宮田俊哉『劇場版BEM』声優初挑戦への真摯な思いを語る

2020年9月24日

アニメージュプラス

10月2日より公開となるアニメーション映画『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』で、宮田俊哉(Kis-My-Ft2)がゲストキャラクターのバージェス・オルセンを演じている。
大のアニメファンとしても知られる宮田だが、声優は今回が初挑戦。
ストーリーの中でも重要な役割をはたすキャラクターを、確かな演技で表現している。
アニメを愛するからこその強い思い入れを胸に挑んだ今作について、そして初体験のアニメアフレコの印象などについて、語ってもらった。

▲『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』ポスター。右下の笑顔で手を振るキャラクターが、宮田が演じたバージェス

より強くなった
声優へのリスペクト

ーーはじめて声のお仕事に挑戦して、「声優になれた!」という感覚はありましたか?

宮田 いや、声優になれたとは思っていないです。声優ってやっぱり職人さんで、ド素人が急に混ざれる世界じゃないですから。でも、『BEM』という作品の一部にはなれたんじゃないかなと思っています。

ーーアニメ映像から自分の声が流れてくる感覚はいかがでしたか。

宮田 自分の声がするって、まだ不思議な感覚があるかなぁ。自分の芝居を自分の顔で観るのとはまったく別でした。はじめてレコーディングしたときのことを、ふと思い出したりもしました。はじめてレコーディングで歌を録ったとき、もう10数年前ですけど、自分の歌声をヘッドホンで聴いて「俺、変な声してるな」と思ったんですよ(笑)。ありますよね、そういうの。その感覚に近かったかな。不思議な気持ちでした。(キャラクターに)合っているのかどうかも、自分ではわからなかったですね。

ーー今回の収録は、アフレコ現場を見学して、ご準備をなさってから臨まれたそうですが、間近で感じたアフレコの印象は?

宮田 いやもう、すごかったですね。何がすごいって、水樹奈々さんが、カップの紅茶か何かを飲むシーンで、カップが口に当たる音とかまでアフレコ中に再現していて。やっぱり声優さんってすごいなって、よりリスペクトが強くなりました。僕自身、役者としてもとてもおもしろく、勉強にもなりましたし、ファンとしても「うわあ、アニメってやっぱすごいな!」という気持ちになれました。

ーーアフレコはスムーズに進みましたか?

宮田 時間が予定より巻いたんですよ。1時間くらい早めに終わったのかな。あれ? スタッフのみなさん、この後に何か予定があるのかな? と思うくらい(笑)。(自分の演技が)良かったとかダメだったとか、自分ではジャッジできなくて。「どんな感じなのか聴いてみたいです」とお願いして、絵といっしょに自分の声も聴いたんですが、何か、わからなかったんですよね。だから本当に、監督さんや音響監督さん、関わっているスタッフのみなさんを信じてやりました。

ーー普段からアニメがお好きな宮田さんですから、感覚が掴めているところもあったのでは?

宮田 どうだろう? 掴めているかどうかはわからないですが……特に難しかったのは、距離感ですね。「おーい」って話しかけるシーンがあるんですが、距離によって声の出し方って違うから。声をかける相手とはどのくらい離れているんですかって、監督さんたちに何度も聞きました。あとは、そのシーンは曇っているのか晴れているのか。晴れていたらやっぱり、声もちょっと明るくなっていたりするのかな、とか考えたりして。ささいなことがひとつ気になると、どんどん気になることが出てきちゃって。家で考えているだけだと全然わからない、現場に行かなきゃわからないことがたくさんありました。実際にアフレコをする前に、そういうことを聞いて確かめている時間のほうが長かったかもしれないです。

ーー細部にこだわって役を作っていかれたんですね。

宮田 昔、中居正広さんに「神は細部に宿る」って言われたことがあるんです。どれだけ細かいことに気づけるか、こだわれるかが大事。その言葉が、心のどこかにずっと残っていて。バージェスを演じる時も、細かい動きも見逃したくないなって何回もV(リハーサル用に渡されるアフレコ用の映像)を観てみたりしたんです。でもなにせ、アニメがまだ完成していない状態だったので。そこは実際に現場で相談しながら、どれだけこだわれるかな、と思いながら作っていきました。

ーー普段の生身でのお芝居と、一番違うなと感じたことは?

宮田 たとえば、何かに気付いて首を動かすという動きに、アニメでは音をつけなきゃいけない。自分の身体で演じていたら、これ(首をそちらに動かす)だけで成立するんですけど、アニメはそこに「うん?」とか、音をつけなきゃいけない。そういうところは本当に難しかったです。前に、うち(Kis-My-Ft2)の玉森(裕太)が吹き替えの仕事をしたことがあるんですが、玉森も同じことを言っていました。「アレ、ムズいよな」みたいな(笑)。あと、実はバージェスには戦うシーンがあるのですが、戦うときにどんな声が出るのか想像もできなくて。実際の収録に入る前に少しアフレコのレッスンに通って、浪川大輔さんに教えていただいたんです。その時に浪川さんに、戦いの声の出し方も教わりました。

(C)ADK EM/劇場版BEM製作委員会

▲物語が開幕すると、妖怪人間のベム(右)がベルムという名の「人間」として登場、バージェスはその同僚だというが……

演じるキャラクターは
自分と似ていた!?

ーー『劇場版BEM』のストーリーや世界観については、どんなところに魅力を感じましたか。

宮田 世界観で言うと「これはどこの国なんだろう?」という感覚。日本でもなく、僕が行ったことのある海外でもなくて、自分が新しい世界に入っていくような気分にもなりました。『妖怪人間ベム』からはじまる作品の歴史があり、いろいろ時代によって形を変えてきた上での、今回の舞台であるドラコ・ケミカルが作った人工島。その街の雰囲気が、僕はとても好きです。
物語でいうと、今までずっと「人間になりたい」と言い続けてきたベムが、人間の生活をしている様子から映画がはじまるんですよ。そこにまず違和感があるというのが、僕が最初に引き込まれたポイントです。台本をいただいて、読みはじめたら「これはどういうことだろう?」と。その謎が、物語が進むにつれて回収されていくのが、ひとつの見どころだと思います。そして、そんなベムに対してベラとベロは何を思っているのだろう、というのもポイントです。二人が登場することで、さらにもうひとつ、話が展開していきます。僕は最後までまったく飽きずに台本を読み終わりました。

ーー宮田さんが演じたバージェスは、そんな人間として暮らしているベム(=ベルム)の友人で、実はストーリーのカギを握っているという、重要なキャラクターだそうですね。

宮田 バージェスについて最初に聞いたのは、軽薄な奴ということ。どう演じればいいのかなと思いましたが、とにかく陽気な奴だと感じたので、わりと自分に近い部分もあるのかなと……自分が軽薄だとは思わないですが(笑)。でも、陽気でお調子者といったところは似ているのかなと感じました。そのうえで、自分にもし「闇」があったらこんな感じかもしれないなと、イメージをしました。そして現場に行って監督さんとお話したときには、「深夜にやっている通販番組みたいな感じ」と言われたんですが、あまりピンとこなかったんです(笑)。通販はあまり観ないからな……と考えて思い浮かんだのが、海外ドラマのホームコメディに出てきそうな軽薄なキャラクター。そんなイメージにしてみたら、いい感じにハマった気がします。

ーーあらためて、声のお芝居のおもしろさに気付いたことはありますか?

宮田 本当におもしろいと思ったのは、ひとりでは役を作れない、ということ。アニメの絵を描いてくれている人、動かしてくれている人がいてはじめて、その役ができる。僕自身は表情も自分で決められないわけだし、バージェスの一部でしかない。絵を描いてくれる人も、表情を決める演出の人も、みんながバージェス役。その感覚がおもしろいなと思いました。

ーーこれからも、声の仕事にチャレンジしていきたいというお気持ちはありますか?

宮田 今はまだ、自分で映画を観た手応えとして「良い」のか「悪い」のかわからないので。もし自分として「悪い」という印象だったら……これからもファンの立場でいたいです(笑)。もし「良い」ならば、またやらせていただけたら嬉しいなと思いますが、難しいところだなぁ。(アニメが)大好きなだけに、あまり気軽に「やりたい!」とか言えないですね。

ーーでは最後に、アニメファン、ドラマ・映画ファン、そしてご自身のファンに向けてのメッセージをお願いします。

宮田 『BEM』という作品にもたくさんのファンの方々がいて、自分がその一部になれているのかどうか不安な部分もありました。でも、今のところ観ていただいた人には「違和感なかった」と言っていただけていて。そういう言葉が自信につながってきています。ドラマ、映画、アニメ、もちろんジャニーズが好きな方にも、ひとりでも多くの方に観てほしいという気持ちですね。はじめての声のお仕事で、わからないこともたくさんありましたが、とにかく今の宮田俊哉の120%でぶつかったので、安心して観てください! とても楽しい作品なので、ぜひ劇場に足を運んで楽しんでください!!
宮田俊哉
1988年9月14日生まれ、神奈川県出身。Kis-My-Ft2のメンバーとして2011年に「Everybody Go」でCDデビ ュー。2013 年に派生ユニットである舞祭組を結成。2012 年には日本テレビ系『私立バカレア高校』でドラマに初出演し、 同年『劇場版 私立バカレア高校』で映画にも初出演。2013 年には『キフシャム国の冒険』で舞台初主演を飾る。アニメ 好きとして広く知られており、アニメ特集番組などにもゲストとして出演している。

(C)ADK EM/劇場版BEM製作委員会

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