『シルバー川柳』入選作発表、「ばあさんの 手づくりマスク 息できず」などコロナ禍もシュールな笑いに変換

2020年9月8日

オリコン

 毎年、敬老の日に向けて公募されている『シルバー川柳』。8日、その入選作20作が公益社団法人・全国有料老人ホーム協会により発表された。新型コロナウイルスにまつわる作品が、非常に多かったという今回。「ばあさんの 手づくりマスク 息できず」(埼玉県・82歳男性)、「耳鳴りも ピーシーアールと 音がする」(千葉県・73歳男性)など、不安の多い日々をも明るく乗り越える、ユニークな力作が集まった。

 記念すべき20回目を迎えた『シルバー川柳』。近年は若い世代からも注目を集め、SNSなどでも、川柳の面白さに「シュールすぎる!」「これを笑いに持っていけるのは、まさに年の功」と大きな盛り上がりを見せている。

 今回はやはりというべきか、新型コロナウイルスによる生活の変化が大きく影響したようで、「コロナ関連」の句が応募作全体に占める割合は11.5%。題材別で1位となった。入選20作のうちでも、コロナ関連作が実に11作を占めている。

 前述の“手づくりマスク”などの他にも、「妻が言う ひとまず預かる 給付金」(大阪府・70歳男性)、「我家では 濃厚接触 とんとなし」(高知県・70歳男性)、「頭頂部 だけが見えてる オンライン」(北海道・53歳男性)などが入選。その他、外出自粛要請、ソーシャルディスタンスといったコロナに関するキーワードを自身の生活や人間関係に当てはめ、なおかつユーモアを込めた作品が目立った。

 次に多かった題材は、おなじみの「肉体、知力の衰え、老化」。「脳トレを 毎日してます 探し物」(新潟県・80歳女性)、「じいちゃんの 敵は段差と パスワード」(福岡県・53歳男性)など、物忘れや加齢に関するネタを自虐的な笑いに昇華させ、ユーモアたっぷりに詠み込む作風は、まさに『シルバー川柳』ならではの伝統芸とも言えるだろう。

 また、定番の「夫婦ネタ」も多く「ゴミ出しの 俺とカラスは 顔なじみ」(千葉県・73歳男性)、「妻の留守 たっぷり醤油 寿司刺身」(東京都・70歳女性)など、定年後の微妙な上下関係や、妻の留守にささやかな自由を満喫しようとする様子を描いた作品が入選。さらに「武勇伝 俺の話は 無観客」(島根県・52歳女性)と、さりげなく「無観客」というコロナワードをはさみ込む”うまさ”が光る句もあった。

 今回の応募総数は、昨年の約8,800句から大幅に増加し、10,633句と1万句の大台を突破。平均年齢は68.6歳で、最年長は106歳の女性、最年少は11歳の女の子と、高齢者のみならず実に幅広い世代から応募が寄せられた。公募期間は、コロナによる自粛期間とも重なる2020年3月1日~6月14日の3ヵ月半。入選作の選考は、同協会会員法人ホーム入居者による投票、および協会シルバー川柳選考会で行なわれた。

 今年の入選作を含む傑作川柳をまとめた人気シリーズの最新刊『シルバー川柳10』(ポプラ社刊)は、9月8日に発売。タレントの梅沢富美男氏は、「こんなときだからこそ笑いが大事! この本読めば、気が晴れるよ!」と推薦の言葉を寄せている。

(文:水野幸則)