YouTube「外見蔑視」広告に抗議の署名運動 体形・体毛など漫画で…発起人「人を傷つけることにもなるとわかって」

2020年6月13日

J-CASTニュース

「YouTubeでよく見る体毛や体形などに関する卑下の広告、やめませんか?」――。動画配信サイト「YouTube(ユーチューブ)」に表示される健康食品や化粧品の動画広告をめぐり、視聴者を傷つけるような表現を見直すよう求める抗議活動が広がっている。

署名サイトでは2万筆以上の賛同が集まり、発起人の大学生は「こちらから動かないと何も変わらないと思い立ち上げました」と話す。

「一瞬で腹筋バキバキ」「飲むだけで美乳」

ユーチューブでは今年3月以降、筋肉増強、痩身、バストアップ効果を標榜するサプリメントや脱毛クリニック、脱毛クリーム、二重まぶた形成化粧品、肌のケア商品……など、いわゆる”コンプレックス商材”の広告が頻繁に表示されるようになった<詳細:YouTube広告が「無法地帯」化 アダルト、情報商材、怪しいサプリ…背景にコロナ禍か>。

主流は漫画に声を当てた動画広告で、内容に共通点が多くみられる。ある身体的特徴により周囲から冷遇されるものの、商品やサービスを購入することでその特徴が「矯正」され、人生が好転するというものだ。

例えば、ある男性向けサプリの広告は、好意を持っている女性から「怠惰なデブ」「童貞デブ」とけなされて落ち込んだものの、「誰でも一瞬で腹筋がバキバキ」と勧められたサプリメントを飲んだら体形が変わり、その女性と付き合えた。

女性向けサプリでは、交際相手から胸が小さいために別れを切り出されそうになった女性が、「飲むだけで美乳」「あなたの胸をムクムク成長させてくれる」とうたうサプリメントを飲んで効果を実感し、関係が改善された。

署名活動の狙い

署名サイト「change.org」では4月下旬、前述のような広告表現の見直しを求める活動が始まった。6月13日昼現在、約2万1000筆以上集まっている。

提出先はユーチューブを運営するグーグル社のほか、当該広告で宣伝されていた商品の販売元である3社(ヘルスアップ、エムアンドエム、Kanael)も含まれている。

エムアンドエム社をめぐっては、同社が販売するサプリメント「ファイラマッスルサプリHMB」で、筋肉増強や痩身効果をうたっていたものの合理的な根拠がないとして、消費者庁が20年3月、景品表示法違反(優良誤認表示)で措置命令を出している。

署名活動を始めた大学生の村田葵さん(20)は12日、J-CASTニュースの取材に、署名活動のきっかけを「私も以前からこうした広告に嫌な思いをしていましたが、数人の友人が広告を見て傷ついた、悩んでいるとツイッターでつぶやいていて、こちらから動かないと何も変わらないと思い立ち上げました」と話す。

「ダイエット関連の広告でいえば、太っているからフラれたとか、男性向けのひげ脱毛の広告なら、ひげが生えていると女性から拒否されるとか、今の時代にそぐわない固定観念、価値観をそのまま盛り込んでいるように思います。そういう広告が人の心を刺激するのでしょうが、人を傷つけることにもなるとわかって作ってほしいです」

村田さんも脱毛サロンに通った経験があり、コンプレックス商材自体を否定するわけではない。問題なのはあくまで「商品を売るために誰かを傷つけること」だとする。

署名は当初伸び悩んだが、6月からじわじわと増え始めた。村田さんは、米国を中心とする黒人差別の抗議運動で旧態依然とした固定観念に対する反発が広がったことや、インフルエンサーによる拡散が影響したと分析する。

村田さんによれば、署名は男女問わず幅広い年代から集まっているといい、賛同者からは

「自分の体を否定する感覚を植えつけるような広告は今すぐ停止してほしいです」
「こういった広告が倫理観に与える影響は計り知れないと思います。広告制作者にもそれを放送するメディアにも、相応のモラルを身につけてほしいです」
「自分は好きで薄毛になったわけでもない。広告はそうなったら男性として見られない!的な内容であったりイケメンしかモテない!という内容が多すぎる」
「ある基準を満たしていないと不幸になるだの女を捨ててるだの、そんな古い価値観を広告として公に流して恥ずかしくないのか」

といった声が寄せられている。

目標は1万筆(取材時点)で、集まり次第、先の4社に提出する予定だ。

サプリ会社「法令遵守かつ適切な広告表現を徹底」

広告を出稿していたとみられるヘルスアップ、エムアンドエム、Kanaelの3社は、署名をどう受け止めているか。

エムアンドエムの広報担当者は12日、取材に対し、「ご指摘の不適切動画は、弊社もこれまで把握できていなかったものであり、業務委託先事業者の独断によるものと思われます」と自社で制作したものではないとしつつ、「ご指摘を踏まえ、直ちに是正させるべく当該事業者の特定に努めております。コンプライアンス強化をより一層加速させ、法令遵守かつ適切な広告表現を徹底して参ります」と回答した。

ほかの2社は、期日までに回答はなかった。回答があり次第、追記する。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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