続く退所、ネット解禁…「変わりゆくジャニーズ」にヲタが思うこと “NEOジャニーズ”の時代に突入した

2020年2月26日

現代ビジネス

中居正広さんが3月をもってジャニーズ事務所を離れるという。不世出のアイドルグループ・SMAPのリーダーたる彼が事務所を去ることは、“変わりゆくジャニーズ”の象徴的な出来事といえるだろう。

昨年7月にはジャニー喜多川さんが逝去し、滝沢秀明さんがその遺志を継いだ。ジャニーズは昔と変わったし、おそらくさらに変わってゆく。現時点までに大きく変わったことは何か、ジャニヲタの目線から見ていきたい。

ネットの海に飛び込んだジャニーズ

今、ジャニーズは巨大な変革の渦中にある。なかでも大きな変化は、あれほど距離をとっていたネットの海に飛び込んだことだろう。以前はジャニーズのタレントが雑誌の表紙を飾っても、ネット上ではグレーのシルエットに置き換えられ、なんとなくモヤモヤした人もいたはずだ。

だが、活動休止を目前に控えた嵐はドキュメンタリーで赤裸々な姿を見せ、SNSの公式アカウントも開設。これまでCDしかなかった楽曲のデジタル配信にも踏み切り、こちら側にぐっと距離を詰めてきた。山下智久さんも昨年5月にインスタグラムを開設し、いまやフォロワー数は439万人。さらにジャニーズジュニアたちはYouTubeにチャンネルを開き、精力的に各々の活動をアピールしている。ネットを介して気軽にアクセスできるようになり、「興味はあったけど……」というファン未満の層も、ジャニーズに歩み寄ってきた。

CDを買わずとも、PVなどを繰り返し視聴しその再生回数を誇る「回す」という応援手段も、今ではすっかり定着した。

では、ジャニヲタから見て今のジャニーズはどうか。

出されたものを黙ってパクつく時代は終わった

「クローズドキッチンからオープンキッチンに変わった店にいる感じ」と言えばわかりやすいだろうか。これまでは、店奥から出てくる料理を粛々と待って「美味しい!」「イマイチ!」などと評すればよかった。だが今は、鍋をふるうシェフの気迫や苦悩、スタッフ間の軋轢まで、ほぼすべてが見えてしまう。晒け出したもの、あるいは晒されることを前提に饗されるものを、私たちはいただくことになった。

また、ネットではジャニーズからもたらされるものだけでなく、知らなくていいことまでもがひも付けられて目の前に突きつけられる。ファンや関係者からのリーク、交際相手が漏らす動画や匂わせ写真、ほかでもないタレント自身による(とされる)迂闊なメッセージのスクリーンショットなどなど……。何を信じ、何を無視して応援を続けるのか。出されたものを黙ってパクつく時代は終わり、ファンも“取捨選択力”がなければ穏やかにヲタ活できない時代になってしまった。

ネット時代を牽引するのは中島健人(Sexy Zone)?

故ジャニーさんはSNSがらみのトラブルが露見するたび、「ツイッターやめるか、ジャニーズやめるか、どっち!?」とタレントたちを叱っていたという。ネットは諸刃の剣であると心得、高いリテラシーをもってオンもオフも泳げる聡明なタレントが、これからのジャニーズを牽引していくことになるだろう。そういう意味では、ヲタとしてその候補を見定める楽しみが新たに増えたとも言える。

個人的に、中島健人さん(Sexy Zone)は、その筆頭だと思う。彼は公式携帯サイトの連載にハッシュタグを付すことでファンにメッセージを送り、これを見たファンは同じタグを付けてSNSで応える。ハッシュダグを通じて密やかな交流をもつなど、なかなか粋な試みだ。ネットの強みを活かしてファンとほどよい距離感で交流できる者が、この先は勝つのではないだろうか。

長身タレントによる“美壁戦略”

さらに、“変化したジャニーズ”は今年、SixTONESとSnow Manに異例の同時デビューという運命を授けた。両グループ合わせて総勢15人。長身のメンバーも多い彼らが並ぶと、そこに堂々たる“美の壁”がそびえ立つ。

これまでの“小柄な少年たちのわちゃわちゃ”でなく、“美壁戦略”とでもいうべき策は、韓国発の“サバイバル”オーディション番組「プロデュース101」(ネット上では「プデュ」と呼ばれる)から生まれたボーイズグループ「JO1」(11人)など多人数のライバルグループに向けたディフェンスのようにも思える。

SixTONES、Snow Manとも、滝沢秀明さんが座長を務めてきた舞台『滝沢歌舞伎』等で長く彼を支え、貢献してきた実績を持つ。これにより、“ゴリ推し”などと陰口を叩く者もいるが、それは違う。彼らはごまかしのきかない舞台で研鑽を重ね、先輩が命を削って芸を紡ぐさまを目の当たりにし、我が身の糧としてきた。実力の伴ったパフォーマンスが評価されたからこそデビューの道が拓けたと、私をはじめ多くのジャニヲタは捉えている。

正しく努力してきた者には相応のチャンスを。反面、残念な私生活が見えるなど、ファンやスポンサーを失望させた者にはペナルティを。「こうだから、こうなった」という道筋が見えやすい滝沢体制の采配は、「馬鹿なことで転ばず、がんばって!」と燃えるファンの親心に、薪をくべてくれたように思う。

日本とアジアの「ファンマナーの温度差」

くだんのSnow Manは、デビューツアーに日本のみならず、バンコク、シンガポール、ジャカルタ、台北での公演開催を予定している。すでに中国のソーシャルメディア「Weibo(微博)」でも公式アカウントを開き、マーケットの拡大に乗り出しているが、今後気になるのは、日本とアジアのファンマナーの温度差である。

昨今、ファンによる公共交通機関での傍若無人な振る舞いやタレントに対する迷惑行為が問題となり、国内におけるジャニーズのコンサートツアーが見送られるといったケースが出てきた。日本では許されない行為も、海外では「まぁ、アリ」と容認されたり、国内でもあまりないファンミーティングが他国で開かれたりしたら、心穏やかでいられないファンも多いと思う。

私自身、いつぞや台湾でジャニーズのファンミーティングに参加した際、現地のファンに「日本ではファンミーティングやらないの? なんで?」と驚かれ、「こっちが訊きたい!」と天を仰いだ記憶がある。特に最近は、モノ消費よりコト消費が重視される風潮のせいか、どんな公演のチケットも取りづらい。「日本のみんなには、いつでも会えるから!」と言われても、「いや会えてないから」と突っこまざるを得ない状況を鑑みて、どの国のファンも楽しくいられるよう配慮してもらえたら、とても嬉しい。

「デジチケ」というジレンマ

そして、ジャニーズがデジタルに放ったのはタレントだけではない。大きく変わったことのひとつに、デジタルチケットの導入が挙げられる。

今ではコンサートチケットのほとんどが「デジチケ」となった。横行する転売を抑えるために取られた措置と思われるが、ジャニーズのソレはなかなかひどい。まず、「分配」ができない。複数人で公演に参加する場合、全員が同時入場しなくてはならないのだ。不慮の事情であっても考慮されないので、時間に間に合わない人は諦めるか、他の人たちに待ってもらわねば入場できない。これは相当なストレスである。紙のチケットであれば、あるいは分配さえできれば「私は遅れるから、先に入ってて!」ということができるが、一蓮托生ではどうにもならない。

これだけでも辛いが、行けなくなってしまった場合の救済措置さえ講じられていないのだ。他アーティストは、参加できない際に正規ルートでチケットを譲れるよう、リセールシステムを設けている場合が多い。だが現状、ジャニーズの公演でこの仕組みはないし、原則として譲渡も禁止である。

決して安くはないチケット代を無駄にしたくないし、空席にもしたくない。何より観られる人がいるなら、ぜひ観てほしい。この当たり前の願いが叶えられていないのは問題だ。仕事や家庭や、さまざまな事情をやりくりしてファンは会場に駆けつける。遅れる、あるいは行けなくなった場合のケア、さらに言えば託児スペースの用意など、すでに他アーティストができていて、ジャニーズがまだ追いついていないことこそ、変えていってほしいものである。

「NEOジャニーズ」の時代へ

変化の担い手は、何も活きのいい若手や新たなシステムばかりではない。今年、近藤真彦さんはデビュー40周年を迎え、記念のコンサートツアーも控えている。また、木村拓哉さんは先月ソロアルバムを発表して改めて音楽活動をスタートさせ、山下智久さんと亀梨和也さんは「亀と山P」として再びタッグを組む。ジャニーさん亡きあと、そのスピリッツを受け継いだ“大人ジャニーズ”たちは新たに再始動し、その背中を見せることで後輩たちを導こうとしているかのようだ。

そして、堂本光一さん、松本潤さんらを筆頭に、もうジャニーさんの指導を直接仰げないジュニアたちを直接指導する人たちもいる。『DREAM BOYS』の舞台を観ると、「あ、光一さんの匂いがする!」と感じるほどだ。もうジャニーさんオンリーではない、大人ジャニーズたちの経験や感性もミキシングされた“NEOジャニーズ”ともいうべき時代に突入しているように感じる。

新しい時代では、どんな景色が見られるだろうか。嵐の活動休止まで1年を切った今、さらなるよき変化を期待して、ジャニーズから目を離さずにいたい。

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