嵐、それぞれの21年<1>大野智、築いた新たなリーダー像

2020年12月20日

ミュージックヴォイス

 2019年、1月27日ーー、嵐が「2020年いっぱいでの活動休止」を発表した。まだまだたくさん時間があると思っていたが、もう12月も半ばを過ぎた。彼らの21年に及ぶ活動が、もう少しで一つの区切りを迎えようとしている。ここでは5人それぞれにスポットを当て、その功績を振り返っていきたい。まずは、大野智。

 国民的アイドルグループのリーダーを担ってきた大野。その素顔は、控えめでおおらか。のほほんとしている印象を受ける。リーダーといえば、先頭に立って意見をし、グイグイと周囲を引っ張っていく…というイメージを持つ人も多いことだろう。だが、彼はどちらかというと、後ろからメンバーを見守っているタイプだ。時には、「リーダーらしくないリーダー」と言われるが、彼を見ていると「リーダーが彼だったからこその嵐だろうな」と感じさせ、いわば「新たなリーダー像」を作った存在ともいえる。

 彼の「リーダー力」でとくに印象深いのが、2014年11月に放送された『嵐 15年目の告白 ~LIVE &DOCUMENT~』(NHK総合)で、二宮和也がライブ中に肉離れを起こし、激痛に襲われた時。二宮を心配して、松本潤らが「(ジャンプアップでの登場から、負担の少ない)スライドアップに変更する?」と声をかけた。だが、「自分のクオリティーを下げることは許されない」と言う思いから、「大丈夫」と応える二宮。そこで、大野がサッと現れ、「スライドにしようよ」と言い切り、去っていく。その一言を聞いた松本が、「スライドで!」とスタッフに呼びかけ、負担の少ないスライドアップでの登場に決定した。

 多くは語らないが、その一言に重みがある。嵐にとってのリーダーは、“アクセル”を踏むのではなく、速度を調節しながら、時にはストップをかける“ブレーキ”のような存在だったのだろう。そんな大野の存在があるからこそ、メンバーたちは安心してアクセル全開で踏み出せたのかもしれない。

 また、歌やダンスのレベルも高い。その裏には、血が滲むような努力があったはずだ。だが、それを決してひけらかさないところに、男気を感じる。2017年に放送された『VS嵐』(フジテレビ系)で、努力を人に見せない理由について「恥ずかしいから」と明かし、「俺、天才じゃないんだよ」と言っていたことがあった。「天才肌」と称されることもある大野だが、彼は日々鍛錬を重ねている「努力家」だ。

 さらに、趣味の絵でも高いレベルを誇っている。2008年に開催された作品展『FREESTYLE』展を皮切りに、2015年には、中国・上海、東京・大阪で開催。今年の9月からは、『FREESTYLE 2020 大野智 作品展』が開催された。アイドルとしての技術だけでなく、芸術センスにも長けている。人柄ももちろんだが、そんな多彩さも「この人についていこう」と思わせる要因のひとつと言えるだろう。

 活動休止会見で、「自由な生活がしたい」と話していた。あと少しで芸能活動を休止してしまうことは寂しくも思うが、真っ黒に日焼けをするまで釣りに没頭したり、ひとりで黙々と絵を書いたりと、ゆっくりと過ごせる自由な時間が彼に訪れることを切に願う。【かなぴす】

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