2021年1月3日
NEWSポストセブン
俳優の東山紀之(54)が10年ぶりに主演を務めるコメディ映画『おとなの事情 スマホをのぞいたら』が注目を集めている。誰もが認める“二枚目俳優”は、本作で喜劇役者としてどのような魅力を発揮しているのだろうか。
1月8日から公開される『おとなの事情 スマホをのぞいたら』は、2016年にイタリアで公開されたコメディ映画をリメイクした作品で、東山は塾講師で“モテない独身男”の小山三平役を演じる。3組の夫婦と一緒に開催したパーティで、スマホを巡ってお互いの秘密を探り合う、コミカルでスリリングな物語だ。
東山はこれまでも、主演を務めたテレビドラマ『喰いタン』シリーズ(日本テレビ系)や、2014年公開の映画『トリック劇場版 ラストステージ』などで、観客をクスリと笑わせる演技を披露してきている。ジャニーズ事務所に所属し、アイドルグループ・少年隊として活躍してきた二枚目俳優が、間が抜けた登場人物になりきってしまうのだから凄い。
新作映画ではどんな演技を見せてくれるのだろうか。同作をいち早く鑑賞した映画ライターのSYO氏が語る。
「『おとなの事情 スマホをのぞいたら』をひと足先に拝見しましたが、東山紀之さんの存在がとても効いていました。
イタリアのコメディ映画をリメイクした本作は、友人関係の3組の夫婦と、東山さん演じる独身男性の計7人が宴会中に『スマホに届くメールと電話のすべてを全員に公開する』というゲームを始めたことから、それぞれの秘密が暴かれ、とんでもないことになっていく物語。各々が抱える秘密というのがまぁ相当ヤバめで、隠そうと躍起になる姿が描かれます」(SYO氏)
そしてそこで求められる演技を東山が完璧にこなしているとSYO氏は評価する。
「こういった物語の構造のため、出演者には『リアクション芸』と『ギャップの演技』が求められます。他の人の行動に対して取り乱したり、それを悟られぬように取り繕ったり……。本音と建前といいますか、すました顔と慌てた顔に差があればあるほどコメディとして成立するわけです。
東山さんはまさに適任で、我々がよく知るクールな表情からの、怯えたり焦ったり、テンパり具合への“落差”が、新鮮な驚きを与えてくれます。パブリックイメージを逆手に取った、東山さんの顔面七変化に注目です」(SYO氏)
また、同じく本作を鑑賞した映画評論家の石津文子氏は、東山の“中年男の可愛らしさ”に見どころがあると指摘する。
「東山さんは、さえない独身男の三平役を演じていますが、最初に出てくるだけで“こいつはダメそうだ”というのがよくわかります。今までも『喰いタン』や『平成夫婦茶碗』などでコメディには出演していましたが、あくまで端正なルックスとのギャップを楽しむところがありました。ロボットみたいな雰囲気を利用していて笑わせるというか。
まだまだ若々しいとはいえ、東山さんも50代になって人間的な魅力が表情にも出てきたおかげで、『おとなの事情』では三平の人の良さとおかしみ、なかなか本心を言えない情けない感じがよく出ています。彼はある秘密を抱えていて、それをなかなか明かせないシリアスさと、基本的にとてもドジであるという設定を、無理なく東山さんは見せています。中年男の可愛らしさがありました」(石津氏)
50歳を超えて、新境地を開拓している東山。今年もますます活躍を見せてくれそうだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)