2020年10月25日
まいどなニュース
日本最古といわれる温泉、道後温泉本館そばにあるコンビニ「ローソン道後ハイカラ通店」(愛媛県松山市)。春になると毎年、店頭の看板「LAWSON」の「L」の文字にツバメが巣を作り、店のオーナーは照明を消し巣立ちを応援しています。2019年にテレビや新聞、ネットニュースなどに多数取り上げられ、一躍有名になりました。しかし2020年春、異変が起こりました。例年通り、ツバメはやってきたのですが…。
卵4つ産んだが…
ここ数年、毎年ツバメが巣を作り、巣立ちを見守っていた同店オーナーの吉本周作さん。故障した「L」の照明に巣ができたことで、明るいと子育てしにくいだろうとあえて修理せず、夜間は「AWSON」のライトのみが灯ります。
吉本さんに電話で話を聞きました。
――2020年春もツバメは来ましたか?
「今年も5月ごろに来て、卵を4つ産んだのですが、卵を置いたままいなくなってしまいました。コロナの影響で人通りがなくなったことが原因ではないかと思います」
――えっ、卵を置いたまま?
「コロナの影響で、道後温泉の商店街も人通りがなくなりました。人間がいないことをツバメも察知したんだと思います。ツバメは人通りが多い方が外敵から身を守りやすいのではないでしょうか」
照明消灯、ローソン本社は?
――2017年から「L」の照明だけ消えたままと聞きました。ローソン本社から照明を修理するよう注意されませんか?
「担当者にツバメの巣の話をしました。『巣の部分だけ照明を控えたい』と伝えたところ承認されました」
後日、ローソン本社広報担当者に電話で確認すると「事情が事情ですので」。ツバメの巣作りを優先させる吉本さんの優しさは“本社公認”でした。
ツバメの巣は縁起が良い…変化は?
ところで「ツバメが巣を作ると縁起が良い」という言い伝えがありますが、吉本さんにも何か変化はあったのでしょうか。
「みなさん巣を見て笑顔になり、写真を撮っておられます。暗いニュースが多い中、明るい話題になったのではないでしょうか」(吉本さん)
日本野鳥の会に聞いた
日本野鳥の会(東京都品川区)の担当者に電話で話を聞くと、ツバメはカラスなどの外敵から身を守るために、人間の近くで繁殖する習性があるそうです。はっきりとしたデータはなく感覚的な話になるがと断った上で、「住宅街など昼間に人口が減るところはツバメの巣が少ない傾向です。人通りが多いところには巣は多いです」と教えてくれました。
コロナ禍以前は、国内外の観光客が多く訪れた道後温泉。今年、ローソンの軒先からツバメが姿を消した原因は、外出自粛による人通りの減少が影響したのかもしれません。
吉本さん「このまま待ちます」
ツバメがいつ戻ってもいいように、今後も照明は消したままにするという吉本さん。
「今年は姿を消してしまいましたが、このままそっと1年待とうと思います。来年の春、元気で戻ってきてほしいです」
吉本さんは来春、ツバメたちとの再会を待ち望んでいます。
(まいどなニュース・金井 かおる)