ジャニーズの“女帝”メリー喜多川氏の剛腕と素顔…メディアの忖度を生んだ「天の声」

2020年12月30日

日刊ゲンダイDIGITAL

 近藤真彦の不倫報道で改めて露呈したのがジャニーズ事務所に対するテレビ・スポーツ紙の忖度だった。松本人志も自身の番組で「(他のタレントと)平等に扱うべき」と苦言。ジャニーズに忖度する姿勢を暗に非難した。

「事務所が正式な見解を出すまでは触れてはならない」といわれる暗黙のルールをメディア内に構築してきたのがメリー喜多川氏(現名誉会長・94)である。故ジャニー喜多川社長の実姉で副社長として手腕を振るってきたメリー氏はマネジメントだけでなく、メディア戦略まで担ってきた。

 メリー氏と直接対峙したのはフォーリーブスのメンバーの女性問題をテレビ局の裏口で直撃した時だった。タレントの前に立ちはだかり「失礼ね」と一喝された。この女性こそが後に「女帝」と呼ばれたメリー氏だった。

 事務所・スタッフの拡大とともにメリー氏は現場を離れ、事務所内から広報を通じて発信するだけになり二度と会うことはなかったが、「大本営発表」と呼ばれた天の声はよく聞かされた。大半の取材に対して「メリーさんはこう言っています」と伝えてくるだけ。

 直接、反論があれば記事にも反映できるが、大半はノーコメント。熱愛事実を記事にしてもジャニーズに忖度するテレビ・新聞が後追いを控える。「報じれば他のタレントの取材ができなくなり、特オチにつながる」という背景が忖度を生んだ。

 ネットのない時代は週刊誌だけが報道しても、独り相撲のようなもの。何事もなかったように終わる。まともに対応しないことが最良のスキャンダル対処法であるという慣例をつくり上げたのがメリー氏だった。スキャンダル報道後も基本的に無視する。その代わり、報じた側は、ファンからの電話やFAXによる抗議に往生した。「何とかなりませんか」と事務所に相談しても、「ファンが勝手にしていること」と相手にされず。所属タレントの番宣写真を借りにテレビ局に行けば「お宅には貸せません」とまさに忖度するかのように拒否されたこともあった。 大半のメディアの人間はメリー氏に会ったことがない。それでも名前だけは誰もが知っていた。メリー氏の名前を出されれば、水戸黄門の印籠のように多くのメディアがひれ伏す。メディアも含めて一目を置かれるメリー氏。その私生活は杳として知られていない。麻布十番界隈のそば屋・焼き鳥屋でひとり食べている姿が目撃されていた。ばったり会ってみたいと何度となく店に行ったが、偶然はなかった。普段は庶民的な一面を持つのも権力者らしい。

(ジャーナリスト・二田一比古)

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