帰ってきた「Endless SHOCK」、堂本光一の「本気」と「決意」

2021年2月13日

デイリー新潮

344日ぶりに

 2000年より上演され、堂本光一が日本演劇界における同一演目単独主演記録を更新し続けている舞台「Endless SHOCK」が344日ぶりに帝国劇場に帰ってきた。コロナで揺れるエンターテインメント業界において、そしてジャニーズ事務所にとって、それが意味するものは何なのか。開演前日のゲネプロを観劇した『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)の著者・霜田明寛氏が、その意味を考える。

 コロナ禍における政府のゴタゴタは、多くのエンターテインメントを揺さぶり続けている。

 1年前、未知のウイルスがこの国にやってきたとき、その混乱をモロに受けたのが、「Endless SHOCK」だった。

 2020年2月26日、政府による自粛要請、27日には全国の小中高への一斉休校の発表。

 それを受け、2月27日から予定されていた公演を中止、SHOCKは中断されていた。

 その後、3月18日に公演再開を発表するも、19日の専門家会議の発表を受け、20日の午前11時、開演7時間前に中止が発表。

 20年続き、単独主演記録1位を更新中だった舞台が、長期間の中断を余儀なくされるというのは象徴的な出来事であり、その混乱がいかに大きなものであるかを感じさせた。

 作・構成・演出・主演を務める堂本光一は、その事態を深刻に受け止めていた。

「深夜まで会議をして、最終的には僕の判断で中止を決定させてもらいました」(*1)と明言し、この状況を「地球そのものが要るもの、要らないものを精査していってる状態」(*2)と考えるまでに至っていた。

「不要不急」という言葉が広まる中で、自分がなりわいとするエンターテインメントとは必要なものなのかどうか、自問自答しているようだった。

 そんなSHOCKが344日ぶりに帝国劇場に帰ってきた。

演劇業界全体を慮って

「Endless SHOCK -Eternal-」は、ニューノーマルの状況下でどう「SHOCK」を実現させるか考え抜かれできあがったスピンオフ版。本編の3年後という設定である。

 昨年まで上演されてきた「Endless SHOCK」について説明しておくと、小さな劇場でショーを行っていたカンパニーに、オン・ブロードウェイからオファーがあり、大きく夢を描くまではよかったが、次第にメンバーに亀裂や混乱が生じて……という作品で、もともとはジャニー喜多川氏・作。

 役名も「堂本光一→コウイチ」「上田竜也→タツヤ」というように、本名を踏まえるのが基本だ。

 物語と現実を重ねてしまう見方には賛否が分かれるところかもしれないが―。

 この「Endless SHOCK -Eternal-」を観劇していると、どうしても2つの現実が重なって見えてくる。

 まず1つ目はやはり、この「SHOCK」が昨年、中断されていたという事実だ。

 奇しくもこの「SHOCK」には以前から「SHOW MUST GO ON!」(ショー・マスト・ゴー・オン)というセリフが登場する。

 ショーは続けなければならない、という意味のこの台詞は作品の根底にある。

 大きな喪失を経たカンパニーの、ショーを続けることへの意思と葛藤が描かれ続けている作品といっても過言ではない。

 そうなると、20年間「SHOW MUST GO ON!」を叫び続けた舞台が、昨年、中止を余儀なくされたという事実が、どうしても重なってしまう。

「ショーを続けなければならない」というのは、この1年の堂本光一の意思でもあったはずだ。

「休演になれば、出演者の収入は完全になくなってしまう」

「僕はタレント活動もやっているのでまだいいですが、例えば舞台一本でずっと活動しているアンサンブル(役名のないキャスト)の方にとっては死活問題」(*3)

 と、堂本光一の発言は、いちタレントとしてではなく、演劇業界全体を慮って、その灯をたやすまいとしているように聞こえた。

「-Eternal-」(永遠)の意味

 KinKi Kidsの堂本光一としてだけではなく、帝国劇場の座長としても生き続けたこの20年間とその責任感が窺える発言である。

 しかし、もちろん、安全が確保されない中で、闇雲にショーを続ければいいというわけではない。

 すなわち、今回の舞台で表面上だけ「SHOW MUST GO ON!」が叫ばれてしまっては、堂本光一が熟慮のすえに、社会のために休演を選んだ現実との矛盾が生じてしまう。

 そうして、「Endless SHOCK -Eternal-」では、「SHOW MUST GO ON!の本当の意味」としてこんなセリフが登場する。

「躓き、立ち止まっても新たに踏み出す勇気」

 昨年1度立ち止まり、新たに歩き始めたカンパニーに、自ら言い聞かせるようなセリフである。

 世界のために立ち止まらざるを得なかったSHOCKのカンパニーの思い。

 そして、帝国劇場という歴史ある舞台で上演するカンパニーとしての演劇の灯りを消すまいという決意にも聞こえる。

 人の命を奪うウイルスが蔓延する中で、昨年「エンターテインメントは人の命を救うぐらいに気持ちを豊かにさせたり、生きる力を与えたり、心を豊かにすることもあるんです」(*3)とも語っていた光一。

 そんなエンターテインメントへの志に貫かれた「SHOW MUST GO ON!」は、さらに深く届いてくる気がした。

 さらに、もうひとつこの「Endless SHOCK -Eternal-」に冠された「-Eternal-」(永遠)という言葉に注目したい。

「Endless SHOCK -Eternal-」は、主人公のコウイチが3年前に死んでいるという設定である。

 だがもちろん堂本光一が出演しないわけではない。

 亡きコウイチがステージ上で、生きている人々と共演しているように見える演出が施されている。

 それぞれの想いが亡きコウイチをステージに呼んだ、と解釈ができるセリフも紡ぎ出される。

 死者が生きる者に寄り添ってくれている――そう信じられる世界が舞台上に創造されているのだ。

上演1800回を迎えて

 そしてそこにはやはり、この「SHOCK」の生みの親であるジャニー喜多川氏が亡くなっているという現実が重なる。

 今回の「Endless SHOCK -Eternal-」や、先月まで堂本光一が演出を務めていた舞台「DREAM BOYS」など、ジャニー喜多川氏が生み出した舞台では、死後、氏の名前は「Eternal Producer(エターナル・プロデューサー)」としてクレジットされている。

 堂本光一はジャニー喜多川氏が生きている頃から「舞台にしてもコンサートにしても、ジャニーさんに『いいね』と言ってもらえるものを作ろうとしている自分が、根底にはいます」(*4)と語り、死後も「僕が常に念頭においているのは、『ジャニーさんだったらどう考えるかな?』ということ」(*5)と、師への意識は永遠にも思える。

「Endless SHOCK -Eternal-」のタイトル、そして内容は、堂本光一からジャニー喜多川氏への「ずっと見てくれているよね」という願いのようにも見えるのである。

 2月12日で上演1800回を迎えたSHOCK。

 実はその間、中止になったのはこれが初めてではない。

 2011年3月11日も昼の部の幕間に東日本大震災が発生し28公演が中止となった。

「悲惨な出来事なんてあるのが当たり前じゃない これだけの日を跨いで来たのだから」

 と歌詞を書いたのは相方の堂本剛だが、光一とSHOCKもこの20年の日を跨ぐ中で、震災・感染症の拡大・そして恩師の死……と様々な“悲惨な出来事”に直面してきた。

 そんな現実を経た上で叫ばれる「SHOW MUST GO ON!」は、より強い光を放つ言葉になっているはずだ。

(*1)『週刊プレイボーイ』2020年4月13日号
(*2)『日経エンタテインメント』2020年7月号
(*3)『週刊プレイボーイ』2020年3月30日号
(*4)『日経エンタテインメント』2016年4月号
(*5)『婦人公論』2020年2月10日号

霜田明寛
1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。就活・キャリア関連の著書を執筆後、4作目の著書となった『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は4刷を突破。 また『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』の編集長として、映画監督・俳優などにインタビューを行い、エンターテインメントを紹介。SBSラジオ『IPPO』凖レギュラー。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月13日 掲載