入ってからSnow ManとしてCDデビューをするまでにかかった年数である。

 もちろん、それぞれが入所してすぐにグループが組まれたわけではない。

 Snow Manの結成はデビューから遡ること8年前の2012年。

 メンバーの渡辺翔太は「Snow Manはデビューできないという声をたくさん聞いた」と先日の配信ライブで語っていたが、それも頷けるほど、当初は数あるジャニーズJr.のユニットのひとつという印象だった。

 多くのユニットが作られる中でもデビューできるのはひとり握りだ。

 2012年には映画「私立バカレア高校」に出演するが、この作品の主演は2020年の1月にSnow Manと同時デビューを果たすことになるSixTONESのメンバー6人。

 Snow Manはライバル高校の生徒という設定で、いわゆるヒール役だ。

 長年ジャニーズJr.を見ていると、そこには“空気”が存在することに気づく。

 次に波がきそうな空気。

 バックダンサーだった者がマイクを握ったり、単独ライブを行うようになったり、ドラマに出演するようになったり……。

 それは例えば2005年のドラマ「ごくせん2」後のKAT-TUNだったり、2017年の炭酸飲料MATCHの CMに出演し始め、ジャニーズJr.にも関わらず帝国劇場の座長を務めるようになった平野紫耀だったり、そろそろデビューしそうな空気とも言いかえられる。

 だがSnow Manには長らくその空気を感じられることがなかった。

 前述の映画でメインをはっていたSixTONESの6人ですらその波にはのれず、2015年頃からはのちにKing & Princeとしてデビューすることになる6人がその空気を持っていっていた。

 会社で言えばお世辞にも出世株とは言えない、いや窓際族に近いと言ってもいいかもしれない位置。

 しかも、その出世株の位置を持っていくのは同年代の仲間や後輩たちである。

“窓際族”への“急な人事異動”

 Snow Manメンバーの阿部亮平や深澤辰哉と同じ2004年のオーディションで入所した山田涼介は2007年にはHey!Say!JUMPとしてデビューしていたりと、既に彼らの旬は過ぎているかのような空気すら漂っていた。

 メンバーの渡辺翔太は「長かったジャニーズJr.時代、コンビニとかでIDパスを首からぶらさげて楽しそうにお昼を買っているビジネスマンを見て、ああいう世界もありなんだなと思いました」(*1)と、不安定なジュニア時代に、辞める意思がよぎったことも語っている。

 そんな“窓際族”たちに起きたのが“急な人事異動”である。

 といっても、受け入れる側だ。

 2019年、前年からYou Tubeチャンネルを開設し、注目が高まっていた6人に、3人のメンバーが加入することになった。

 外から見ればジャニーズJr.内の編成が変わったくらいの出来事に見えるかもしれないが、デビュー前とはいえ、既に結成から数年、安定感すらあったグループに新規加入があるのは大きな出来事である。

 ファンもざわついた、大きな“人事異動”だ。

 加わった3人のうちのひとり、向井康二は関西ジャニーズJr.の要として活動していたが、これを機に上京。

 目黒蓮は宇宙SixというジャニーズJr.内の別グループのメンバーとして活動していたため、当初は兼任していた。

 だが、宇宙Sixとして嵐のバックダンサーをしてから、寝ずに振り付けを覚え、翌朝からSnow Manとしての活動に参加するといった多忙な日々を過ごした後に、兼任は解除された。

 それぞれに離れることになった場所があったのだ。

 2006年に入所した向井はもともと、関西ジャニーズJr.時代に、今はKing & Princeとして活動する平野紫耀と3人組のユニットを組んでいたこともあった。

 2014年、関西ジャニーズJr.からジャニーズWESTがデビューしたときには「俺も入れない?」とジャニー喜多川に電話をしたという。

 かなり勇気のいる直談判である。そのときの答えは「YOUはここじゃない」

ジャニー喜多川にプレゼン

 だが2018年、関西ジャニーズJr.から久々になにわ男子というユニットが結成されたときも、向井の名前はなかった。

 そこで「やれることは全部やったのか?」と自問自答し、「入れてもらえないなら自分でグループを作ろう」と思いたち、なんと3グループ分、メンバー構成はもちろん、コンセプトやフォーメーション、ターゲットまで記載した企画書を自ら作って上京。ジャニー喜多川にプレゼンをした。

 それでも実現には至らなかった。その後、ジャニーズJr.の育成を担うことになった滝沢秀明から「Snow Manに入れたいけどどうかな?」という打診の連絡がくる。

 向井は20分悩んで返事をした。

 だが、その20分は1ヶ月以上のように感じたという。

「返事の早さってすごい大事だから。分刻みで状況が変わるような世界で、タイミングをちょっと逃しただけでチャンスをつかめなかったことなんていくらでもある」(*2)

 向井は加入が決まり、「Snow Manの向井康二です」という挨拶の練習から始めたという。

 グループ名をつけての自己紹介は、途中から加入した彼らにとって意味の大きなものに思える。

 2021年正月に放送されたドラマ「教場Ⅱ」に出演した目黒蓮は、撮影現場で毎朝、主演の木村拓哉にこう挨拶をした。

「おはようございます、Snow Manの目黒蓮です」

 さすがに木村拓哉がグループ名を認知し「名前だけでいいよ」と思い始めたあとも、目黒は「Snow Manの目黒蓮です」と挨拶をし続けたのだという。(*3)

 今や雑誌の表紙に登場すれば増刷が続き、公式サイトのサーバーもダウンするような人気の目黒だが、こう語っている。

「5年くらい前の僕を知っている人は、あの子が5年後にデビューしているなんて考えられないと思う。正直、あの子がデビューできるなんて思ってた人、いないと思うんですよ。それは客観的に見て、自分でも分かる」(*4)

当時15歳だったラウール

 当時15歳だったラウールの加入も大きな驚きだった。ジャニーズの歴史史上ときどき起こる急な抜擢だが、入所直後に起こることが多いことを考えると、小学5年生で入所し、既に3年半が経っていたラウールは、タイミングもまた異例である。

 多くの若いジャニーズJr.が急に与えられる舞台の大きさに戸惑ってきたが、過去を振り返ると、岡田准一がV6に、マリウス葉がSexy Zoneに入所直後に抜擢されたのは、CDデビューのために新設されたグループへの加入だった。

 自分より11歳以上年上のメンバーもいるSnow Manという既に6年以上の歴史があったグループへの参加、しかもグループのセンターへの抜擢には大きなプレッシャーも伴ったのだろう。

 Snow Man加入直後に主演を担うこととなった「滝沢歌舞伎ZERO」の舞台袖で、ラウールは泣いていたという。

 だが加入から2年、CDデビューから1年。そこには既に風格が漂うようになっている。

 ラウールは、自分がジャニーズJr.に選ばれたことも、そしてSnow Manのメンバーに選ばれたことも「めっちゃ運がいい」と語っている。

 だが「自分なんか運だけで」という感覚はないという。(*5)

 17歳のラウールはこう断言している。

「“過程”がどこかに絶対ある」

 16、16、15、15、15、14、14、10、5。

 5年のラウールにも、そしてSnow Man全体も“過程”が存在するグループだ。

 ミリオン3連覇目前というデビュー後の大きな飛躍を目にし、その“過程”のしゃがむ時間の長さを彼らは跳ぶ力に変えたのだ、と強く感じる。

<参考>
(*1)『GQ JAPAN』 2021年1・2月合併号
(*2)『MYOJO』2020年12月号
(*3)TOKYO FM『木村拓哉 Flow』2020年10月25日放送
(*4)『日経エンタテインメント』2021年2月号
(*5)フジテレビ『連続ドキュメンタリー RIDE ON TIME』2021年1月8日放送

霜田明寛
1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。就活・キャリア関連の著書を執筆後、4作目の著書となった『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は4刷を突破。 また『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』の編集長として、映画監督・俳優などにインタビューを行い、エンターテインメントを紹介。SBSラジオ『IPPO』凖レギュラー。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月15日 掲載