2020年11月6日
Jタウンネット
[ちちんぷいぷい-毎日放送]2020年10月29日放送の「へえ~のコトノハ」のコーナーで、ついつい使ってしまう言葉「全然(ぜんぜん)」について取り上げていました。
読者のみなさんは、ぜんぜんの後に「肯定」の言葉がつくことに、違和感を抱いたことがありませんか? 例えば、「ぜんぜんおいしい」や「ぜんぜん楽しい」などです。
ということで、番組では日本語の修飾語を研究している国語学者の浅田秀子氏に話を聞いていました。
なぜややこしくなったのか
浅田氏によると「ぜんぜんおいしい」は、文法的に「アリ」とのこと。夏目漱石の「坊ちゃん」にも「一体生徒が全然悪いです」というセリフがあるようで…。
ぜんぜんは元々「100%である」という意味だということで、1955年初版の「広辞苑」には「全く。すべて。まるで」という意味しか書かれていませんでした。
ところが、1969年の第二版になると突然、
「下に否定の語を伴って、全く。まるで」
となります。
なので、この「広辞苑」を参考に国語教育が行われた当時の小中学生は、「ぜんぜん」には否定を伴うと覚えてしまいました。理由は不明だとか。
「今日のテストできた?」「ぜんぜん」と、省略しても「できなかった」ことが伝わるほど非常に強固な教育がなされたとのこと。
さらに新たな意味が誕生
1983年の第三版以降は「(俗な用法として肯定的にも使う)完全に。非常に」と、注釈とともに書き加えられたそう。
その結果、どちらにも解釈されてしまうというややこしい事態に。
さらに新たな意味も。「この制服あんまり似合ってないでしょ?」と聞かれて、「ぜんぜん(似合ってるよ)」と言うなど、相手の不安を和らげたい配慮の気持ち、思いやりをぜんぜんに込める場合も出てきました。
大阪の街行く若い人に聞くと「気にせんでいい」「ほんまに大丈夫やでっていうとき」使うとのこと。
「ぜんぜん」は気遣いの言葉にもなりつつあるようです。
浅田先生は「ある程度の年齢の人は、どうしても『ぜんぜん』の後ろには否定がくると思ってしまうので、省略しない配慮を」とのことでした。
「ぜんぜんOK」に何となく違和感を感じていた世代ですが、これからは納得して使えそうです。
(ライター:まみ)