2021年8月22日
幻冬舎ゴールドオンライン
日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「正社員の給料事情」。安泰を求めて正社員……というのは無駄なことかもしれません。
「正社員」と「そうではない人」の間に広がる大きな格差
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、正社員の平均月収(所定内給与額)は32万4200円、手取りにすると24万~25万円程度で、推定年収(きまって支給する現金給与額、年間賞与その他特別給与額から算出)は521万5400円になります。
年齢ごとに見ていくと、20代前半では手取りにすると17万円程度だったのが、50代には手取りにして30万円程度になります。
【年齢別「正社員」平均月収の推移】
20~24歳 21万5400円(321万9000円)
25~29歳 24万9600円(403万1900円)
30~34歳 28万2800円(461万7600円)
35~39歳 31万6300円(518万4100円)
40~44歳 34万3500円(558万8400円)
45~49歳 36万5600円(597万9600円)
50~54歳 39万2200円(637万5600円)
55~59歳 39万7000円(638万3200円)
60~64歳 32万8000円(493万1000円)
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
正社員以外の給与はどうなのでしょうか。正社員以外の平均月収は21万4800円、手取りにすると17万円程度で、推定年収は294万1400円。年齢ごとに見ていくと、20代前半で手取り14万円程度だったのが、50代になっても手取り17万円程度。60代以降で平均給与があがっているのは、正社員の退職者が再雇用されている割合が高くなるためと考えられます。
【年齢別「正社員以外」平均月収の推移】
20~24歳 18万3400円(245万0800円)
25~29歳 20万2400円(273万2400円)
30~34歳 20万7200円(279万0200円)
35~39歳 21万4300円(290万0300円)
40~44歳 21万1900円(285万6700円)
45~49歳 21万2800円(285万4100円)
50~54歳 20万9700円(282万1100円)
55~59歳 21万2200円(286万5600円)
60~64歳 24万1200円(351万9400円)
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
正社員なら安泰、というのは過去の話
このように見ていくと、正社員と、正社員ではない人の給与格差は大きく、雇用形態の多様化が進んでいるとはいえ、多くが正社員を目指すのは無理のない話かもしれません。
しかし正社員だからといって安泰かといえば、そうとも言い切れません。同調査で月収(所定内給与額)の分布を見ていくと、半数以上が20万円未満。30万円以上もわずか1割程度しかいません。
【正社員の月収の分布】
20万円未満 54.0%
20万~22万円未満 13.4%
22万~24万円未満 9.3%
24万~26万円未満 6.7%
26万~28万円未満 4.5%
28万~30万円未満 2.7%
30万~32万円未満 2.1%
32万~34万円未満 1.4%
32万~34万円未満 1.0%
34万~36万円未満 0.7%
38万~40万円未満 0.6%
40万円以上 3.7%
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
少数の高給取りの正社員の存在により見えにくくなっていますが、正社員であっても決して楽ではない、というのが現状。「正社員になれば……」の先には、夢も希望もありません。
日本では「低所得者の割合」が減っているが…
OECDによる調査で、「常勤雇用者の低所得者比率」*を見ていくと、主要40ヵ国中、最も比率が高いのは「米国」で23.38%。先進7ヵ国では「カナダ」20.68%で第7位、「イギリス」が18.10%で12位、「ドイツ」が17.64%で13位、「フランス」が7.74%で34位、「イタリア」が3.71%で39位。では「日本」はというと、11.79%で26位。世界的にみて、日本は低所得者層が少ない国だといえます。
*常勤雇用者の平均所得の中央値の2/3に満たない所得
【主要国「常勤雇用者の低所得者比率」ワースト10】
20万円未満 54.0%
20万~22万円未満 13.4%
22万~24万円未満 9.3%
24万~26万円未満 6.7%
26万~28万円未満 4.5%
28万~30万円未満 2.7%
30万~32万円未満 2.1%
32万~34万円未満 1.4%
32万~34万円未満 1.0%
34万~36万円未満 0.7%
38万~40万円未満 0.6%
40万円以上 3.7%
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
少数の高給取りの正社員の存在により見えにくくなっていますが、正社員であっても決して楽ではない、というのが現状。「正社員になれば……」の先には、夢も希望もありません。
日本では「低所得者の割合」が減っているが…
OECDによる調査で、「常勤雇用者の低所得者比率」*を見ていくと、主要40ヵ国中、最も比率が高いのは「米国」で23.38%。先進7ヵ国では「カナダ」20.68%で第7位、「イギリス」が18.10%で12位、「ドイツ」が17.64%で13位、「フランス」が7.74%で34位、「イタリア」が3.71%で39位。では「日本」はというと、11.79%で26位。世界的にみて、日本は低所得者層が少ない国だといえます。
*常勤雇用者の平均所得の中央値の2/3に満たない所得
【主要国「常勤雇用者の低所得者比率」ワースト10】
1位 米国(23.4%)
2位 イスラエル(22.4%)
3位 ラトビア(21.9%)
4位 リトアニア(21.6%)
5位 ポーランド(21.1%)
6位 ルーマニア(20.8%)
7位 カナダ(20.7%)
8位 ブルガリア(20.4%)
9位 ハンガリー(20.3%)
10位 チェコ(18.4%)
出所:OECD
また日本の低所得者の比率はバブル後期の1990年には17.62%でしたが、2000年には14.58%と徐々に低下しています。
ーー日本では貧困化が進んでいるとよく言われるけど、そんなことないのでは
これらの結果から、そう思った人も多いでしょうが、ここで1つの落し穴があります。「日本では給与が上がっていない」という事実です。
国税庁『民間給与実態統計調査』によると、1990年会社員の平均年収は425万2000でしたが、その後、バブル崩壊。それでも会社員の給与はあがりつづけ、1997年には467万3000円に達します。しかし統計上、会社員の平均給与のピークはここ。その後、会社員の給与は1997年の水準を一度も超えることはなく、最新調査である2019年は436万4000円。ピーク時から7%減、ということ。
つまり日本では「みんな一緒に貧乏になった」が正解だということです。
正社員でも半数が月収20万円未満。あがることのない給与……明るい未来が見えない日本で、いかにして生きていくか。コロナ禍のように、未曽有の危機に見舞われることもあります。万が一に備えてできることといえば、可能な範囲で資産形成を進めていくことしかなさそうです。