2020年11月7日
週刊女性PRIME
お酒や日用品などを精算前にマイバッグに入れて万引きして、フリマアプリで転売。コロナ感染者が出た店舗をSNSで誹謗中傷。レジのかごまでパクる……。最近、スーパーマーケットを悩ませる不届きモノたちが増えている。中には、わが物顔で犯行を繰り返し、逆ギレするケースも―。
「かごパク」被害急増中
「買った品物がマイバッグに入りきらないときは、かごのまま駐車場まで運んで、ついつい持って帰ってしまいます。レジかごは次に行ったときに返せばいいかなと思って」
そう明かすのは九州地方に住む30代の会社員の男性。
実は彼、「かごパク」の常習犯。悪びれる様子はなく、これまで持ってきたレジかごを返却したことはない。過去にはカートも持ち帰ったことがあるというから悪質だ。
「かごパク」とは、買い物で使うレジかごを精算後にそのまま持って帰る行為のこと。“エコバッグを持っていない。持っていても品物が入りきらない”“でも、レジ袋は買いたくない”そんな自分勝手な理由で犯行に及んでいる。レジかごは店舗の備品のため、勝手に持っていけば盗難、つまり窃盗罪になる。
「かごパク」は以前から起きていたが、今年7月にレジ袋が有料化されると被害が増えた店もあるという。そのひとつが東京練馬区に本店があるスーパー『アキダイ』。秋葉弘道社長が明かす。
「レジ袋有料化前の10倍の被害が出ています。でも、この件が報道されると“困らせてごめんね”と謝って返却してくれたお客様もいました」
スーパーを困らせるトンデモ客の行為は「かごパク」だけではない。
もっとも深刻なのが万引きだ。万引き対策専門家の伊東ゆうさんが解説する。
「セルフレジが増えたことなどから、ここ数年、万引きがしやすい環境になってしまった。さらにコロナ対策で死角が増えたこととレジ袋有料化が重なり、犯人の捕捉数も増えています」
生活費の節約目的で万引きをする年金生活の常習犯や、最近では30~50代の初犯も多いという。前出・伊東さんは、
「コロナで失業し、路上生活になってしまい、万引きせざるをえない人が増えています。最初は生活のために弁当などをやむなく盗むのですが、慣れてくると盗品を換金するようにもなります」
日用品や食品などを日常的に盗み、メルカリなどのフリマアプリなどで転売して金銭を稼ぐ手口。まさに「メルカリ万引き」だ。
ポリ袋の消費量は2倍に増えた
「レジ袋万引き」もいる。
伊東さんはレジ袋そのものを盗んだ犯人を捕まえたことがある。被害額5円だ。
「セルフレジから1枚取ってレジ袋の精算をせずポケットに入れて売り場にいく。商品を精算後、先ほど盗んだレジ袋をポケットから出し、持参したように見せかけ商品を入れる。5円節約したいがための犯行ですが、これも万引きには変わりない」
レジ袋だけでなく、無料でもらえるポリ袋も店の備品。大量に持っていくと逮捕の対象になる可能性がある。
「“エコバッグが汚れるから”“ゴミ袋やペットの汚物処理などに使う”などの理由からポリ袋欲しさに買った商品を1点1点ポリ袋に入れる人や、ロールごと持っていく人もいます」(前出・同)
精算前の商品を持参したポリ袋に入れ、さも支払いがすんだように見せる万引きの手口もあるそうだ。
このような現状に前出・秋葉社長はため息をつく。
「ポリ袋の消費量は2倍に増えました。温暖化対策のためにレジ袋を有料化したはずなのに、これでは本末転倒です」
ほかにも『かご抜け』と呼ばれる、会計前の商品をかごやマイバッグに入れ、レジをスルーし、外に出て万引きする手口も増えているという。
しかし、万引き犯を捕まえるのはなかなか厳しい。
「コロナ禍でみんなマスクをしているため、顔がわかりにくく困っています。精算後の商品をレジ袋やマイバッグに入れず、手に持ったまま売り場に戻る人は特に難しい。精算がすんでいるのか、店員も迷います。不審な人物には声をかけますが、やっていない人にまで不愉快な思いをさせてしまうことも……」(同)
全国万引犯罪防止機構は、警察と連携。万引き防止を促すポスターを作成するなど注意喚起を行うが、事務局の担当者は厳しい現状を語る。
「店舗の中には万引きなどの被害届を出さないところも少なくありません。すべての事件で届けを出してくださいとお願いしていますが……」
というのも店舗の規模によっては事件の取り調べに従業員がとられると、その間の人手が足りなくなるからだ。
「多くの店舗が泣き寝入りをしている状況です。万引きによる損失が増えれば商品の価格に上乗せすることにもなりかねない。損失により閉店に追い込まれることも。そうなれば一般の顧客も被害者。一部の心ない人のせいで、みんなが追い詰められるんです」(前出・事務局)
コロナのせいで俺のせいじゃない
やめられない常習犯もいる。
「“万引きはコロナのせいで俺のせいじゃない。仕事もなく、2日も食べてない。どうしたらいいんだ”と逆ギレする犯人もいます。家もなく、生活に困窮していて生きるか死ぬかで犯行に及ぶ人もいるんです」(前出・伊東さん)
レジの担当者に精神的な負担をかける不届きモノもいる。スーパーマーケット協会団体の担当者が明かす。
「4、5月、来店する顧客はイライラし、殺気だっていました。売り切れ商品を出せと無理難題をぶつけたり、マスクをしていないお客様へのクレームをお店に向けたり。些細なことで怒り、怒鳴ったり……。それらの理不尽を一手に受けたのがレジ係です。疲弊した人は多かった」
追い打ちをかけたのはコロナの「感染流布」。東京・大阪といった大都市と感染者が少ない地方との温度差は大きかった。
「地方の店の店員が都内に行ったことが漏れると風評が広がることもあったようです。感染し、地元にウイルスを持ち込めば店は袋叩きにあい、お客様は来なくなる」(前出・担当者)
さらには危険な売り場としての烙印を押され、口コミやSNSで誹謗中傷されることも。従業員もその店で働いていたことが地域でバレると村八分にあうおそれもあった。
前出・担当者は続ける。
「スーパーは安心安全なものをみなさんに届けようと努力していますし、ほとんどのお客様はちゃんとルールやマナーを守っています。残念ながらほんの一部にはそうではない人もいますが……」
消費者も立ち上がらないといけないのかもしれない。