2021年1月21日
週刊女性PRIME
2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』の主演に、嵐の松本潤(37)が決まった。
早くも高まる「松潤大河」
ネットでは、数日前から大河ファンのあいだで重大発表があるらしいとの声が出ており、発表後には嵐ファンが松潤版徳川家康について「家潤」と呼ぶか「徳潤」と呼ぶかという論争を展開。国民的時代劇と国民的アイドルのコラボは、すでに大きな期待を集めている。
脚本は『コンフィデンスマンJP』シリーズ(フジテレビ系)などで知られる古沢良太。大河の歴史に新風が吹き込まれそうだ。
ちなみに、松潤は一昨年、NHKの単発時代劇『永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎~』に主演したが、連続時代劇は初めてだ。NHKの公式動画のなかでも、
「嵐という船を一度降りて、新たな冒険の先を見つけようとしている僕にとって、こんなに大きな挑戦はありません」
と、コメント。プレッシャーとやる気が混在する心境なのだろう。
というのも「ジャニーズ大河」にまだ本当の大ヒット作はないからだ。
1972年、歌手デビュー前の郷ひろみが『新・平家物語』で俳優デビューを飾って以来、ジャニーズと大河のつきあいは約半世紀に及ぶ。そのあいだ、さまざまな出来事があった。
初めて主役を務めたのは東山紀之で、1993年の『琉球の風』。ただし、いつもの通年ではなく半年間放送というイレギュラー作品だった。
その次が2004年の『新選組!』で近藤勇を演じた香取慎吾。若者に支持され、DVDが記録的セールスを達成したものの、年配層の反応は今ひとつで、視聴率は右肩下がりになってしまった。
また、このときはスケジュールをめぐる問題も浮き彫りに。大河の主役となれば、1年以上にもわたってそれ一本に集中することが求められる。だが『SMAP×SMAP』(フジテレビ)などのレギュラーバラエティーを抱えていた香取にとってそれは無理な話だ。現場からは不満の声もあがったという。
その翌年が『義経』の滝沢秀明。5月には岩手県平泉で行なわれる恒例行事「源義経公東下り行列」にも義経役で登場して、30万人近い観衆を集め、話題になった。ただ、戦国や幕末以外の大河は当たりにくいとされ、視聴率は及第点にとどまった。
では、戦国モノならどうかということで、2014年には岡田准一が『軍師官兵衛』に主演。自身も歴史好きで、アクションも得意とあって、馬術指導スタッフからは「特に上手」という賛辞も残されている。また、同じジャニーズの生田斗真も華を添えたが、大ヒットには至らなかった。
木村拓哉の大河はあるのか?
そんななか、実現しそうで実現していないのが「キムタク大河」だ。2010年の『龍馬伝』では木村拓哉への主役オファーがあったといわれるが、香取のところで触れたスケジュールの問題で折り合わなかったとされる。
じつは今回も、キムタク主演説がささやかれていた。それがふたをあけたら松潤だったわけで、これはある意味、象徴的でもある。SMAP解散、嵐活動休止という流れのなかで、松潤が大河を大成功に導けば、ジャニーズのトップ、かつ、国民的俳優という地位を奪えるからだ。
もともと、かなりの野心家でもある松潤。元「嵐」の側近スタッフが書いた『嵐、ブレイク前夜』(主婦と生活社)にはデビュー当時のこんな発言が紹介されている。
《どうやったらSMAPを抜けるかな》
《ジャニーズ事務所のなかで、一番になりたい》
さらに数年後、本格ブレイク前の嵐が後発のKAT-TUNの勢いに押され、CMが激減していた時期のことだ。そんなくすぶった状況にあってさえ、スタッフにマッキントッシュで有名なアップル社のCM動画を見せながら、
「俺、こういうのやりたいんだけど。(略)海外のカッコいいCMに出たい」
と、上昇志向をアピールしていた。それこそ、戦国武将顔負けの熱い立身出世欲だ。
しかし、大河は今、朝ドラほどの安定枠ではない。一昨年の『いだてん~東京オリムピック噺~』は平均視聴率が史上初のひとケタ台に低迷。現在放送中の『麒麟がくる』も20%近い数字でスタートしたものの、最近は10%台の前半だ。
ここ10年で、数字的にも話題的にも大ヒットと呼べるのは三谷幸喜脚本、堺雅人主演の『真田丸』(2016年)くらいだろうか。
2015年の『花燃ゆ』では、松潤との交際が報じられていた井上真央が主演。東出昌大や高良健吾、瀬戸康史、賀来賢人などのイケメン俳優たちが脇を固めたことから『花より男子』(TBS系)の時代劇版ともいわれた。松潤のサプライズ出演も噂されたが、もし実現していれば、もっと注目されただろう。
「花男」といえば、井上や松潤とともに、大ヒットに貢献したのが小栗旬。来年の大河『鎌倉殿の13人』の主役だ。松潤にとっては親友でもあり、ライバルでもある。
なにせ、嵐の活動休止後、松潤は役者に力を入れようとしている。その動機のひとつが、小栗のようなライバルたちと、芝居で思う存分勝負したいという気持ちなのだ。
前出の公式動画では、こんな発言も。
「初めて聞いたときはビックリ。自分に大河のオファーが、しかも、あの家康を。うれしかったのと同時に、大きな不安も感じました。そんな大役を自分が務めあげられるのかと」
家康は戦国乱世を終わらせた男。演じる松潤ははたして、ジャニーズ、そして芸能界の天下をとれるだろうか。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。