2020年9月14日
オリコン
『妖怪人間ベム』生誕50周年を記念して放送されたアニメ『BEM』。その『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』(10月2日公開)に人気グループ・Kis-My-Ft2の宮田俊哉(32)が、ベムの同僚・バージェス役としてゲスト声優出演する。アニメ好きで知られている彼だが、意外にも今回が声優初挑戦。「好きなことに妥協はしたくない」という信念から、多忙の中で声優スクールに何度も足を運び技術を学んだ。自身にとってアニメはどのような存在なのだろうか? ファン、表現者それぞれの立場での向き合い方を聞いてみた。
■アニメファン歴20年 きっかけは堂本光一の舞台『Endless SHOCK』への出演
テレビのバラエティー番組などでアニメ好きを公言し、多くの作品やキャラクターたちの魅力を語っている宮田。コアなアニメファンからも一目置かれる存在だが、アニメにハマったきっかけは何だろうか。
「小さいころ『デジモンアドベンチャー』(放送時1999年)を見たり、漫画の『ワンピース』(連載時97年)『HUNTER×HUNTER』(98年)を読んだりしていて、その流れで高校生の時にアニメ『いちご100%』(2005年)を見て“萌え”というジャンルに出会いました。『なんだ、これは!』と衝撃的でしたね(笑)」と回顧。20年以上にわたって、漫画やアニメが好きだそうだ。
特にのめり込むきっかけとなったのは中学3年生の時で、意外にもジャニーズの仕事が関係しているという。「そのころ、ジャニーズの仕事で初めて堂本光一君がやっている舞台『Endless SHOCK』に出演する機会がありました。その時、初めて出演料のような形でお金をいただいたのですが、それで、自分の部屋に設置するテレビを購入しました。自分専用のテレビということもあり、うれしくてずっと見ていましたね! そんな中で夜中まで見ていると、深夜アニメが放送されていて、そこからアニメにのめり込んだんです。なので、『Endless SHOCK』に出演していなければ、深夜アニメを見ていなかったのかも知れません(笑)」と説明。アニメにハマるきっかけは、ジャニーズの先輩KinKi Kids・堂本光一と仕事をしたことが始まりだった。
■仕事獲得のためアニメ視聴は「許せない」 純粋な“好き”を貫く
Kis-My-Ft2のメンバーとしてライブ出演はもちろん、ドラマや舞台出演もしている宮田。最近ではアニメ好きの代表としてバラエティー番組で意見を求められることも多くなった。“好き”が仕事に繋がっており、アニメに対して今、どのように向き合っているのか。
「自分がファンとして見る作品に対しては、純粋に“好き”な気持ちを大事にして見ています。あまり好きではないことを『好き』として語りたくない気持ちがあるんです。アニメ作品について語る仕事の場合、そのようなことが起きることもあるので、事務所の方には事前に『一度相談させてほしいです』と伝えています。『この作品知っている?』と聞かれて、知らなければ素直に『すみません、わかりません』と言います。好きな作品であれば『めっちゃ好きです!』と伝えますし、『仕事に繋がるから、このアニメを見よう』という邪(よこしま)な目線でアニメを見ていませんね(笑)。自分がノリノリにならないのは嫌なんです」と、“好き”なことであるからこそ真剣に接していると説明してくれた。
また、自分の立場としても「アニメファン代表と言う立場ではなく、大勢いるアニメファンの1人の意見として発言しています。知らないアニメを語る仕事が届いて『あの番組に出るチャンスだし、今から見て好きになろう』というのは、許せないです(笑)」とし、「僕にとってアニメは、歯を磨いたり、お風呂に入ったりするような生活の一部であり、特別なことではなく普通な存在として馴染んでいます。だからこそ、アニメに触れ合った生活が今の自分を作り上げてきていると感じます」とアニメとの出会いに感謝した。
■声優への敬意 「中途半端はいけない」スクールの門を叩き鍛錬 その中で今回、『妖怪人間ベム』という歴史ある作品の劇場版にゲスト声優出演することになった。うれしいことだが、声優初挑戦ということや好きなアニメに直接かかわることに不安はなかったのだろうか。
「『一緒にお仕事しませんか?』と言われた時、すごくうれしかったのですが、“好き”なこと(※趣味のアニメ)だからこそプレッシャーがありました。率直に怖かったですね(笑)なので、『声優をやるのであれば、レッスンを受けさせてください!』とマネージャーさんに頼みました。一度、しっかり基礎から教えてもらえないのであれば、『うれしいけど、俺はできない!』と言いました」と告白。声優としては“素人”であることから、自身が出演したことにより「作品を台無しにするのではないか?」という葛藤もあったという。
「そして、声優の浪川大輔さんが代表を務める声優スクールに通い、何度かレッスンを受けることになったのですが、わからないことだらけでした。『それだとノイズが入るよ』と、台本のめくり方から浪川さんから直接教えてもらい驚きの連続でした。声の出し方もですが、基礎的な部分がわからないことだらけでしたので、『まだ、わからないことが多いので来週もまたお願いします! もう少しやりたいです!』と、レッスン期間を延長して何度も通いました。そして、浪川さんから丁寧に教わったことで、段々と自信となって本番の収録現場に向かうことができました」と語った。
多忙の中、そこまでして“声優”という仕事に向き合った理由は「好きだからこそ妥協はしたくない気持ちがあります。『妖怪人間ベム』は、僕が生まれる前から存在する歴史のある作品で、声の仕事を専門とする“声優”ではない僕自身が、中途半端な気持ち、中途半端な技術のまま挑んではいけないことだと感じたからです。大ファンである水樹奈々さんと共演し、かつ大作への出演ですので、ファンの方、作品へ失礼にならないように心がけていました」と力を込める。“好き”に向き合った貴重な時間を過ごしたことを振り返った。
努力したこともあって宮田が演じたバージェスの声は、関係者の間でも好評。しかし本人は「手応えがないんです。今回の声優の仕事に限らず、レコーディングなど含めいつもそうなのですが、手応えというのがよく感じられない。人に言われて『これでよかったのか』と感じることが多く、今回、演じたキャラクターの声を聞いた時も『もう少し、ここはこうしたかったな…』と改善したい部分がたくさんありました」と打ち明けた。
■声優挑戦で広がった表現の幅 「大人数で1人を作る」面白さ
“ジャニーズの宮田俊哉”として表舞台に多く登場しているが、声優業は裏方の仕事と呼ばれている。今回、初めて声優の仕事に挑戦して、今後の活動にどのような影響を与えると感じているのだろうか。
「ドラマや歌は全部自分で表現していて、声を出すのも見られている姿も自分次第なのですが、声優の仕事は、アニメーション映像に対して演技をするので、表情は自分で作れないことに気づきました。さらに、映像を作った方と自分の声で作品を作り上げていくという、『大人数で1人を作る』ことが初めての経験で面白かったです」
「収録を終えた今、今後の自分に生かせると思ったのは『声の表現の仕方』です。ドラマや舞台の仕事で、声だけで芝居ができるということ。今まで動きで見せていた感情を、浪川さんや監督さんから『声の芝居』のアドバイスをいただき、表現の幅が広がったと思います。これもアニメの出会いから繋がった仕事だと思うので、見てきたアニメに感謝したいです」と好きなアニメに向き合ったことで表現の幅が広がったことに感謝。これからも表現者として、アニメ好きの1人としてどのような姿を我々に見せるのか、目が離せない。
■作品概要
『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』は『妖怪人間ベム』生誕50周年を記念して、原作の持つ設定やメッセージ性を残しつつも、全く新しい解釈を施し舞台設定やキャラクターを大胆に変更し、2019年に制作・放送されたテレビアニメ『BEM』の劇場版。ベムの行方を探し続けていた女性刑事ソニアが出会ったのは、ベムに瓜二つの人間“ベルム・アイズバーグ”だった。彼の正体は? そして、ベム・ベラ・ベロの「人間になりたい」という切実な願いは叶うのか…。