松本潤の大河主演で再燃「歌、踊り、演技、バラエティ…“偉い”のは誰?」ジャニーズ内“序列問題”

2021年3月5日

文春オンライン

 NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年)の主演決定に引き続き、主演映画「99.9-刑事専門弁護士 THE MOVIE(仮)」の今冬公開が決まった松本潤さん。昨年末で嵐が活動休止に入り、今後についての発表が少なかったことから「しばらく裏方に専念するのでは?」などと話題になっていましたが、松本さんらしく小気味よい“主演コンボ”発表に胸が高鳴ります。

 大河主演をきっかけに松本さんについて「ジャニーズ内での立場を盤石にした」「幹部候補」という声も聞かれましたが、嵐はそもそも圧倒的な人気の国民的グループでした。それなのに今更松本さんだけにそのような声があがるのは、ジャニーズで偉くなるには“俳優として成功することが必要”だと感じている人が多いからなのでしょうか。

 昨今のジャニーズではアイドルとして“歌って踊る”ことに加え、演技やバラエティなど“歌以外”で人気を博して評価につなげる人が増えてきました。SMAPが切り開いたこの流れは、今も拡大を続けています。

 なぜジャニーズでは、歌や踊り以上に“演技やバラエティの評価”が重んじられるようになったのでしょうか?

近年ではモノマネやお笑い、アスリート的なタレントも

 そもそも、ジャニーズの中で“偉い”とは一体どういうことなのでしょう?

「小学校でいちばんモテる男子は足が速い子。中高はヤンキー、大学はイケメン」だと言います。これが社会人になると、モテるのは“信頼と実績と社交性のある人”となり、ジャニーズでもそれは同じです。

 30歳を超えたような“大人ジャニーズ”ともなれば、ルックスや身体能力だけでなく、その生きざまや個性の磨きっぷり、先輩後輩からの人望の有無もジャニーズファンや事務所からの評価に直結します。

 ジャニーズたるものアイドルとしての歌唱力、表現力はデフォルトであってしかるべき。大人ジャニとして長く活躍するためにはその“アイドル力”に加え“経験と共に培ったもの”が武器になります。それは演技力だったり、バラエティを盛り上げる話術だったり、近年ではモノマネやお笑いの芸、専門知識に特化したトーク、あるいはアスリートなみのパフォーマンスを見せる人も増えてきました。

 また、「自分目当てのファンをがっちり掴む」だけでなく、「映画で気になった俳優がジャニーズだった」など、自然なランデブーでジャニーズファン以外の相手を魅了することも大切です。そのためには、ライブなどの“アイドルとしての現場”はもちろん、映画やテレビなど“俳優やバラエティでの見せ場”が必要なのです。

 そこで、ファン以外の人たちに「おもしろいヤツ」「いい演技をするヤツ」「筋肉がすごいヤツ」と好感を持たれることがファン層を広げ、巡り巡って従来のファンにも「やっぱりそう思うよね」と魅力を再認識させることにもなるのです。

 それが、演技やバラエティの世界で評価されることが、ジャニーズ内部での価値、言い換えれば“誉れ”を上げることにつながる理由でしょう。

大河、映画、司会のヒエラルキー

 そして“誉れ”につながる仕事の中にも、もちろんレベルがあります。

【“誉れ”レベルざっくり目安一覧】

★★★★ 大河主演、紅白司会、24時間テレビメインパーソナリティー、音楽特番司会、ニュースキャスター、年末年始冠特番、日本アカデミー賞受賞、長期座長公演

★★★ 紅白出場、地上波冠番組、バラエティ・情報番組司会、一般映画主演、演技等各賞受賞、各種ランキング1位獲得、ギネス記録保持

★★ ドラマ主演、アイドル系映画主演、一般映画出演、各種資格取得、CM主演、モデル・コスメアンバサダー就任

★ ドラマ出演、バラエティ出演、アイドル系映画出演、CM出演

 重要なのは、その活動が“国民的”かどうか。異性はもちろん同性にも好感を持たれ、世間に一目置かれたか。後輩の憧れや目標となり彼らを導いたか。実績と貢献度、愛され度、誉れ度、品行方正さ。そしていかに事務所に貢献したか。

 これらを総合して、ジャニーズ内部での格が決まるのでしょう。

歌のうまさは”格”には影響しないのか

 ここで、「ジャニーズにおいては、実は歌唱力で存在感を示しても“格”にはつながらないのか?」という疑問も考えてみましょう。

 コンサートの現場などでは、グループ内で「歌がうまい枠」として人気になっている人が数多くいることはわかるのですが、コンサートに足を運ぶファン以外にはその魅力は思いのほか届きません。

「CDがミリオンを達成した」、「MVのYouTube再生回数がすごい」などの形で楽曲が評価されるときはグループ単位の栄誉となり、個人の“格”には影響しにくいのかもしれません。そしてジャニーズは原則として音楽賞レースに参加しないので、事務所に“わかりやすい誉れ”をもたらすタイミングが少なくなりがちとも言えます。

 この「歌と踊りよりも、演技やバラエティでの実力で評価される比率が大きくなってきた風潮」について、とあるジャニーズファン歴25年の女性は「大歓迎です!」と話してくれました。

「たしかに、テレビの歌番組が多くあってジャニーズがレコード大賞を獲っていたような時代なら“歌って踊れる”ことがすべてで、その序列は絶対に変わらなかったんだと思います。今は歌だけでなく演技やトークやそれぞれの道で人気になるルートがあるし、SNSや配信など特技をアピールできる場も増えました。歌や踊り以外の個性を活かす方法ができたのは、すごくいいこと。私の推しは“テレビ班”ではなくて“舞台班”なので、以前のままだったらもっと目立たない存在だったと思います」

歌と踊りより、演技やバラエティ?

 歌と踊りよりも、演技やバラエティでの実力で評価が決まりがちなジャニーズにおける“テレビ班”と“舞台班”。今では線引きが曖昧になり死語になりつつある分類ですが、かつては同じジャニーズタレントでも、2つのグループが明確に分かれていた時代がありました。

 ものすごく雑な言い方をすると、テレビ班は文字通りテレビに出演する人たちで、メジャー・陽・華やか路線を担い、CDを出し、テレビや映画、雑誌グラビアで活躍するジャニ。舞台に出る際は、原則として主演オンリー。

 舞台班は逆に“マイナー・陰・職人路線”を担当し、テレビにはたまにバックダンサーとして出るくらい。CDデビューへの道は険しく、舞台でしか会えないジャニです。舞台でも主演は少なく、テレビ班が主演の舞台にサポート役で出ることが多い人たち。

 スターのバック経験が長くなると、忠実なサポーターとしての技量はバンバン磨かれますが、どんどん“黒子っぽさ”“(王子というよりも)腹心っぽさ”が増していき、スターとしての華は開きづらくなります。

 ゆえに、舞台班のジャニはテレビ班のジャニに遠慮している雰囲気があったり、どことなく影が見えたり……ということもありました。

 余談ですが、テレビ班と舞台班の関係は、ファンどうしの関係性にも影響を及ぼし、「テレビ班のファンの方が、舞台班ファンより偉い(?)」という感覚もファンの中にはありました。「同じ社宅に住んでいる部下の妻より、部長の奥様の方がエライ」といったノリで、舞台班のファンはテレビ班のファンに、「いつも○○くんにはお世話になってます……!」などと半分冗談で話しかけることもありました。

 しかし最近では、CDデビューにわだかまりを残してアイドル活動をするよりも、歌と踊りからは離れて完全に“役者”にシフトする人も出てきました。生田斗真さん、風間俊介さんらは早々と役者道に絞ったことで輝きを増しましたし、ダンスのエキスパートに特化した屋良朝幸さんのような人もいます。

 さらには、小説家として吉川英治新人賞に輝き、直木賞候補にもなった加藤シゲアキさん(NEWS)、気象予報士の資格を持つ阿部亮平さん(Snow Man)、宅地建物取引士の有資格者・川島如恵留さん(Travis Japan)ら、インテリ系の人材も豊富です。歌唱力以外の武器を持つ個性豊かなタレントを増やすことは、「メインボーカルが抜けたらグループが路頭に迷う」といったリスクを減らすことにもつながります。

 テレビ班、舞台班といった棲み分けもほぼなくなり、CDデビューさえも“一人前”と認められる必須条件ではなくなったのです。

「推しには偉くなってほしくない」

 ただ実はファンは推しに、社内で“偉く”なってほしいとも限らないのが興味深いところです。事務所からあからさまに冷遇されれば怒りを感じますが、「幹部候補」と言われてもむしろ「タッキーのように表舞台に出なくなってしまったら悲しい」と思う人も少なくはないでしょう。

 何かと言及されがちなジャニーズタレントの”偉さ”や序列についてファンがどう思っているのかを聞いてみました。

「今のジャニーズ内部の序列って、東山紀之さん、木村拓哉さんに続いて、あとは大体デビュー順通りじゃないですか? 経営側にまわったタッキー(滝沢秀明さん・ジャニーズ事務所副社長/ジャニーズアイランド社長)は立場的には“上”かもしれませんけど、個人的には、事務所的な“格”がどうであっても、タレントが先輩を立て、後輩を引き立てる姿勢を見せてくれれば気になりません」(ファン歴20年の女性)

「私は松本潤さんのファンですが、大河ドラマ主演が決まったからと言って木村拓哉さんを格的に逆転したとはまったく思いません。木村さんは後輩にとって憧れの存在だし、そもそも2人は比べる対象ではありません。松本さんに大きな仕事が決まったのは嬉しいけれど、“誰かより優位になった”とか、考えもしませんでした」(ファン歴15年の女性)

「V6のファンですが、のし上がって経営に食い込んでほしいとは、私はあまり思いません。会社的な格で言えば、後輩の中にもV6より上の人がいるかもしれませんが、自然な立ち位置で活動を続けてくれることだけが望みです」(ファン歴18年の女性)

「タッキーの最後のディナーショウに参加しましたが、“戦場へ行く夫を見送る妻”のような悲壮な表情のファンの方が多かったのを覚えています。もちろん”出世”なのでしょうし、本人が幸せならば応援しますが、なにかとタッキーが悪者にされることも多いので腹が立ちます」(ファン歴22年の女性)

 ファンの声に共通していたのは、「現状の事務所の各タレントへの扱いはおおむね順当で、目立って不当な扱いをされている人はほぼいないのでは」ということでした。

 ファンにしてみればジャニーズ内部でどんな格付けがなされ、世間的に序列が話題になろうとも、“私の推しは常に尊い”事実は変わらないのだと思います。

(みきーる/Webオリジナル(特集班))