弥生時代に10進法利用か 基準10倍の分銅発見 国内初

2021年9月2日

毎日新聞

 福岡県春日市の須玖(すぐ)遺跡群・須玖岡本遺跡の出土物から、弥生時代中期(紀元前2世紀~同1世紀)とみられる石製の分銅「権(けん)」(最大長5センチ、最大幅4・15センチ)が新たに確認された。1日、市教育委員会が発表した。朝鮮半島南部で発見された権と共通の規格で作られたとみられ、基準となる権(約11グラム)の約10倍の重さだった。同規格の弥生時代の10倍権が確認されたのは国内初。市教委は「弥生時代から国内でも10進法が使われていたことを証明する重要な発見」と話している。

 遺跡群からは2020年、国内最古級となる弥生時代中期前半~後期初め(紀元前2世紀~紀元1世紀)の権8点が確認された。これらは韓国・茶戸里(タホリ)遺跡の基準質量の▽3倍▽6倍▽20倍▽30倍――にあたり、権に詳しい福岡大の武末純一名誉教授(考古学)は10進法が使用されていた可能性を指摘していた。今回の発見で、その可能性がより高まった。

 武末名誉教授によると、これまで古墳時代に10進法を使用していたと考えられる事例はあったが、弥生時代に関してはそうした観点での研究はなかったという。

 須玖岡本遺跡は、中国の歴史書「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」に登場する「奴国(なこく)」の王墓とされ、同遺跡を含む須玖遺跡群は青銅器やガラス、鉄器などの生産工房跡も多数確認されている。当時の先端技術都市として「弥生のテクノポリス」と称される重要遺跡だ。市教委は「権は材料の調合のために正確な計量が必要だった青銅器の製造などに使われていたと考えられる」と説明している。武末名誉教授も「10進法の使用は奴国の先進性を裏付けるものだ」と話している。【上村里花】

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