松本潤が韓国で炎上「K-POPのルーツはジャニーズ」発言 ジャニー氏タブーにも触れた米誌インタビューの中身

2020年11月20日

文春オンライン

「BIGBANGは先進的な実力派アイドル、嵐は童謡を歌っている」

「人気絶頂のBTSと40代目前の嵐が比較されるのは物悲しい」

「ジャニーズがそんなにすごいなら、なぜ世界的に有名になったアイドルがいないのか」

 これは、日本の国民的アイドル「嵐」に向けて、韓国のネットユーザーから書き込まれた批判の一部だ。

 活動休止まで残すところ1カ月半となった嵐。活動最終日となる大晦日には、無観客のオンラインライブが行われることが発表された。1日たりとも無駄にできない大事な時期に、隣国で思わぬバッシングに見舞われた。

 韓国の現地ジャーナリストが語る。

「急にこのような書き込みが増えたきっかけは、アメリカの芸能メディアに掲載された嵐のインタビューで、松本潤が『K-POPのルーツはジャニーズ』と受け取られるような発言をしたと報じられたためです。嵐は、韓国でも30代くらいまでの若者に知名度がありますから、韓国の3大紙も取り上げる騒ぎとなりました」

米メディアの「松潤発言」の中身とは?

 そもそも件のインタビューは、日本のメディアではほとんど報じられておらず、国内のファンの間でも知られていないようだ。一体、どんな内容だったのだろうか。

 嵐のインタビューが掲載されたのは、アメリカの芸能メディア「Variety」。1905年創業の老舗映画業界誌で、映画監督やハリウッドスターにも愛読されていることで知られる。

 11月2日付の嵐のインタビュー記事のタイトルは、〈ブルーノ・マーズとコラボ 世界進出をかけながら活動休止へと向かうJ-Popの巨頭、嵐〉。

 グラミー賞を11度受賞している世界的ミュージシャン、ブルーノ・マーズと嵐のコラボレーション曲がリリースされたことが、インタビューのきっかけのひとつになったようだ。取材は、Zoomを使ったオンラインで行われ、通訳を通じて行われたという。嵐については、次のように紹介されている。

〈ジャニーズ事務所から生まれた最も成功したグループの1つ。嵐のベストアルバム「5×20All the Best !! 1999-2019」は昨年、世界で最も売れたアルバムで、テイラー・スウィフトの「Lover」やBTSの「Map of the Soul: Persona」を上回り、330万枚に達した〉

 長文のインタビューでは、今回のコラボなどの海外進出に意欲的に取り組むようになった経緯、故ジャニー喜多川氏の功績、そしてファンへの思いが語られている。その中で終始、嵐を代表して発言をしているのが、楽曲や演出についてインタビュー対応することが多い松本潤だった。

 たとえば、ジャニー喜多川氏については、次のように語っている。

〈ジャニーさんの死をきっかけに、日本のエンターテインメント業界のリーダーとしてだけでなく、ジャニーズファミリーのリーダーとしても、嵐がジャニーさんの遺志を受け継ぎ、日本と米国のかけ橋になることに情熱を注ぐようになりました〉(「Variety」より)

 この記事には、日本の一般メディアでは報じられない内容も含まれていた。上記の松本の発言の後、ジャニー氏について、次のような記者の地の文が続くのだ。

〈一方でジャニー氏に対しては、若いメンバーへのハラスメントや性的虐待の証言も無数にある。評論家は、ジャニーズ事務所が持つ強大な影響力のためにこの告発が無視されていると指摘している〉(同前)

 スポーツ紙の芸能担当記者が解説する。

「故ジャニー氏の性的虐待報道に触れることは“タブー中のタブー”。本来なら、このインタビューはアメリカの芸能メディアに大々的に取り上げられた喜ばしい記事。日本のマスコミでも、次々に紹介されてもおかしくない。ところが日本でほとんど報じられていないのは、このタブーも関係しているのでしょう」

「ジャニーさんが築いてきたものが国境を越え始めている」

 そんなインタビューの中で、韓国で批判を浴びたのは、松本の以下の発言だった。

〈「ジャニーさんは60年に及ぶキャリアのなかでたくさんの男性アイドルグループを生み出し、日本のエンターテインメント産業だけでなく、アジアのポップカルチャー全般に多大な功績を残しました」と彼は語る。「日本以外のグループも、ジャニーさんが1960年代からやってきた仕事が、彼らの活動のルーツとなっていることが見出せます」〉(「Variety」より)

 さらに、次のような記述が続く。

〈K-POPは世界で爆発的な人気を博しているが、松本は悪い感情を抱いていないと言う。「一部の人が想像するような同族主義の感覚はありませんが、ジャニーさんが数十年前に基礎を築いてきたものが国境を越え始めているということに誇りを感じます。ジャニーさん亡き後も、そのレガシーは受け継がれ、生き続けています」〉

 松本が「K-POPのルーツがジャニーズ」と言った訳ではないのだが、アメリカでの発言が日本を飛び越えて韓国で“沸騰”。記事が出た翌日、11月3日付の国民日報は、「『K-POPのルーツは日本のアイドル』 嵐の発言に火がついた議論」と題された記事を公開した。

 ネットでの報道も相次いだ。ネットメディアのOSENも同日、「日本の国民グループ嵐がK-POPがジャニーズに根ざしていると発言し、非難が殺到している」とした上で、「K-POPがジャニーズのJ-POPに根ざしているというような嵐の発言に、世界のK-POPファンの非難が続いている」と報じた。

 さらには韓国の3大紙も参戦。中央日報(電子版、11月5日付)が、「K-POPブームのルーツが日本文化だと主張する日本アイドルグループメンバーの発言が伝えられて、韓国インターネットユーザーから怒りを買っている」として、「一部のインターネットユーザーは米バラエティーのホームページに直接反論のコメントを書き込んだ」と、報じるまでの騒ぎとなった。

ジャニーズとK-POP「共通点と相違点が…」

 韓国で投稿されたコメントにも、「(東方神起や少女時代を生んだ)SMエンタテインメントのイ・スマン代表がジャニーズを積極的にマーケティングしたことはしたが、参考にした程度」とあるように、初期の韓国の音楽業界が、ジャニーズ事務所のアイドルのマネージメントを参考にしていたことは知られている。

 しかし、近年では、「今年デビューしたSnow Manをはじめ、ダンスを売りにしているジャニーズのグループの曲調、さらにはPVが、“K-POPに寄せているのかな”と感じるときがよくある」(ジャニーズファンの女性)という声も出てしまうような状況なのだ。

 K-POP事情に詳しいK-POPゆりこ氏は、ジャニーズとK-POPについて「共通点と相違点があるのでは」と語る。

「確かにジャニーズのジュニアとK-POP業界の練習生といった、才能光る学生を囲い込んで育てるという双方の育成システムは似ています。しかし、韓国の場合は海外進出が前提なので歌やダンスだけでなく厳しい語学レッスンも。また、デビューメンバーの選抜をテレビ番組にすることでリアルなファンの声を集め、マーケティングの参考にしています。つまりデビューメンバー決定の際、事務所だけでなく一般視聴者の声が反映されるケースがあるということ。この2つが大きな違いです」

パク・ジニョン氏はJ-POP好き

『ジャニーズの正体』(双葉社)などの著書があり、ジャニーズに詳しい社会学者の太田省一氏は、今回の松本の発言の真意について、次のように推測する。

「ここで松本さんが話していることは、ジャニー氏がジャニーズを立ち上げた当初はメジャーな存在ではなかった男性アイドルグループの概念が、広く受け入れられるようになった功績を称えたいという気持ち。嵐のコンサートの演出も担当し、プロデューサー的な視点を持っている松本さんが、アジア全体のエンターテインメント業界を包括的な視野で語ったことが、韓国で誤解されたのではないでしょうか」

 その上で、太田氏はジャニーズとK-POPの関係性について、次のように語る。

「ジャニーズとK-POPの“オリジナルは何か”なんて、判定するのは難しい。新しいトレンドは様々な文化が融合したところに生まれます。例えば、BTSの強みであるヒップホップはアメリカ文化を取り入れたものですし、韓国の大手芸能事務所であるJYPエンターテインメントの代表で日本人女性9人組『NiziU』のプロデューサー、パク・ジニョン氏はJ-POP好きを公言していますから、影響を受けた部分もあるのでしょう。

 これまでも韓日合同グループ『IZ*ONE』も両国から人気を博していますし、今年は『NiziU』が紅白初出場を決めるなど注目を集めています。さらにパク・ジニョン氏は、男性版の『Niziプロジェクト』にも意欲を示している。このように国籍を超えたグループの流れは、今後も加速していくでしょう」

「国際的炎上」の先にあるのは…

 松本は、「Variety」のインタビューの最後で、ファンに対してこう語っている。

〈嵐を21年間支えてきてくれたすべての人々、そして特に昔から変わらずにずっと応援し続けてくれているファンには、嵐が遠くにいってしまったかのような感覚にはならないでほしい。そのすべての愛とサポートに感謝しています〉

 故ジャニー氏は“日本独自のエンターテインメントで米国に匹敵するものを作り上げる”ことにこだわり、海外進出を悲願としていたという。今回は、米国での発言が韓国で炎上するという、国際的な活躍があってこその炎上騒ぎだった。

 11月20日(金)21時から放送の「文春オンラインTV」では、担当記者が本件について詳しく解説する。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))